第一話 「霧」



リボたちは今深い森の中にいた。霧は濃く、前も後ろわからない状態で散策を続けていた。

ナイトメアが鼻を利かせて滝がある大きな川がある場所を見つけてくれた。

メアリーとキッザーがそれぞれ川を覗くと岩魚やあゆなど綺麗な川にしか生息しない生き物がいることで川は安全であることを確かめられた。

睡眠時間と食事の時間帯以外はほぼ目的地に着くため歩いていた。

リボが休憩きゅうけいを取ることを宣言し、それぞれしなければならないことを行う。

ナイトメアは川魚をとり、リボは防水性ではあるが、深みに入ってしまえば重さでとても動きが鈍く、しまいには動けなくなってしまう。

なので、近くに洞窟どうくつを確認して火をいた。

「キッザーさん、もうその傲慢ごうまんの石があると噂されている地域に入れたのでしょうか?」

メアリーは歩き疲れた足を優しく撫でる。

「うん、4日ぐらい歩き続けたけどちゃんと今日歩いたことで着いているはずなんだけどなぁ……」

キッザーは大きな地図を開き、場所を確かめる。

「地図と方位磁石を照らし合わせても町にはもう着いているはずなんだ。ここはあの世界最大地グリフォンセントラルシティの次に大きいといわれているはずのグリフォンセカンドシティはずなんだ。どうしてこんな深い森で中々抜けやしないんだ」

キッザーは地図を見て、苛立ちを覚える。そのときに生ぬるい風が吹き、森の木々をそれぞれの不気味に揺らした。

その様子をメアリーとキッザーはその様子を少しおぞましさを感じる。

「寝袋を用意した。気温13度、湿度78%だ。早く寝たほうがいいかもしれん。湿度が人間にとって悪い」

「魚を取ってきた。焼いて食え」

上半身は服を脱ぎ、ズボンを捲り上げ、裸足で2人がいるところへ川から上がり、3匹の魚を取り終わり、キッザーに魚をたくす。

ナイトメアの大きな背中は数々の傷跡が悲しく痛々しさが残るような傷が生々しい。

キッザーは火加減を調節して火の周りに木の棒に刺した魚を焼き始めた。

「その沢山の傷跡が生々しいね。そんな傷が沢山ある」

魚を焼いている途中で横目で傷を見て言うキッザー。

自分では切り傷より火傷が多いが、ナイトメアの傷跡の多さは到底叶いはしない。

「こんな傷、自分の汚点にしかすぎないんだ。俺が弱いからこうなった。そうでしかない」

「……」

リボはその場で1番冷静且つ無表情だ。霧の中だが上を見ると雲が時々邪魔をするが、月や星々がきらめいている。

それを見終わると自分の機体に油を少しずつ与える。

それを見ていたキッザーにメアリーは唇を噛み締めながら片手でナイトメアに見られないようにキッザーの作業着のすそを握り締める。

キッザーがメアリーの様子を伺うと「言ってやりたい」そんな目をしていた。

「メアリーちゃん。いってあげたら? 自虐者じぎゃくって」

「言ってあげたいけど。私には無理なの。相手にされはしない」

「そんな感じはするね」

キッザーはナイトメアの様子を次に伺うとナイトメアは何かを考え、その度に苦悩の表情を見せた。

「ほら、できた。ちゃんと食べるんだぞ、メアリー」

ナイトメアはメアリーしか見えていない。無理もないが、せっかく長旅に孤立こりつされてしまってはキッザーとして困る。

メアリーはしっかり生にしがみつくように食べ始めている。

キッザーが一口食べるとあぶらがのっていて大きく食べ応えがあった。

「どうしてここの魚ここまでおいしんだろう」

「俺も疑問がある。ここは世界で2番目の街にしてはこんな人が手を加えたとは思えない自然があふれ返っているんだ。この岩魚だってこの自然があるからこそ生息しているようなもんだぞ」

「やめよう。今日は疲れたよ。議論しているより私達には睡眠と体力を戻すことじゃないかしら。早く食べてゆっくり休みましょう」

メアリーの意見が最優先されることだった。食べて寝られる時にはしっかり休息をとるべきだ。

キッザーは岩魚にかぶりつく。おいしい。食事を取れることに身体の細胞達が喜んでいるような気持ちになる。

「嫌だ。お兄ちゃぁが食べて、私は食べたわ」

メアリーは1匹の大きな岩魚を食し、寝袋へと急いでいた。

しかし、ナイトメアが自分の分の魚を与えようとしている。

「しっかり体力をつけてほしいんだ」

ナイトメアは無理やり、メアリーの手に魚を与える。

メアリーは自分勝手な兄にため息を漏らすと憂鬱ゆううつそうな表情を出す。

「メアリーちゃんは前向きでナイトメアは後ろ向きっぽくみえるよ」

「そうですか?」

メアリーはもう寝袋に入って寝息を立てている兄を見てもらった魚を頬張ほおばる。

リボも油を差し終わり、休止モードへと自主的に切り替わった。まるで、本当に人間のように寝ているようにしか見えない。

「霧は晴れる様子もないね。でも不思議な霧です」

食べ終わった魚の骨や棒をき火に投げ入れるキッザーは濃く、ただ濃い霧を見つめる。

「おにいちゃぁんは心を殺す。本当はおにいちゃぁだって同じ年のこと喧嘩だって、片思いや恋人がいても不思議ではないのにあの人は私しか見ない。見ようとしない。だから大事なものこそ私にゆずるの。それが何より辛いって知らないおにいちゃぁはずるい」

メアリーはナイトメアの寝顔を見ながら苦痛な表情を浮かべた。

「メアリーちゃんはナイトメアの本名は知らないの?」

キッザーは実はというとナイトメアの名前が気にはなっていた。キッザーのあくまで感じ方かもしれないが、ナイトメア=悪夢だ。リボからはこの2人の過去は聞いていたが、だからといってナイトメアでは中二病くさい。

ちゃんとした理由があり、だからそのような名前をつけたと思いたい。

キッザーは考えにっていたが、メアリーがその問いかけに瞳をらしていた。

「おにいちゃぁは何も教えてくれない。どうしてあんな名前を使っているのか。もしかしたら過去を現在でも苦しんでいるからかもしれない。もしそうなら私はどうするべきなのかもわからない。だってその原因は私でしかないのだから」

「メアリーちゃんが言うには悪夢は今までのすべての出来事を指しているといいたいんだね」

メアリーは俯きながら小さく頷く。

「僕なんかの意見に過ぎないけど、違うと思うな。僕はメアリーちゃんに出会えたことはとても素晴らしい事だと思う。そんな素晴らしい出来事が悪夢な訳がないじゃないかな」

「ありがとぉ……」

メアリーはうつむき、耳に髪をき揚げた。

ほおを染めて、兄をフォローしてくれたキッザーに愛らしい生きいきとした微笑を浮かべた。

メアリーは食べ終わり、口の周りを拭く。

「もう遅いし、寝よ、寝よ!」

メアリーは小さくうつむき、キッザーは焚き火の燃えている炎を消した。

2人は暗くなった洞窟の中で寝袋を身にまとい、暖をとって疲れを取るための眠りに付いた。



月はかけ、静かな夜が不安をき揚げるように霧がうごめく。

その霧の中で苦しく呻く声を出している輩がいる。

どちらも男のうめき声だ。

その呻き声は洞窟の中で発されている。

小さな呻き声で疲れて気づかないメアリー、リボの人影センサーには仲間には反応しない。

ふと呻き声がやんだ。それと同時に呻き声を発していたキッザーとナイトメアが夢遊病のように歩き出す。

夜の霧は濃く、深い。あっという間に2人の姿を包む込んでしまう。

こうして2人は大事な妹を大切な人形のパートナーと分れてしまったこととなる。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る