稲村ラブコメディヒーロー
-第16訓- 女子はいちいち回りくどい
梅雨が明けがもうすぐかと云われつつ、なかなか明けない今日この頃。
いつも通り何も特別なことは起きず、平凡に時間が過ぎる。
「きりーつ。れー」
あざましたーというクラスメイトのやる気のない返事とともに帰りのホームルームが終わり、下校時間。生徒たちはやれ部活だ、やれバイトだ、やれ遊びだと皆一斉に席を立つ。
そんな中俺は特に予定もなく、さっさと家に帰ってこの間録画しておいた『奇想天外! ダーウィンどうぶつ園』でも観るかと考えていたのだが、
「おい、七里。お前今日日直だろ? 日誌出てないぞ」
教室を出ようとしていたところで担任の鎌ティーに呼び止められた。
「え? 出てないんですか?」
てっきりもう一人の日直の女子、土橋さんが出しているものかと……いやだって女子って汚れるからなのかなんなのか知らんけど、黒板消すの嫌がるから勝手に日誌担当になるじゃん? それに俺今日黒板消し係やったよ? いやまぁ特に話合って決めたわけじゃないけど。
「土橋に聞いたら『七里が担当だから』って言ってたぞ」
……んだと? 全ての仕事を俺に押し付ける気か? あ?
俺もミソジニストの端くれ。女なんぞに仕事を押し付けられて黙っているような人間ではない。もちろん日誌の仕事は彼女にやらせるに決まっている。
「ええと、土橋……さん? ちょっと……あら」
教室に振り返って声をかけようとしたが……既にいない。
「まー、土橋は陸上の大会も近いし、今日は七里やっておいてやれ。そんな手間でもないだろう」
へー、彼女陸上部なんだ。
いやそんなことはどうでもよくて、これは俺のミソジニズム的に素直に「はい」とは答えられない問題でありましてその……。
「じゃ、終わったら職員室に出しに来いよ」
そう言って鎌ティーは行ってしまった。えー。
「うい」
すると稲村が背中を小突いてきた。んだよ。
「あん時謝ってりゃ良かったのによ。ま、可愛い仕返しじゃねーか」
「……?」
一瞬彼の言うことがよく分からなかったが、
「……ああ、土橋さんってあのブスの中の一人か」
先日、和田塚くんの一件で俺が絡んだ女子グループに彼女もいたような気がする。
……なるほど、これは些細な復讐か。
まったく、相変わらず女ってのはこういうネチネチした嫌がらせすんの好きだよな。くっだらね。あー、何か元カノと付き合ってた頃、喧嘩した時に似たような嫌がらせされた記憶あるな……何されたか忘れたけど。とりあえず死ね。
「ブスってお前さ……やめとけよ」
諭すようにそれを言う稲村だが、顔めっちゃ笑ってる。やだこの男サイテー。
「……稲村ってよ、俺がミソジn……女の悪口? みたいなこと言うといっつもウケてるよな」
こいつとは一年の頃からの付き合いだが、俺のミソジニーが発動すると面白がる傾向にある気がする。
「んなことねーよ。七里はほんと酷ぇやつだよなー。くくくくく……」
ほらまた笑ってる。別に悪い気はしないが、普通なら男でも俺のミソジニズムには大抵引くぞ。
稲村はどの学校にも一人はいる、勉強もスポーツも遊びも恋愛も何でも要領よくこなすスーパーマン的なやつなのだが、何かこういう変なところもある。
まぁそういうところ嫌いじゃねぇし、そういう部分があるからこそ親しみやすいのかもしれない。知らんけど。
すると稲村は「でもよー」と口を開く。
「何でお前あんなキレたんだ? 和田塚くんと仲良かったっけ?」
……そうか。俺と和田塚くんの関係は稲村も知らんか。二人でいるところもおそらく誰にも見られてないだろうしな。
「ちょっと最近絡みあっ帆替えいいやつなんだよ」
そう言うと稲村はボケっとした顔で俺を見て黙ってる。んだよ。
「……へー。何か嫉妬するわそれ」
何を言うかと思えば意味の分からない気持ち悪いことを言い始めた。
「キモ。しばらく俺に話しかけないで」
俺は気持ち稲村から距離を取ると「ちょいちょい!」と距離を戻してくる。
「和田塚くんと七里の組み合わせは意外だわ。でも話すと結構明るいよね彼。なんつーか朗らかというか」
ほう。こいつはこいつで和田塚くんを少しは知っているよう。確かに話すと思っていた以上に明るい。なにより、
「あの素直さはすげぇ。なかなかいないぜあそこまでのは」
個人的に彼の長所はここだと思う。想いを寄せる女子には別の想い人がいても、告白して振られても全く擦れてない。そもそも高校生になるまで生きてきてあの純真さを失っていない時点ですごい。
「……七里がそこまで言うの珍しいな。マジ嫉妬」
「本気でキモいなお前。さっさと部活行けよ。しっしっ」
なんなんだこいつ。ノリで言ってるんだろうけど。
俺がどっかいけと手を払うと「まあまあまあまあ」となだめてくる。
「日誌書かなきゃいけないんだろ? 俺もここで練習着に着替えながら付き合ってやんよ」
「あ? いいよ。つうか嫌だよ。何が悲しくて男の着替え目の当たりにしながら日誌書かなきゃいけねんだ」
「まあまあ。積もる話もあるんだよ」
……? まあまあまあまあうるせぇな。
×××
七月も目前に迫った午後三時過ぎの教室。放課後。
俺は頭を捻って今日一日のことを思い出しながら日誌を付けている。
その横ではヒュンメルの練習着に身を包み、ハンドボール用のソックスだかサポーターだか分からないがそれを穿いている稲村がいる。
教室の離れたところには暇を持て余した他の生徒が数人駄弁ってはいたが、昼間のような喧騒はなく、校庭から聞こえる野球部の掛け声が否応なしに耳に入ってくる。
「なー、稲村はなんで野球部入らなかったんだ? 強豪のシニアで四番打っててピッチャーもやってて私立から推薦来てたようなレベルだったんだろ?」
日記を書きながら何の気なしに俺は稲村に訊いた。
「推薦つっても学費免除とかそういうレベルじゃないぞ。私立は学費も部費も高ぇーし無理よ。あと四番はたまにだけな。俺の定位置は三番。ピッチャーはサウスポーだからってだけよ。七里はどうだったんだよ? キャッチャーだったんだろ?」
「俺は学校の軟式だし、うちの部活サボりばっかで全然強くなかったの。かといって俺自身ガチってたわけでもなく普通に部活やってたくらいのレベルよ」
今思えばもっとやっておけばよかったなともちょっと思ったりはする。部活ってやってる間はダルいとか思うのに、いざ辞めると少し恋しくなる。
「ほーん。そういや七里とキャッチボールしたことないな。今度しようぜ」
「ああ。そういやミットしばらく触れてないの。どこやったっけな」
「マジかよ。俺未だにメンテはしてんぞ」
「マメだなお前。そんなんだったらうちの学校でやりゃ良かったじゃん。顧問にめっちゃ勧誘されたろ」
「んー、どっちにしろ坊主は嫌だったから」
「うわーガキだな」
「はぁ? じゃあ七里は? 何で野球部入んなかったんだよ」
「俺はバイトするため。自分の金は自分で稼ぎてんだよ。親父にできるだけ借りは作りたくねぇし」
「うわーガキだな」
「何でだよむしろ大人だろ」
「父ちゃんに反抗してるあたりがガキ」
「うるせぇな」
そんな感じにお互いほとんど視線も合わさず、自分の作業をしながら他愛もない会話を繰り広げた後で、
「で、積もる話って何だよ」
俺は引き続き日誌を書きながら問うた。
「ああ。積もる話ってほどでもないんだけど、俺さ」
丁度、部活の格好に完全装備し終わった稲村は立ち上がって体を慣らしながら軽い感じで話し始めたが、
「彼女と別れた。ってか振られた」
割と重い話だった。
「……マジ? いつ?」
稲村には中学時代から付き合っている彼女がいる。それは俺も知っていた。
写真でしか見た事がないが、大人しそうで少し地味だが可愛い女の子だった、気がする。
「マジ。なんか『距離を置きたい』って言われて、別れることになった。時期は丁度和田塚くんが由比に振られた時くらい。この時期って失恋しやすいのかね?」
知らん。ただ秋の文化祭あたりで勢い任せに付き合い始めたカップルはクリスマスまで持たないという学生あるあるは知ってる。
しかしこの稲村様を振るとはもったいない女だ。かなりできた男だと思うけどな、俺は。
「まー、付き合って三、四年経つしな。最近じゃ新鮮味のあることがなかったし、こんなもんなのかなって」
なるほど。お互い割と納得して別れたわけか。ならいいんじゃねぇか。一体何を俺に話したいんだ? もしかして話聞いてほしいだけ? 女子かよ。
「つうか三、四年ってすげぇな。なかなかいねぇぞそんなの」
「そうかぁ?」
「そうだろ」
これは俺調べによるデータだが、中高生カップルなんて大抵三、四ヶ月で終わる。半年持てば上出来。一年持ったら拍手もん。
そう考えると三、四年も付き合っていたなんて早く結婚しろよってレベルだ。俺らはまだ十六年と数ヶ月しか生きていないというのに、そのうちの三、四年って、すごいことだと思う。
しかしそんな稲村たちみたいなカップルでさえ、終わる時にはあっさり終わり、お互いにまた違う異性と付き合う――――それがリアルな恋愛だ。ドラマや漫画のように綺麗にはいかないのが現実。
「けどなー『距離を置きたい』って何なの? 『別れたい』で良くね?」
なるほどそこか、俺に聞きたいことは。
「さぁの。『別れたい』ってはっきりした言葉より『距離を置きたい』って曖昧な言葉の方が言いやすくて好きなだけじゃろ。意味合い的には同じやない?」
女の特性の一つ――――いちいち回りくどい。
まさに稲村の彼女のように『別れる』というはっきりとした目的を述べず、『距離を置く』という微妙なニュアンスの言葉を使いたがることなどがそうだ。
正直、稲村の元彼女なのであまり悪く言いたくはないし思いたくもないが、俺からしたら『距離を置きたい』なんてのは『振った自分が悪者みたいになるのが嫌だからそういう言い方を選んだ』ってところだろう。まったく汚ぇぜ女は。
下手したら『稲村をキープにしつつ他の男の人とも付き合ってみたいから』なんて魂胆もあるんじゃないかと邪推してしまう。ほら、だって俺がそうだったから……死にたい。
とにかくだ。恋愛の駆け引きにおいて女はこの回りくどさを特に多用する。
わかりやすいのが『男から告白させるように仕向ける』というアレ。
あの賢しい行為の過程には必ずこういった回りくどい文句を駆使しているはずだ。そうやってそういう雰囲気に持っていっているのだから。
その前段階として『男からデートに誘わせるよう仕向ける』というのもある。
……めんどくせんだよ。普通に女も「今度一緒に遊びに行かない?」とか言えばいいじゃん。
確かにそういうのは男からしろってのはあるが、この『勇気を出さなきゃいけないポイントを全て男側に押し付けてる感』が非常に気に食わん。男女は平等なんじゃねぇのかよ。
何で男から誘ってくるまでわざわざ待つんだよ。それまでの過程とかやりとりがもう全て時間の無駄だしめんどくせんだよ。なんならこっちから誘ってもあえてしばらく返事しなかったりするからな。ああいうのマジうぜぇ。
他にも『あえて他の異性と仲良くしているところを見せ付ける』『急にそっけない態度をとる』『相手によって態度を露骨に変える』などがある。
そして男がそういう行為の意味するところをしっかり察しないと女は決まって「男ってほんと鈍感」とか言い出す。
女はそういった駆け引きで恋愛を盛り上げているつもりなのかもしれないが、男からしたらそれらの行為は色んな意味にとれてしまうから混乱するだけ。
しかも男はそういう面倒くさいの嫌いだから最終的に萎える可能性すらあるってのを女は知らない。
「はは、何か身に覚えあるわそれ。女子ってたまによくわからないよなほんと。LINEでとか特に多い」
確かに、最近女の回りくどさにおいて顕著なのがSNSだ。こいつほど女の陰湿さが顕著に出る媒体もないだろう。
すると、稲村は思い出すように、
「前にあったんだけど、グループLINEでの女子同士のけん制のし合いがヤーバかったことあった」
「……どゆこと?」
けん制のし合い? 野球でもやってんのその女ども?
「前に中学の同窓会しようって話があってさ、俺が幹事になったからとりあえずID知ってるやつら集めてグループLINE設定して『みんなー参加できるか不参加か言ってー』って書き込んだわけよ」
ほうほう。こいつ中学でもこういうみんなの中心キャラだったんだな。というかどこ行ってもそういう立ち居地になる星のもとに生まれているのだろう。
「そしたらよー……ま~女子が返事しないことしないこと! 既読だけがつくっていうね」
「……なんでじゃ?」
意外にも、俺は自分のミソジニー的思考を駆使してがその女子たちの行動の理由がわからなかった。女ってそういう集まり大好きそうなのに。
「たぶんなー、女子はみんな『○○ちゃんが来るなら行く』とか『××ちゃんが来るなら行かない』って感じなんだろ。要は自分と仲の良い子が来なきゃ行きたくない、もしくは嫌いな子が来るなら行きたくない、って思ってるんだろうな」
はー、なるほど。いかにも女らしい集団心理だ。
「でも俺に『××ちゃんは嫌いだから誘わないで』なんて言うのは心証悪いから女子同士で『女子の中で誰が最初に参加するって言うか』っていう見えないけん制をし合って、なかなか誰も言い出せない状況になったんだろうな」
うっわめんどくせ……。そんなことに神経使うならもう最初から同窓会行かないでその仲の良い子たちだけで遊べばいいじゃん。そこまでして何で一応同窓会には行く姿勢でいるの? っていうか同窓会に行きたいの? 行きたくないの?
……まぁ『同窓会に行くのは微妙だけど、断って次から誘われなくなるのは何か嫌』とかそんな感じなんだろ。めんどくせっ。
しっかし女子同士ってさ、何であんなに仲が悪いの? しかも水面下で。
学校だろうが会社だろうがとにかく女が数多在籍する場所では必ず『実は誰々は誰々のことすごい嫌ってて、また違う誰々は普段仲良くしているけど誰々のこと嫌いで、さらに誰々は誰々のこと……』と複雑な人間関係が構築されている。
本当に男に生まれて良かったとつくづく思いますね。ええ。
「……しかし稲村、よくそんな推測できんな。ちょっと感心したわ」
さすがの俺もそこまでは思い浮かばなかった。こいつミソジニストの素質あるぜ。丁度彼女と別れたみたいだし、仲間になる?
「いやね、返事ないから結局女子一人ひとりに『同窓会来れる?』って直接個人LINEしたんだよ。そしたら何人かに『○○は来るって言ってた?』って返されたからな。さすがに気付くわ」
あー、はいはいはい。ほらまた出たよこの回りくどさ。
もう「○○が来るなら行く。××は嫌いだからあいつ来るなら行かない」ってはっきり言えよ。何で男の前ではその仲良くない感じ隠すの? 言っておくけど余裕でバレてっかんね? そういうの。
「稲村、お前もよくやるねぇ。わざわざ女子一人ひとりに聞くとかどんだけお人好しなんだ」
俺が幹事だったら『参加するかしないか言ってー。返事しないやつは強制的に不参加ねー。勝手に来んなよー』って書き込む。それならあとは放っておくだけでいいしコスパ最高。
まぁ俺そもそも幹事なんてやるキャラじゃないし、頼まれても絶対にやらない。
「うーん、俺がやんねーと誰もやんねーからな。それに女子って幹事にちゃんとお礼言って来てくれる人多いし。『今日はありがとう。お疲れ様』とか言われると報われる」
へー、そうなん? 俺そんな経験ないんだけど。幹事とかやらないからか。
でも逆に男って身内の人間に改まってお礼とか言わないんだよな、何か気恥ずかしくて。
「ああいうのまとめんのは大変だけど、最終的にみんなが楽しそうにしてくれれば俺も嬉しいし」
うわ眩しい! 俺のようなクズにはこういうの眩しくて直視できない! 親子かめはめ波を喰らったセルみたいになる! ぶらぁー。
「つか悪い、話逸れた。彼女と別れた話だったな。何? 未練でもあんの?」
俺は話を戻す。一番人気だった頃の悟飯にやられている場合ではない。
「ああ、そうだった。未練? 未練……未練……あんのかな? 別にないと思うけど。でも七里に話したってことは、あるのかなぁ?」
ん? じゃあ聞きたかったのは『距離を置く』のくだりだけ?
「つか今度普通に会うんだよな、二人で」
「……はぁ?」
ちょっと大きな声を出してしまった。やだ、ハシタナイ……。
「それ、別れてねんじゃねぇの?」
だってそれ、デートやん。もろデートですよ。
「いや別れた別れた。マジで別れた。普通に友達として野球観に行くだけ。あ、七里も来る? 前に麻雀してる時に約束してそのままだしな。マジで全然いいぞ? あいつも誰か友達誘えたら誘ってって言ってたし」
「いや行かねぇよ……」
それ行くのなかなかの罰ゲームだぞ。こいつ本気で言ってんのか?
あー、でもその彼女が言っていた『距離を置く』って『友達に戻る』ってことなのかもな。その野球観戦がデートでないのであれば。
「でもお前らすぐまたくっつきそうだな」
いるよなー。離れたりくっついたりを繰り返す意味不明カップル。それになるんじゃねこいつら。
「いやナイな。もうしばらくチューもしてないし、お互いそういう気に全然なれないし」
……チューか。チューね。はいはいはい。
久しくしてないわそれ。どうやるのか忘れた。口は尖がらせなくていいんだっけ?
「つーか七里来ないのかよー。他誰誘うんだよー」
お前なら誘える友達はいくらでもいるんだろうけど、相当な物好き以外誰も行かねぇぞたぶん。
「ってかお前部活行かなくてええの?」
俺はもう日誌を書き終わり、稲村なんかとっくのとおに部活の準備ができている。
彼はシニア時代の左腕を活かし、現ハンドボール部でも二年生にしてレギュラー。実力的にも人間性的にも時期キャプテンだと噂されている。
そんな人間が部活に遅刻はアレなんじゃねぇかと。
「あ、やっべ。まぁ今日コーチ来ないから大丈夫なんだけど。先輩もみんな優しいし、最悪『彼女に振られた』っていう最強の免罪符があるから」
……こいつ賢いな。確かにそれ言えば稲村の遅刻なんかみんな許すだろう。
「早く行けよ。俺ももう帰るし」
帰って楽しみに録画しておいた『奇想天外! ダーウィン動物園』観るんだから。
「おう。でもナイターは今度マジで行こうぜ。デーゲームでも可」
そう言って彼は教室を後にした。
「……ふぁ~あ」
彼が去るのを見送ってから、俺は伸びをしつつ席から立ち上がり、かばんを背負って職員室に向かう。
あー、夕方が近づいてきても暑いままだ。夏っぽくなってきたな。
稲村のやつ、積もる話とか言うから何なのかと思ったが、何の変哲もないただの事後報告じゃねぇか。
でも男なんてそんなもんか、女みたいに逐一お友達に恋人との話なんてしやしない。そういう話は笑いのネタにして話すか、真面目に話すとしてもさらっとするのが基本だ。
……いいね。俺は男の世界のこのあっさりとした感じがすごく好きだ。面倒くさくないというのは実に素晴らしい。
――しかし、その平和な男の世界に、女というものは侵食してくるのであった。
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