第129話 一応、バレンタイン(その3)

「?そういえばもよりさん、さっきからチョコばっかり食べてるね」


 ジローくん、鋭い!

 けれどもわたしは平然と答える。


「え?バレンタインだからチョコ食べないと」


 ケーキの脇の大皿に盛られたキューブ状のチョコがあったので助かった。わたしはチョコをつまみ、ひたすらコーヒーを飲んでいた。


「あ、新しい種類のケーキ、入って来たよ。もよちゃん、行こ!」


「う・・・ん」


 断る理由がない。

 女子全開のちづちゃんに引っ張られ、ケーキの前で固まるわたし。


「ほら、このモンブラン、おいしそう。さっきのやつとちょっと違うアレンジだね」


 どうやらさっきちづちゃんが食べたモンブランは生クリームベース、今新しく出て来たのはカスタードベース、っていうことなのだろうが、わたしにとっては、”ケーキ”、という単一の食べ物、という意味しか持たない。少しでも、”ケーキ”、という分類からはみ出そうな種類のものを物色していると、


「?もよちゃん、取ってあげようか?」

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