第128話 一応、バレンタイン(その2)
2月15日(土)15:00、オータムホテル1F、喫茶ラウンジ「
バレンタインバイキング最終日。
わたしの返事と男子への招待の後、どういうルートを使ったのかは分からないけれども、この激戦の予約をちづちゃんは確保していた。みんなして、
「すごいね!」
と言っても、
「うん、ちょっとね・・・」
と答えるだけでそれ以上何も言わない。ちづちゃんの知られざるミステリアスな部分にちょっと焦らされる。
「あら、遅かったわね、千鶴」
ちづちゃんがあたふたする。
「お母さん、内緒にするって言ってたじゃない!」
「何言ってんの。せっかくお友達をご招待するんだから」
「え?」
4人してその女性をチェックする。
「あの、もしかして・・・・」
「千鶴の母です。いつもうちの娘がお世話になってます。今日はゆっくりして行ってね」
「あ、こちらこそ千鶴さんにはいつもお世話になってます」
みんな一斉にびしっと挨拶する。
なーんだ、お母さんの勤務先の家族枠ってことか。ちょっとちづちゃんのお母さんにしては意外というか、粋なお姉さんて感じだな。
「で、どの子が千鶴の本命?」
ちづちゃんはいたたまれずにもじもじする。
「・・・あの、男3人とも”義理チョコ”だっていう自覚ありますから。ご安心下さい」
空くんらしく非常に的確でスマートな返しをしてくれた。100点満点だ。
でもお母さんはにやにやしたままちづちゃんを許さない。
「ううん。男の子とは限らないよねえ」
そう言ってわたしを見る。どきっ、とする。
「あなたがもよりさんね。いつも千鶴があなたの話するのよ」
「え?」
「中学の時まで家でも無口だったのに、”もよちゃんがね、もよちゃんがね”、って学校のこともよく話してくれるようになったし、ありがとうね」
「いえ、そんな。わたしの方こそ、ちづちゃんには本当に仲良くして貰って」
「うーん」
「?何ですか?」
「うん。ほんっとに美人ね。背も高くてかっこいい。千鶴に聞いてたのよりも実物は遥かにかわいい」
「や・・・そんな」
「ほら、お母さん。仕事しなくていいの!?」
「ははっ、千鶴、照れてるね。じゃあ、皆さんこちらのお席へどうぞ」
そう言って、”予約席”、の札が置かれた、ケーキに一番近い席へ案内してくれた。
「じゃあ、時間は90分一本勝負。飲み物もお代わり自由。そこに並んでないケーキがあったらスタッフを呼んで注文してね・・・ってまるでお寿司の食べ放題みたいね」
ははっ、と豪快に笑う。
「もうあんまりテーブルに来ないでね」
ちづちゃんからつれないことを言われても、はいはい、とにこにこして仕事に戻って行った。
「いいお母さんだね」
学人くんから褒められてもちづちゃんは、
「そうかなあ・・・」
と一応口にはしてる。
けれども、ちづちゃんとお母さんがいい感じなのは誰から見てもよく分かる。
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