第三話 「母親」

ナイトメアは歩き続けていた。頭の中の霧を晴らすためのように。

微かに感じる人の存在感を目標に彷徨い探している。

そうして霧の中、大切な何かを探している自分は自分が何を探していてなぜこんなところを来てしまったかさえわからない。

自分がどこから来て先ほどいた仲間の存在さえもこの霧で忘れさせてくれる。

一歩、また一歩と歩くたびに若くなることを実感し始めた。

思考さえも幼くなってしまったことさえ気づかない。

ただ怖い。寂しい。それしか感じられない。分かりたくないのかもしれない。

だいぶ歩いた。もう10歳ほど若返り歩幅さえ子供サイズになってしまっている。

ナイトメアは泣きじゃくった。

この霧は怖い。子供に返ったナイトメアはただ泣くことしかできなかった。

「父ちゃん、母ちゃん」

子供は死んだはずの親を求めた。

霧から女性の人影が映った。

ナイトメアはそれに気づき、泣きじゃくりながらその人影に縋る。両手を広げ、抱きしめて欲しいように迫った。

「母ちゃん」

ナイトメアはそう言って女性に抱きしめてもらう。

「かあ……ぢゃぁぁ…ん!」

ひどい嗚咽おえつを繰り返し、涙や鼻水を垂らした顔を女性の身体に押し付けた。

女性はナイトメアの母親らしく、息子を愛おしそうに抱きしめて放さない。

女性はふんわりとした金髪で目の色は紺色。真っ白い肌に美しく細く逞しい体つきをしていた。ナイトメアのように鋭い目つきはどうやら母親譲ははおやゆずりのようだ。服装も動きやすい軽装だ。へそだしのちびシャツに長ズボン、指だしグローブに腰に長いスカーフを巻いている。

「俺は母ちゃんが死んだ世界の夢を見ていた」

しばらく時間がたってしゃくり上げながら母親の顔を覗く。

だが、母親は口を開くが、何かを伝えたいようで伝えられないで悲しんでいるのが伝わってくる。

悲しそうな顔をする母親にナイトメアの心は母親の声が聞けないだけで苦しく、潰れそうになる。

「母ちゃん、声が出ないのか?」

母親はうなずく。強く意志の強そうなひとみを揺らしながら。

「母ちゃんが言葉を話せなくてもいい。傍にだけいさせて。お願いだから。母ちゃんの子だけど今回だけだから……!」

ナイトメアの記憶からは実際の年でさえない。だけど、実感は残っていた。寂しい。苦しい。恐怖。

母親がいない。それだけで生きる希望ですらなくしてしまう子供さえいる。

母親は厳しい顔をしつつ、反面は嬉しいことは隠し切れずにじみ出ていた。

霧は濃くなり2人を包む。





「1人目は落とせましたね」

暗い部屋の中にナイトメアはベットの上でまぶたを濡らしながら寝ている。

青年で15歳の容姿だ。

ベットの横には幼きゴスロリ少女が右手をナイトメアのひたいえている。

少女はその手をやっと下ろしていった。

少女は紫色の綺麗なストレートヘアーで左手には奇妙なうさぎの人形を抱えていた。7、8歳でか弱さをを感じた。部屋に閉じこもっていたかのように雪のように白い肌は透き通っているようで正気が感じられない。

少女は大きなうさぎのぬいぐるみを大事に扱いながら両手で持ちなおし、部屋を後にした。

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