第7話 今日はお休みなのじゃ!
日中は生活魔法を教わり、日が落ちればベッドの中で気絶するまで魔力操作の練習をするサイクルを繰り返し、魔法のある生活に馴染んできたある日のこと。ふわふわなパンをスープにひたしも両手でぎゅもぎゅと食べているルルが何気なく話題を振る。
「ところでせんせぇは普段なにをしておるのじゃ?」
なお現在ギルは魔法を教えているため、ギルはルルから先生と呼ばれている。
「私ですか?そうですね、村で採れた食糧の管理、懺悔室、教育、治療、冒険者ギルドの運営……」
「冒険者ギルド!あっ、わしそろそろ冒険者になれるかの!?」
「あぁ、そう、です、ねぇ……」
「運営という事は冒険者ギルドのとうかつそしきというやつじゃろ!ここで働けというのはそういう理由もあったのじゃな!」
「ええ、まぁ、うん……」
そんなわけはない。孤児は一括して教会が預かることになっているので送り込まれただけである。しかし目を輝かせて話をするルルに事実を伝えることはどうしても出来ず、言葉を濁すだけで終わってしまう。だが聖職者として嘘やごまかしは許されぬと己を叱咤し非常な宣告をする。
「そうだ、ルルさんも最近頑張ってますし、今日は一日お休みをして遊びに出かけていいですよ」
出来なかった。
「休みか!なら冒険者ギルドに顔を出さねばな!お礼をせねばならん!」
しかも藪蛇だった。これには神父も苦笑い。
すぐにでも出掛けたいと考えたルルは、食べていたパンをすべて口の中に突っ込み、リスのように口を膨らませてパンを一気に食べようとするが、詰め込み過ぎて逆に時間がかかるありさまである。
「ルルさん、この食事は村の方が作り贈ってくださったありがたいものです。あまりそういった食べ方はほめられたものではありませんよ」
「もぐもぎゅ、もがうぐ……もごもご……んー!」
ギルのお叱りを真摯に受け止め、首を縦に振り返事をしようとするが、口に含め過ぎたパンのせいで口も開けれず変な音を出すことしかできず、それどころか喉に詰まらせているルルであった。
ギルは大慌てでルルの足を掴み逆さにし背中をバンバンと叩く。
「吐きだして!……大丈夫ですか?はい、これを飲んで返事は口の中のものが無くなってからでいいですよ」
「ケホッケホッ……ん、大丈夫じゃ、んっくんっく、ぷはぁ……すまんのう!」
逆さ吊り状態から元に戻し、様子を確認してから飲み物を渡し落ち着かせる。
「はい、一気食いはもうしちゃダメですよ、危ないですからね」
「うむ!もう二度とせぬ!あやうくわしの冒険はここで終わるところじゃったよ!」
むしろ始まってもいないのではないかとも思わないでもないが、小さな子供には毎日が冒険なのであながち間違いでもない。目を離すと死んでるのが子供である。
「では!いってくるぞー!」
今死にかけたロリがもう笑う。生死の境を超えたルルは命の輝きを見せるように溌剌とした笑顔で出掛けるのであった。
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