女嫌いスクラップアンドビルド

霜月トイチ

女嫌いスクラップアンドビルド Ⅰ

プロローグ

-プロローグ- 男子は星を見上げない


 ――女子というものは、星みたいなものだと思う。


 小さくて、綺麗で、輝いている。

 見渡せばそこら中にいて、文字通り星の数ほど存在している。

 なのに、その距離感が掴めず、いくら手を伸ばしても届かない。


 でも、たった一度だけ手が届いたことがある。

 すごく、幸せだった。誰も彼もが星を崇めるのは、それを手に入れることで幸せになれるからなんだと思った。


 ――しかし、その幸せは嘘だった。

 その星は夜が明けるのも待たず、流星のごとくどこかへ行ってしまったのだ。

 そこでようやく思い知った、星の本当の正体を。


 星というものは本当は小さくなんかなかった。実際は信じられないほど大きい。

 そんなもの、手が届いても手中に収まらない。


 星というものは本当は綺麗なんかじゃなかった。実際は歪に凸凹した岩石の塊。

 そんなもの、手が届いても手のひらがズタズタにずる剥けてしまう。


 星というものは本当は輝いてなんかいなかった。実際は超高温で燃えているだけ。

 そんなもの、手が届いても大火傷を負うだけだ。


 絶望した。それが見渡せばそこら中にいて、文字通り星の数ほど存在しているなんて、なんて悲惨な世界だ。


 あんなにも美しいと思っていた星は、近寄ってみれば醜いだけのものでしかなかった。

 日を照らす太陽や潮を満ち引く月とは違い、星なんてこの夜空から消え失せても何も困りやしない代物なのに……なぜこんなものをこんなにも欲していたのだろう。


 そう思って再び、夜空を仰いだ。

 けれどもう、それは星を見上げているのではなくなっていた。


 そう、自分にとって星とは、「見上みあげるもの」ではなくなった。

 むしろその逆の、「見下みおろすもの」……いや、違う。


 「見下みくだすもの」と化していた――――。

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