第三話「正装」
「さぁ、さぁ、ここが主の屋敷となっております。お入り下さい」
外観だけでも大きいとわかる立派な家の中は広く、全てのものが完璧に置かれ、磨かれていた。
「すごい……」
メアリーはその広さと豪華さ、完璧までに行き届いているすべてに感銘を受けている。
「お褒めに頂光栄です。メアリー様」
「どうして。私の名前を?」
メアリーは驚いて開いた口を両手でふさいだ。
「それも私の情報でわかられております。ナイトメア様、リボ様は旧姓は№0201であることも、キッザー様の名もご存知であります」
キッザーはダニエルと目が合った。ダニエルはキッザーと目が合ったことがわかるとねっとりとした目でこちらを一瞬の見たのだった。
もちろんキッザーは見逃しやしない。
「では、私達の目的も知っていることだろう」
「ふふふ」
リボが一歩前に出て言うとダニエルは綺麗な顔で微笑ましく笑っただけだった。
「何が面白い?」
「いえ、その目的はあなたとキッザー様の二人であって、メアリー様とナイトメア様の目的なのでしょうか?ならば私達って言うのはおかしなことではないでしょうか?」
確かにナイトメアは鍛えるため。メアリーはは世界を見せること。そう情報屋で二人の亡き義姉で最終的に遺言みたいなものとなってしまった。キッザーは喜んでリボが人間になることを賛成し、手伝うという意思がある。
それさえもこの執事は知っているのだ。
「意地悪を言い過ぎたようですね。申し訳ございません」
ダニエルは申し訳なさそうに深々とお辞儀をした。
「いや、こちらのミスだ」
リボも無表情で伝えた。
ダニエルは顔を上げ、また親しみやしやすい笑顔をした。
「目的もご存知でございます。『色欲の石』をお探しになっておいででしたよね? 確かにあります。渡しましょう」
「え?」
キッザーはひょんな声を出してしまう。てっきり戦闘が始まるのではないかとひやひやした。
「いいのか」
リボはあくまで冷静且つ無表情だ。
「ええ、ですが、渡す前に主との時間だけ2日ほど頂けないでしょうか。私はそれだけで十分で御座いますゆえ」
ダニエルはリボの足元の傍へ来たと思えば、膝までつきて懇願した。
メアリーは車椅子に乗ったミランダを見た。
両親をなくし、婚約者まで失ってしまった彼女の気持ちはわからなくもない。大切な人は今ではリボもキッザーも好きだ。でも、ナイトメアを失ってしまうのは怖い。ミランダの傍にはこのダニエルしかいない。石がなくても人形としては傍に居続けられる。
メアリーはリボの上着の裾を掴み、言った。
「たった1日です。条件をつけて待つほうが石も安全です」
リボはメアリーをみて、少し考え、頷いた。
「わかった。条件があるが、かまわないよな?」
リボは淡々とダニエルを見下ろして言った。
「ええ、構いません」
ダニエルは必死に深く頷く。
「手を煩わすが、ここでの廷拍を許してもらおう。見張らして貰う」
「わかりました。そのためにここに連れて来たって言うこともありますから」
「それもお前の情報でわかっていたことか?」
ナイトメアが銅像や芸術作品を見ながら言った。
「いえ、これは私自身の人形としての分析力ですね」
ダニエルは立ち上がった。リボより高い背は執事服を着ていることもあり、スラッとしていてスタイルがよく見えてします。
「他もございますか?」
「あれば言おう」
リボは荷物を持って玄関を潜った。
3人はすでに玄関を潜っていたため拾い玄関ホールを眺めている。
「こちらになります」
ダニエルは部屋を案内しようとミランダをお姫様抱っこをして愛しく見つめながら階段を登る。
ダニエルは登り終わると車椅子を下の階段から持ってきて座らせた。
ダニエルはとても人形と思えないほど生き生きしているが、ミランダは19歳くらいには見えるもののあまりにも痛々しく痩せこけ、どこを見ているのかさえもわからない。
「こちらになります」
「スゴッ……」
それぞれ1部屋ずつ用意してくれてある。
そのすべての部屋が豪華だ。キッザーはその凄さで圧倒される。こんな豪華な部屋を使ったことはない。
メアリーも目を丸くして驚きを隠しきれないでいた。
「お好きなようにお使い下さい。夕食のあとはダンスパティーをご用意させていただいています。ドレスも小道具もすべてこちらで準備させていただいているのでご安心下さい」
4部屋を用意してもらい、部屋のドアには名前の札まで下がっている。それぞれ名前の札に従って中に入るとダンス用の正装の服が置いてあった。完璧なほど行き届き、相手にあったドレスまで用意してあるのには少々、不気味を感じてしまうほどだ。
3人と1機はそれぞれの部屋でいると夕食前にはダニエルが全員の正装の服を着させ、ヘアーセット、メイクアップ、細かな作業までこなしてしまった。
「では、夕食の時間で御座います」
ダニエルが玄関ホールでベルの音と共に声が聞こえた。
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