二、旅立ちのとき、リーダーは絶対
理想ぴったりのパートナーを見つけたと思ったら、同性だったとか、激しく落ち込んだあたしに緑は色々説明してくれた。
一、あたし達は目的さえ果たせば結構自由に動いて良い事。
一、任務はごく簡単なものだという事。
一、滅多に無いと思うけど、戦闘になった際は青が一切を引き受ける事。
一、あたし達専用の
一、宇宙船の面倒は緑が全部みる事。
一、全ての決定権は赤の彼女にある事。
とはいえ彼女はネットランナー。
面倒ごとや些細な事を考えさせてはいけない、らしい。
……って!?
「ネットランナー? あのネットランナー? めっずらしい!」
あたしは改めて彼女をみなおした……っていうか観察に近いかも。
「話には聞いてたけど、本当にいるもんなのねー。って、ネットランナー様なんて、ほいほいお外に出ちゃいけないんじゃないの? 帝国の貴重なエリート士官さんじゃない? あたしなんて辺境の落ちこぼれ
「帝国のマザーコンピューターのお告げだと聞いているよ」と緑。
凄いな、マザーコンピューター。
辺境の『だめ』医者を選ぶとは。
ちょっと壊れてんじゃないマザー?……とも思うけど、何か青いのがさっきからこっちを絞め殺しそうな目付きで見ているので、余計な事は言わない事にする。
「良くわかんないけどわかった。とにかく、今やんなきゃいけない事をやればいいのよね」
「そうですね」
「んで、何をやるの?」
「お届けものです」
緑がにっこり微笑んだ後ろで、赤の彼女はぼんやりと微笑んだような表情を浮かべた。
……青は殺気立ってるけど。
◆
人生三度目の宇宙航海、といっても、一回目はドロップアウトが決まって辺境に放り出される時、二回目が怖い軍人様に強制連行された時だから、今回が初めて楽しいお
うふ……うふふふふ。
素敵な彼女もいるし、もう性別なんて小さい事は気にしないで、あたしは愛に生きるのよっ!
広い宇宙港のかなり端っこに、あたし達の
きらきら輝くシルバーメタリックのボディに、これまた輝く緑のラインがアクセント。
フォルムもすんなり、中級駆逐艦サイズ、外見からは重火器がどこに搭載されているのかわからなくて、無骨な物は一切排除されている。
とっても素敵な、あたし達の
「ねえ、どうしてピンク色じゃないの?」
「はぁ?」
「ピンクよ、ピンク! レディの乗る船は乙女にぴったりのピンクが最高なんじゃない! 全体をパステルピンクに塗装して、ビビットピンクのドットラインを引くべきでしょ?」
あたしの素敵な提案に即反応しない野郎ども。
と、ずっと殺気立った態度の青がちっさく舌打ちして、あたしを見据えた。
「ドクターってのは、もっと落ち着いた人物がなるもんだと思っていたんだが。こいつは頭どうかしてやがんな」
「はぁぁあ? なによ、なによっ! むっつりした顔で無愛想にずーっと黙っていたのに、可愛いあたしに対して最初の言葉が、頭がどうとかどういう事よ! ブルーなんだからもっと爽やかに快活にしたらどうなのっ?」
「そのブルーとか、なんだから爽やかとか、訳がわからねーんだけど?」
「口、悪っ! 頭もお目々も青いからブルーでしょ! 彼女がレッドなら緑はグリーン! あたしは可愛いぴんくちゃん」
「はぁ……てめーはたいして可愛くねぇし」
「あたしが可愛くないとか、まともに眼球か脳みそが働いてないんじゃないの? 使えない目ん玉ならくり抜いてガラス玉でもはめ込んでおきなさいよっ!」
「ガラス玉って、お前な……だいたい俺たちは軍属だ。お互い、軍の階級で呼ぶべきだろうよ!」
「可愛く無いから却下!」
「てめぇが決める筋合いはねぇっ! チームリーダーは少佐だ! 少佐が決めるべきだぜっ!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。ね」
「うっさい緑! ここはぴんくちゃんのアイデンティティがかかってる重要なとこなんだからっ!」
「み、緑……? なんで僕まで色味で……」
「……僕、色でいい」
あたし達のヒートアップから完全に取り残されていた赤い瞳の彼女が突然口を開いた。
「階級出すの。あまり得策じゃない」
「ほぉら、あたしの深淵な意見にリーダーも同意してくれてるじゃなぁい。グリーン、ブルー? これからよろしくね」
………。
悔しそうなブルーに、呆然とするグリーン。
リーダーの発言は絶対、なのよ。
◆
任務遂行の為、宇宙船で移動中。
あたしはこれといってやる事が無い。
初めはレッドちゃんにお船の事をきっかけに、愛を育もうとしたけど、「うん」とか「違う」とか「さあ」とか数文字の言葉のみで返されて撃沈。
取り敢えず親密になろうとグリーンに話し掛けたら、宇宙船の薀蓄をいっちゃった目と早口で語り始めて、こっちは訳わかんないから「すごぉい」とか言って逃げようとしたら、延々ついて来て、このお船の話を続けてうざったかった。
で、残るはブルーなんだけど……先ずあたしの可愛さを認めないとこが気に食わないし、いつも眉間にしわよせたぶっちょーづらしてるから、こっちも話し掛けたいと思わない。
結局あたしは一人ぶらぶらしたり、食料庫をあさったり、お菓子をつくったりして、ひまを潰していたんだ、けど。
……重要な事をきくのを忘れてた。
重要すぎて何を今更と言われそうな事を。
正直、誰にきいていいかわからない。
そう。
――『詳しい任務』とやらの内容を。
……怖い事だったら、ドウシヨウ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます