第25話 農家探検なのじゃ!

「おっにくーおっにくー♪」


 ルルはダオナンと別れた後、お肉お肉とテンション高く道を進む。ルルの中では本日のご飯にお肉が足されることは確定事項のようであった。


「そうじゃ!せっかくじゃから他のご飯を作ってくれるお家も見に行くか!お肉も大切じゃがお野菜も必要じゃ!」


 本日の探検は食材への感謝を込めて農家巡りへと決定した。決して探検ついでに食べ物を分けて貰えると良いななどとは考えていない。


 そうしてやって来たのは広大な農地が広がる村の南部。そこではほっかむりを被り首にタオルを巻き、丈夫な長袖と長ズボンに長靴を履き畑で農作業に従事している多数の人間がいた。


「おほー!畑じゃー!広いのー!」


「なんだい?教会の子かい?」


「めんこいねぇ」


「めんこいとかわし照れちゃう!もっと言うがよいぞ!」


 目的地に着いて早々感嘆の声を上げたルルに、農作業をしていた人間が手を止め近付いてくる。可愛いと誉められたルルは当初の目的も忘れ、嬉しそうにくねくねしながら喜色満面の笑みででもっと褒めてとせがむ。


「めんこいのう、めんこいのう、おべべもようけ似合っとる」


「ほんにのう。こんだけ可愛ければ将来は凄い美人さんになろうのう」


「じゃろう!この服気に入っとるんじゃよ!」


 褒められてその場でくるりとターンを決めるルル。修道服がひらりと舞い、輝く金髪が朝日を反射し、まるでルルが輝いているような錯覚を与える。


「ほんでも今日は何かお使いでもあるんかい?」


「あ!そうじゃった!今日はのう!探検に来たのじゃ!」


 ひとしきり褒められて満足した後、言われてようやく自分の目的を思いだすルル。


「探検かい?」


「そう言えばギルさんがそのうち子供がお邪魔するかも言うとったなあ」


「でもここにゃ畑しかないよう?」


「十分なのじゃ!こんな畑初めて見るのじゃ!」


 ルルの目的を聞き不思議な顔をする農民達。


「そうかいそうかい。じゃぁもそっと近くで見てみるかい」


「もっと近くでって、近づいたら何か変わるのかや?」


「かわるかわる。こういうんは見て触って初めて分かるんよお」


「おおおー!触ってもいいのかや!やるやる!わしやっちゃうぞ!」


 探検とは言え流石に農作物に手を出したら悪いと思い、眺める程度にしておこうと考えていたルルだったが、触っても良いという許可をせっかくもらったのだから俄然乗り気となる。


「でもその格好じゃぁちょっとあれだあねえ、せっかく綺麗なおべべなのに汚しちゃ可哀想だあ」


「大丈夫じゃ!祝福がかかってるし浄化魔法もあるから問題ないのじゃ!」


「おやまあ!そりゃすごいねえ。それなら手袋と髪の毛をまとめるだけでいいかねえ」



「よし!行くぞ!何をすればよいのじゃ!」


 言われたとおりに髪の毛を一つにまとめポニーテールにし、渡してもらった手袋をつけて小さい体に収まりつかないほどの気合を漲らせるルル。


「それじゃあねえ、今すぐ採れるものはジャガイモかねえ、こっちきんさい」


「ジャガイモ!おいも!今行くのじゃー!!……おや?」


 ルルは誘導されるままにジャガイモ畑へと足を運ぶ。青々と茂ったジャガイモ畑を眺め首を傾げる。


「ここなのかや?ジャガイモなっとらんぞ?」


「やあだもう、ジャガイモは地面に出来るんだよお」


「本当かや!知らんかったぞ!」


 ジャガイモを食べたことはあっても、調理済みのものしか知らず何なのか理解していなかったルルは驚愕に目を見開く。


「掘ってみれば本当ってわかるよう。やってみい」


「よし!一気に掘りだしてやろうぞ!封印されし力!パワー!オブ!ド」


「一気にやって傷がついたらダメだよお。優しく優しく掘っておくれえ」


 知らなかった事実への興奮をそのままジャガイモ掘りに向け、全力で掘ろうとしたルルであったが待ったが入る。ルルは興奮を向ける場所を見失い消沈しながらも言われた通り優しく掘り始める。


「オほおおおん……わかったのじゃぁ……やさしくやさしく……出てきた!これじゃな!ってすごいいっぱい!なにこれ!」


「おお、おお、上手く掘れたねえ」


「上手い!?わし凄い?!」


「おお、おお、すごいよお、ご褒美にそれは持って帰ってもいいよお」


「おっほー!おほ-!ありがとうなのじゃー!わしの掘ったジャガイモー!」


 優しく掘った結果、鈴なりに実ったジャガイモをゴロゴロと掘りだし、先ほど以上に興奮をするルル。さらにそれを褒められ、ご褒美に上げると言われ有頂天に達するルルであった。

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