第174話 プレフルマラソン(その2)

 梅雨に入る前の5月最後の日曜日。快晴。

 PCの地図アプリで20kmを計測し、コースもばっちり決めた。できるだけ信号にかからず、起伏もそれなりにある。何より走っていて風景も楽しめるコース設定にした。

 せっかく20kmも走るんだから。装備も十分。

 足下から。

 レース用にと用意してあったシューズ。きちんと指でつまんで紐をひと締めひと締めしてフィットさせる。

 足裏、指にワセリンを塗ってマメ防止し、滑り止め付きのランニング用ソックス。私の場合足が突っ張るような感覚は好みじゃないのでタイツは履かず。

 ランパン、ランニング用の速乾性の高いTシャツ。

 ほんとは奈月さんのしてるようなGPS付きのウォッチがいいんだけれど、持ってないので、何故かお師匠が所有してる男物のG-Shockを借りた。

 ウエストポーチに家の鍵と5百円玉を2枚入れ、キャップを被り、スタートライン(お寺の前)に立った。


「行くのか」

「うん」

「気を付けてな」

「はーい」


 お師匠とのやり取りの後、ストップウォッチのスタートボタンを押して、わたしは走り始めた。


「うわー。気持ちいい!」


 昼間に走るのは久しぶりだ。去年転んで以降、ちづちゃんとの約束もあったけれども、お寺の仕事の関係で夜に走るスタイルを変えることはできなかった。その代わり、照明が完備されて足下にも危険の無いコースを夜走っている。

 たまにお日様の下で走ると本当に気持ちいい。

 

 でも。


「気温対策は必要だな」


 やはり、暑い。

 レースは10月末だから今よりは涼しいだろうけれども、夜間よりは気温が上がるはずだ。


「給水もポイントだな」


 第1回ということで県を挙げての大会運営となり、ボランティアサポーターもなんと5,000人規模だという。県の名産品を給食として置く目的もあり、給水所はかなり多く設置されるらしい。

 こんなことを考えながら走るのも楽しい。以前は東京マラソンのような大会のある東京を羨んでいたけれども、うちの県だって負けていない。

 いや、地方の意地ってものと、県知事が大号令をかけていることもあって、気合いは都市マラソンより上だろう。

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