第27話 農業体験の報告なのじゃ!

 ジャガイモを貰い一日中ニコニコと農業の手伝いをし帰宅となった。途中から完全に農家の探検ではなく農家の体験になっていたが細かいことは気にしないルルなのであった。

 ルルは帰宅するとギルに今日一日の成果を楽しそうに報告する。


「せんせぇええ!見るのじゃ!お芋さんもらったのじゃぁあ!」


「良かったですね。今日はそのお芋を使った料理にしましょうか」


「うむ!あ!でもダオナンがお肉くれる言うとった!」


「おや、それは届いてないですね。残念ながら狩りは出来なかったようですね」


「んむう……そうかぁ……残念じゃのう……」


 今日は自分の採ったジャガイモとダオナンのお肉でご飯だと思っていたルルは意気消沈する。それを見て哀れに思ったギルは助け舟を出す。


「ダオナンさんからは届いておりませんがお肉の在庫はまだありますので、今日はそれを食べましょうか」


「ほんとか!わっほーい!わしのお芋とお肉なのじゃー!」


 ギルに飛びついて大喜びをするルルを抱きとめ、頭を撫でながら喜んでもらえて良かったとギルは安堵し、そのまま他にはどんなことをしたのかを聞く。


「ところで今日は農家の探検をしたようですがどうでしたか?」


「うむ!お芋さんもらってな!あ!これさっき言ったのう!なんかのう!畑を作ると自分のものになる言うとった!」


「自分のものにですか」


「うむ!畑を作った分を貰えるんじゃと!だからいっぱい畑広げてるんじゃと!」


「そうですね、自分のものになるならいっぱい広げますね」


 この村は領主と教会が主導でやっているため様々な面で便宜が図られている。そのうちの一つが面積制限のない墾田永年私財法である。これにより開拓団の農民は積極的に墾田をするのである。


「あとな!畑を広げるのに魔法がすっごく役立つんじゃと!だからこんな便利なもの教えてくれた聖霊教に感謝してるって言うとった!」


「それはこちらとしても嬉しくなりますね」


 開拓の難易度は聖霊教の広めた魔法のおかげでかなり下がったと言われている。

 魔法があれば飲み水の確保もたやすく、火の確保も面倒な手順がいらない、農耕面で言えば人間一人が馬1頭同等の働きができる。その上回復魔法が大地にも効くため、連作障害や病気にも対応できる。


 今の時代、開拓の成功は約束されたものであると言ってもよいのである!と対外的にはそういうことになっている。


「うむ!わしも感謝された!あとな!それでな!畑で役立つ魔法も教えてもらったんじゃ!あ!でもせんせぇがいないところで魔法は駄目って言われてるから使いはせんかったよ!えらい!?」


「約束をちゃんと守ってくれたのですね、ありがとうございます。とっても偉いですよ」


「じゃろ!じゃろ!」


 ルルは頬を手で挟んでいやんいやんと体を振って大喜びする。その様子を見ながらルルさんは可愛いですねと誉めちぎり、一番気になっていた点を質問する。


「それで農家を体験してみて、魅力的でしたか?」


「うむ!以前グリンドが言うとったんじゃがな!最終的に冒険者が目指すものって言ってたのもわかる気がしたのじゃ!」


「おや?そんな話をされたのですか?」


「されたのじゃ!その時は安定がどうこう言われてのう!安定より冒険者が良いと言ったのじゃ!でもな!農家も安定している感じはないんじゃ!なんと言うのかのう!」


 そこで一旦言葉を区切り、なにかちょうどいい言葉を探すために視線を飛ばして考えるルルであったが結局見つからずそのまま続ける。


「なんじゃろうな!のんびり土いじりしてるだけとは違うんじゃよ!お野菜と真剣勝負しとるみたいな!でも愛情はあるみたいな!うん!これも別の形の冒険って感じがしたのじゃ!」


「そうですか、それは良かった。ルルさんが良ければまた行っても良いんですよ。私の方からもお願いしておきますので」


「ほんとか!ありがとうなのじゃ!」


 ギルは依然としてルルが冒険者以外の道を見つけてくれることを願っている。

 そこで探検を許可し、幼いルルの気が向いたままに好きなところに行けるように、そしてそのまま職業体験ができるようにと各所に頭を下げていたのだ。

 今回はそれが上手くいき、農家の魅力を知り、それもまたありだと思ってくれた。これなら危険な道を選ばず、他の道を行ってくれることだろうとギルはニコニコとルルの相手をするのであった。


 そんなことに気付かないルルは、ギルの思惑通りに冒険者以外の道をそうと知らずに探すのであった。

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