第171話 反転しようか(その7)
わたしは三木さんに向き直る。
「三木さん、あなたは・・・」
「つまり、ジョーダイさんは他の4人と一緒に居たら、自分を低めるだけだよ。もっと自分をのびのびと伸ばせる環境に身を置かないと。たとえば生徒会執行部に入って、片貝さんの下で働くとかさ」
ん、という顔で三木さんが話を区切る。
この人のやり方は分かった。自分が主張する時は決して話を中断しない。そして自分に都合のいい結論を導き出せるタイミングになった時、間を置いて相手の言葉を促す。しかも、相手の答えのパターンをある程度想定していることだろう。
”三木さんは片貝さんに頼まれたんですか?”
大方こんな答えがわたしの口から出るのを待っているはずだ。
よーし。それなら。
「無理、ですね。わたしはちづちゃんが好きなんです」
ふっ、とわたしの答えを三木さんは嘲笑する。
「ジョーダイさん、友達として好きな気持ちは分かるけど、低め合うだけなら本当の友達とは言えないんじゃないかな」
「恋愛対象として好きなんです」
「ええ!?」
三木さんは絶句して驚いている。声を上げて驚いたのは、ちづちゃん、ジローくん、空くん、学人くんの4人だ。三木さんは切り返しを考えてる。30秒ほどたっぷりと待ってあげた。
ようやく彼は口を開く。
「冗談でごまかすつもり?」
ぷぷ。あまりにも想定の範囲内すぎる答えなんで思わず笑いそうになった。人間の底が知れるね。でも、許してあげないよ。
「冗談じゃなく、本気です。わたしは、ちづちゃんの顔も性格もかわいくて好きです。”彼女”、にするならちづちゃんがいい。片貝さんは嫌です」
「じゃ、じゃあ、他の男子3人は? こんな中途半端な男たちとなんで一緒に居るんだ?」
「はあ・・・三木さんって子供ですね」
「子供?」
「人間の機微っていうものを全く分かっておられません。いいですか。わたしは男子3人のこと、顔も好きだし性格も好きです。”彼氏”、にできたらいいなあ、なんて思うことあります」
「適当なこと言うなよ!」
三木さんが、わっ、と叫ぶ。意外と単純だなあ。
「三木さんはイケメンですけど、わたしの感性にはちょっと合わないお顔です。性格も、もう少し深みがある方がいいです。
「俺が浅い人間だと?」
「はい」
「・・・・・」
「見てください。この4人はさっきから言い訳もしないし怒りもしない。余程深いですよ」
「今の、”彼女”、”彼氏”、の話、広まってもいいんだな?」
「全く構いません。ただし正確に伝えてください。わたしが三木さんのこと、”子供”、で、”底が浅い”、って言ったことも正確に」
「後悔するなよ」」
「後悔はしませんけど、あなたを呼んでしまったばっかりに先に帰った4人や、ここに居る4人を傷つけてしまったことを既に悔やんでいます」
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