第一話 「死体」

 リボたちは湖の浅瀬あさにいた。久しぶりに身体を洗うために目的地に向かう前によったのだ。

まず、メアリーとリボが身体の汚れを洗い流す。

リボは効率を考えて男2人も一緒にといったが、メアリーが大反対した。キッザーにも効率より自分自身を大切にしてほしいと促された。

男2人組みはその間にき拾いや食べれそうな果物を集めることとなった。

「なんでなんだろう」

ナイトメアが溜息ためいきを漏らす。

「なにが?」

キッザーが果物の木によじ登りながら返事を返す。

「小さいころは一緒に風呂に入っていたのに9歳になれば断られるのはなぜだ?」

ナイトメアは涙ぐみながら悲痛を訴えるが、キッザーにはただのロリコンのなげきにしか聞こえない。

「メアリーちゃんもいい年頃の娘ってことだよ」

キッザーは果物を取れる位置まで登ると果物を1つんで言った。

「まだ9歳だぞ! 小さいじゃないか」

ナイトメアは訴えるが、キッザーはメアリーに同情しかできなかった。ナイトメアのロリコンという名の病気は一生治らないと思った。

「ねぇ、あそこ。変だよ」

キッザーは高いところから見上げているので1つの異変に気づいた。

「どう変なんだ?」

「木々が変な方向に曲がっている感じで、あそこだけ鳥が近づこうとしないんだよ」

ナイトメアはそれを聞いて考え込んだ。

「いってみよう」

ナイトメアはキッザーから果物を受け取るとかばんの中にしまい、2人は用心深くキッザーが行った方向へ向かった。

道を外れるため道標に木に目印をつけて奥へと進んだ。

奥へと進むとキッザーが言っていたところに崖から無残に落ちた装甲が豪華な馬車だった。

「だからあんな変な曲がり方をした木々があるわけだ」

確認を終えると引き返そうとした。

しかし、ナイトメアは平然と馬車に近づいた。

「何をするんだい?」

「こんな豪華な馬車なんだ。何かあるかもしれないだろう? 死人はもう要らないものだ。俺達が使おう」

キッザーはナイトメアの言っていることが理解できはしなっかたが、ナイトメアを置いて行く事もできず、一緒に探ることになった。

早く終わらしせてしまって帰ろうという思いでいっぱいだった。

ナイトメアは装甲の中に何の躊躇ためらいもなく、ズカズカと入っていく。

「それにしてもあそこから落ちたらさすがに一溜りないよね」

キッザーはがけを見上げながら言った。馬でさえ死んでいた。御者までもが馬車の下敷きとなって死んでいる。

その無残な死に方を見てキッザーは気分が悪くなり、物陰でもどしてしまう。

「もう死体を見ても大丈夫じゃなかったのか?」

ナイトメアはせっせと死体を馬車から出していた。

「あのときは子供の死体だった。でも、これは男の大人じゃないか。さすがにまだそこまでトラウマを克服してないよ」

キッザーは口元を拭いてナイトメアに訴えた。

だが、ナイトメアは死体をもう2体出していた。

さすがに下敷きとなった御者は2人では持ち上がれないため諦めた。

キッザーも出すものは出してしまったため死体にしぶしぶ近づいてみた。

「男と女と青年の死体?」

ナイトメアの顔が渋柿しぶがきのように渋っている。

「どうしたの?気持ち悪くなった?」

キッザーはナイトメアが同じように戻してしまえば自分の情けさが多少和らぐことを期待した。

「知り合いだ」

「え」

ナイトメアにこんな立派な知り合いがいるとは意外だった。

「どこで知り合った人? 見るからに貴族並みの服装じゃないか」

「……」

ナイトメアはだんまりを決め込んだ。

(なんだよ)

キッザーは心の中で悪態をついた。

するとナイトメアが口を開く。

「男女の死体は夫婦で母親の遠縁の親戚に当たる人だ。そしてこの青年はこの夫婦の娘がいるはずなんだよ。その娘の許婚だよ」

「ふーん」

キッザーはナイトメアの顔を覗き込むが、ナイトメアは鉄火面てっかめんを貫いているように見えるが、隠しきれていないのを感づいていた。

(他もあるみたいだけど、言う気はないみたいか)

キッザーは青年をじっとみた。青年はナイトメアと年が同じがそれとも年上のように見えた。ベージュの髪色だった。

「よく遊んでもらってたんだよ」

ナイトメアはリボとメアリーを呼ぶことを提案し、キッザーはその場で待機するように言われた。

キッザーにとって死体と一緒なのは嫌だったが、自分だってもういい年の男だとは言いたいけど嫌なものは嫌だった。



「3人とも遅いな」

キッザーは死体を見ないことにし、背を向けていた。

変に曲がった木々を見つめていると何か光っているのを見つけた。

「?」

キッザーは曲がった木々と馬車にそれぞれに食器用具であるフォークやナイフが落ちていたり、刺さっていることに気がつく。

「何でこんなところにこんなものがあるんだろう」

キッザーは考え込むと後ろで物音がした。

キッザーは3人がようやく来たのだろうと振り向いたが、ナイトメアたちの姿はなかった。

そのかわり一体の死体だけが、見当たらない。

その死体は青年のもだった。

「え、どうして」

キッザーは一瞬、傲慢ごうまんの能力を思い出す。傲慢の能力は魂を操ること。死体にその本人の魂を入れることもできる。しかし、傲慢はすでに倒してリボの一部として存在している。

さらに物音が聞こえたので音がするほうへと向った。

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