第29話 子守なのじゃ!

 村の中央からやや外れたところにある教会。そこで今日も元気にもきゅもきゅと朝食を食べているルルが今日の予定をギルに聞く。


「今日は何の勉強なのじゃ!?」


「今日は勉強ではなくシスター見習いとしてのお仕事をお願いします」


「おお!お仕事!任せよ!何をするのじゃ!」


「普段は村の皆さんが教会の仕事を手伝って頂いているのですが、本日はルルさんに手伝っていただきたいと思っています」


「普段手伝ってもらっているとな!わかった!懺悔室じゃな!」


「流石にそれは村の方に手伝ってもらうわけにはいきませんね」


 シスター見習いとしてのお仕事と聞いてパッと閃いた懺悔室と答えたルルだが、普段村の皆に手伝ってもらっているという前提条件をまるっきり無視していると突っ込みをもらう。


「違ったか!ならばあれじゃ!結婚式じゃな!」


「今日結婚予定の方はいませんね。正解は子守でした」


「子守かー!おしかったのう!」


 かすりもしていない。

 だが本人的には本気でそう思っているのか、全身でもうちょっとだったんだけどなー!という空気を出して悔しがっていた。それをいつも通りニコニコと微笑みながらルルの頭を撫で、ギルは確認をとる。


「そうですね、ということで、よろしいですか?」


「任せよ!やったことはないがわしなら出来ると信じておる!」


「ありがとうございます、私も信じてますよ。ではそろそろ親御さんが子供たちを連れてくる時間ですので行きましょうか」


「おー!」


 元気に腕を振り上げこれから始まる子守に気合十分のルルであった。



「てあー!」


「ぐあああああ!やられたのじゃああああ!だが覚えておくが良い、光あるところに」


「とどめだー!」


「まだしゃべってる途中じゃよー!ぎゃああああ!」


 ある時はルルは勇者ごっこの悪役として子供に倒され断末魔をあげる。



「いっせのでいち!」


「いっせのでさんじゃ!」


「いっせのでぜろ!やったー!」


「ぐぬぬぬぬぬ!このわしが負けたじゃと!?」


 またある時は親指の上がる数を当てるゲームで負け全力で悔しがる。



「つかまえたのじゃ!」


「はやい!」


「ふはははは!誰もわしからは逃げられんぞ!」


「でも他の子が助けちゃってるよー?」


「なんとー!捕まえたの逃がすなんてひどいのじゃー!」


 そのまたある時は解放有りの鬼ごっこで調子に乗っているところを突かれ逃げられる。

 子守と言うよりも子供に混じって全力で遊んでいるだけのルルであった。


 なお一緒に遊ぶことが難しい歳の赤ん坊はギルが面倒を見ていた。

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