第87話 初デート? その8

 大急ぎでわたしもステージに上がる。

「この穴、なんなんですかね?」

「多分、ステージ脇に控えてるヒーローが、悪役をやっつけに出るタイミングを見るための覗き穴」

 奈月さんが長いセリフでもって説明してくれた。

 2人が顔を寄せ合い、くっつけ合えば覗けるぐらいの大きさ。

「えーと、いいよね?」

「何が、ですか?」

「ぴとっ、と頬をくっつけても」

 奈月さんの提案にわたしは黙って首を振る。

「えー。一緒に覗いた方が楽しいのに」

 執拗に繰り返す内に面倒になってきた。

「分かりました。じゃあ」

 これじゃまるで中学生だ。肩を寄せ合い、頬を触れてそれぞれの片目で穴を覗く。

「あれっ?」

「火?」

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