第四話 「日記」

リボとメアリーは廃墟はいきょとされた家々を探し回っていったが、見当たらなかった。

ひとつだけこの街での異変がひとつわかった。

掲示板によると沢山の子供が消えていることだった。確かにキッザーやナイトメアは子供だ。だが、子供が連れて行かれるのならなぜ1番幼いメアリーが連れて行かれることが辻褄つじつまが合うではないだろうか?

わからないことだらけだ。

でも、この街が起こったことと今2人が消えたことは何らかの関係があるに違いないということはメアリーとは話があったが、メアリーがなぜ誘拐ゆうかいされる範囲に入らなかったのか心当たりがないか聞いてみた。しかし、メアリーには心当たりがないという返事しか返ってこなかった。


「この村で何かが起こったはずなんだ」

リボはこの事件のことで可能性を探るため考えに耽る。

その様子を伺っていたメアリーはうらやましかった。

メアリーは何もできない自分が何より嫌だ。ナイトメアや今一緒にいる仲間にも。それでは不公平さを感じていたメアリーはある家のゴミ箱に古びた日記を見つけていた。

「私、あの廃屋でこんな日記を見つけたの」

メアリーはすっかりリボに対しても敬語や肩に力を入れることをやめた。

リボに言葉で当たってしまったこともあり、吹っ切れてしまった。

中身は読んだ。必ずリボの役に立つ。そして2人が助かることを願っていた。

リボは中身を一瞬で全ページを捲り上げた瞬間に最終ページまでめくると本をとじた。

「メアリーはもう読んだのか?」

「はい」

中身はこう書かれていた。

それは約350年前もの放置された日記であることがわかった。

几帳面きちょうめんな記入者だったのか年号や月日が丁寧ていねいに記されていた。

この街での事件についてはこう記されていた。

夏頃に数人の子供が消えたことを書かれており、手がかりも犯人さえも目星がつかなかった。ただわかっているのは霧があの日は濃かった。それだけ。

二人がさらわれた現状とは似ているが、手がかりや犯人さえもわからない。

「犯人が人形ならありえない話ではないよね? 人形は年をとらない。でも人形がが魔術みたいなものを使えるのかしら」

「魔術は使えないとは思うのだが、人形が絡んでいるのは私も同意権だ。人形なら感情の石を所持している可能性もかなりある」

リボはやっとお目にかかるかもしれない傲慢ごうまんの石を手にすることを待ち遠しかった。それが身近にいることがわかると興奮でこぶしに力が入る。

「私が気になったことがあるの」

メアリーは日記を開き最終ページの「23.10・ 79.57」を指で示す。

この数字が検討が全くつかなかった。

リボは悪戯いたずらっぽく笑った。

「わかるんですか?」

「これは緯度いどと経度だ。ここの緯度と経度けいどは26.55 ・75.48。ここから近い。書き留めておいた親達はその場所に行ったとみていいだろう。家は破壊された形跡もない。この街の住民が子供達を捜しに行き、そのまま戻らなかったことが今の状態で一番可能性が高い 」

メアリーはそれを聞いて大の大人が大勢行ったのに太刀打たちうちできなかった底知れぬ相手が恐ろしくてたまらない。

「ここに残るか?」

リボの一言で身体が震えていることに メアリーは気づいた。

リボの顔を見た。リボはするどい目でメアリーにすごむ。

そんなリボを見てメアリーは息を呑んだが、涙目で意思を固めていることを伝えた。涙声でなんだか伝わりにくいかもしれないが、メアリーは強く訴えかけた。

「私はナイトメアの妹よ。それ以上でもそれ以下でもないわ!」

リボは優しくもろさを感じさせる一輪の白椿しろつばごとく微笑ましい愛らしく笑った。

鋭い赤色の目も甘くとろみがあるように感じさせるように潤んでいるように見えた。メアリーはその笑みを見て今まで感じさせていたおびえと恐怖、不安、敵に対しての劣等感れっとうかん緩和えんわさせられているように感じられた。

「リボさんは本当に美しいですね。まるで戦場のアテネのよう」

ぽわぽわしたほんわかな口調で夢心地ように語る。

「私がか?あのアテネは、古くからギリシアの地にあった城塞都市じょうさいとしにあって、「都市の守護女神」として崇拝すいはいされて来た。この崇拝の伝統は、ミノア文明までさかのぼる。その神殿は……」

リボはどこからの辞書を参考に話していたので慌ててメアリーがリボの話を止めさせた。

「そういう話じゃないんですよっ!」

「じゃぁ、どういうことだ?」

メアリーは手振りで説明しようとするが、リボにはわかってもらえない。

「つまりですね。例えを出しため言葉です」

リボにちゃんと伝えられたかわからない。リボは新しいデーターを入れている。

「ふむ……。人間は相手に空想の人物を例えにして褒める」

メアリーは「なんか違う」と思いながら首をかしげた。

「しかし、なぜアテネなのだ?」

リボが鼻で笑い、日記を内ポケットにしまう。

「リボは戦場で勝ち抜いた。聞いた話でしかないけど。それでも、見ていたらわかるわ。キッザーからも聞いていたから。リボはすかさず戦うことを選んでいる。兄ぃやキッザーを見捨てようとはしていない。仲間を助けようとしているわ。時には表情を表に出さないリボのほんの少しの微笑んだ表情は優しく、甘く、心を洗われ、いやす。アテネもそんな神と想像の中ではそういわれているわ」

メアリーは薄い笑みを浮かべる。リボはわからなかったようだった。

「行きましょう、2人を助けるために」

メアリーは伸びをしてリボに満面の笑みで嬉しそうに言った。

「ああ、そうするか」

そのときにリボの脳内にある声がフラッシュバックで聞こえてくる。

『私は見るわ。あなたのそばでね。あなたは私がいない状態が無である以上どう成長し、愛され、悲しみ、学んでいくのか。ああ、楽しみで仕方がない』

女の渇望かつぼうはどこまでも尽きないような声が雑音が混ざり合いながら聞こえた気がした。

「リボ、だいじょうぶ?」

メアリーは心配そうに見た。ここで機体の異常が出るとメアリーにはどう使用もできないからだ。

「すまいない。時間をくれ」

リボはあの者の声が誰かは興味がなかった。だが、誰かもデーターとして記憶もした。リボはそう言うとあのリボの妹が要求して、過去の映像を流すときに冷静且れいせいかつ落ち着き払った女の人のアナウンスが聞こえる。

『過去の映像をダウンロード致します。しばらくお待ちください』

この女性のアナウンスの声がメアリーは嫌いだ。感情がない普通の人形にしか聞こえないからだ。

『検索された映像は該当されなかったため映し出されませんでした』

音声が言い終わるとリボの瞳に光が灯ると同時に動き出した。

「なにもなかった。時間をとらせたな」

リボの声は先ほどの動揺したものとは違い、迷いのないいつもの冷静なリボに戻っていた。

メアリーは心配そうにリボの様子を伺っている。

「リボ、何か機体に異常が?」

メアリーが心配しているのは異常があっても直せない。技術士は攫われてしまっている。メアリーでは何もしてあげられないのがつらい。

「異常はない」

リボはメアリーに目もくれず歩き出す。

「そう……。」

メアリーは幼い時から兄や義姉のエリナの顔を伺っていたことがしばしばあった。

だが、リボにはそれが通用しない。そこが人形であるということなのかも知れない。

「メアリー」

「うん」

リボは目的地を指で指した。

「相手は霧を操る。ひもを出して胴体どうたいむすぼう」

メアリーは言ったとおりにロープを出して、お互いの身体にしばりつけた。

「これでいい?」

「ああ。日記によるとほとんどの子供がつれていかれた。そう記してある。書いているのは男だろう。父親らしい。妻を流行り病でなくし、子供は誘拐された。と書かれている。」

「私が1番標的になってもおかしくないのに。でも、2人とも連れていかれた」

「ああ、相手は妖術ようじゅつを使う。それはわかった。しかも相手が人形で感情の石のひとつである傲慢をもっている可能性がある。」

「わからないまま突入するの?」

「そうするしかあるまい」

リボは深い森に経緯と緯度の指す場所へ向かう。

「私たちにはこの妖術はきかないのは確かだ。敵の本拠地は直ぐそこなんだからその敵にきけばいい。人間なら拷問ごうもんすればいい。人形ならデータを分析したらいいこと」

リボは物騒ぶっそうなことをいうのをメアリーは聞かないふりをした。


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