第262話 クリスマス・フィードバック・サンタボーズ・・・その5

「いじめられる側にも責任があるっていう話もありますけど」

「いいえ。『無い』と言い切ってください。そうでなかったらテレビなんかやめてください」

「厳しいですねえ。あなたは実際にいじめをやめさせられたんですか」

「いいえ」

「じゃあ、無駄骨ですか」

「わたしがやめさせたんじゃなくって、いじめる人が自分でやめたんです。そういう人ならこの2週間で何人もいました」

「ほう。いじめる側があくまでも悪くて、責任を取って自分でやめたと」

「いいとか悪いとかいうレベルじゃないんです。むしろいじめをやめた人は『やめた』って事実を評価して上げたいです」

「これまで散々いじめてても」

「はい。蒔いた種は刈り取らなきゃいけませんけど、いじめをやめた瞬間から別の良い種も蒔き始めるんだとわたしは思います」

「なんか真面目な話になってきましたね」

「ふふ。番組的に面白くないんならサービスしますよ。このサンタの服装、メイドカフェでバイトしてる先輩から借りて来たんです」

「へえ!」


そこで一旦カメラが止まった。インタビューしてくれてた中年男性スタッフがわたしに食い入るように聞いて来た。


「ねえ、そのメイドカフェってどこにあるの?」

「市内ですから車で10分ぐらいですよ」

「そこ行ってもいいかな?」

「いいですよ。ちょっと待ってください」


わたしは奈月さんに電話する。


「あ、奈月さん、今日バイトの日でしたよね」

「うん。何?」

「今テレビが取材に来てるんですよね。『アブねいやつら』っていう」

「おー。火曜の夜中にやってるやつだ。すごいじゃない、もより」

「サンタの服の出所も取材したいって。それで、奈月さん」

「うん・・・」


その後のやり取りはスタッフたちに聞こえないように小声で話した。

電話を切ってわたしはスタッフに向き直る。


「OKです。店の中もカメラ入って大丈夫ですって」

「よし。じゃあ早速行こう」


わたしはスタッフ達と一緒にバンに乗り込んだ。


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