第6話 生活魔法第二弾なのじゃ!

「よし!どんどんいくぞー!」


 魔法の失敗によりずぶ濡れになってしまったため、一旦着替えてきたルルはその小さい体に気合を入れ直す。失敗にもめげず元気に魔法の練習を再開するルルに好ましいものを感じながら、ギルは魔法の講義を再開するのであった。


「次は明かりをつける魔法を教えましょう、夜に使えるとても便利な魔法です。魔力のかけ方で持続時間や明るさが変わりますのが、最初は感覚を掴むためにもとりあえずやってみてください。では前方に魔力を集中させて≪光球≫と唱えてください」


「まかせよ!≪光球≫わっまぶしっ」


 ≪光球≫を唱えると昼の太陽にも負けない光を放つ光輝く球が現れる。予想外の眩しさに目をやられたルルにギルが説明をする。


「今回はかける魔力の量がちょっと多かったようですね。次はもうちょっと抑えてやってみましょう、と、≪胡散霧消≫」


「お、おお、消えた!なにをしたのじゃ!」


 強い光を受けたためしょぼしょぼする目をこすりながら興味深げに質問するルル。


「魔法を打ち消すいわゆる対抗呪文というものですね。ただ、魔法を散らすことは出来ても発生した現象を無くすことはできません。例えば先ほど暴走しルルさんを覆っていた水の魔法を解除したのもこれですが、一度出した水自体は消えるわけではありませんので水浸しになりましたよね」


「なったのう!びしょびしょじゃよ!」


「また火の魔法であれば種火となった火は燃え続けることができず消えますが、燃え移った火は消えることはありません。また、対象の魔法にかけられた魔力と同程度の魔力が必須ですので、魔力差がある場合はあまり使えるものでもありません。なのであまり過信しすぎないように注意してくださいね。」


「しょうちした!」


 ギルの説明に右手を掲げながら笑顔で宣言するルル。新しいことを知る喜びを隠さず表現する姿は微笑ましいものであった。


「さて、では≪光球≫の練習に戻りましょうか。全てはかけた魔力とイメージに左右されます、自分に追従させたり設置したりと自由度が高いですので頑張ってください」


「うむ!いくぞぉー!≪光球≫!」


 先ほどの≪光球≫でかける魔力の配分を理解したのか、先ほどより明度を下げた光の球が発生する。よしよしと喜び駆け回るルルを光の球が追う。どうやら追従型をイメージしたようであった。


「素晴らしいですね、これならもう一個教えても大丈夫そうですのでやってしまいましょうか。次の魔法は≪浄化≫です、これは全身に魔力を行き渡らせて唱えてください。現在では必須とも言える魔法ですね」


「必須?わしは知らんかったがのう……」


「ルルさんは知らないつもりでもやればああこれか、となるかもしれませんよ?とりあえずやってみましょう。イメージは出来ずとも唱えれば発動はしますので」


「そうじゃのう!はぁぁぁ……≪浄化≫!」


 ≪浄化≫を唱えるとルルの体からキラキラ光輝く粒子が昇って行く。修道服を着ているのもあり、その姿はまるで神から祝福を受けている神聖な姿のようにも見えた。自分から立ち上る光を興味深そうに眺めるルルにギルが声をかける。


「どうでしょう?心当たり有りませんでしたか?」


「んむ!やはりないのう!でもきれいじゃな!」


「おや?そうなのですか?綺麗ではありますね、これは簡単に言うと対象を綺麗にする魔法です。食事時や旅の最中で体を拭けない時、あとはトイレの後などに使われますね」


「ほほぅー!使い時が多い魔法じゃな!」


「ええ、聖霊教が広めた独自の概念ですが、衛生観念をいうものがありまして、簡単に言うといつも清潔にしましょうねと言うもので、これにより病に倒れる人が激減したという実績があるのです。≪浄化≫はその清潔にするための魔法なのです」


「つまり病気に対するたいこうじゅもんじゃな!」


「うーん、それとはまた違うものですねえ。予防であって治療とはちがいますので」


「そうかー……ちがうかー……」


 説明を聞き理解したと右手を突きだし自信満々に答えたが、間違っていると言われつきだした右手を口に持っていき俯いてへこむルル。そのくるくると変わる表情は万華鏡のようであった。

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