第86話 初デート? その7

 食堂を出た後、どこへ行こうかとぶらぶら歩いているとエスカレーターではなく、階段に突き当たった。

「もより、屋上プレイランド行こっか?」

「え?まだやってるんですか?」

 子供の頃、デパートに来るたびにねだって連れて行って貰った屋上。

 お金を入れて動くゆっくりのゴーカート。メロンソーダにバニラアイスを突っ込んだだけのクリームソーダ。インコと金魚とミドリガメしかいないペットショップ。

 すべてがデパ屋にあった。

 この階段を登りきると。

「うわー」

 まだ、やってた。

「ちょっと、感動」

「わたしもです」

 残念ながら人は少ない。ゴーカートなんかのスペースには母親3人に子供4人。掃除をしてるスタッフにワゴンでソフトクリームやクリームソーダを売ってる店員。パラソルの建てられた丸テーブルのエリアにはまばらにしか人が座っていない。

「もより、クリームソーダ要らない?おごるよ」

「え、いいんですか?やった」

 2人してパラソルの下に座る。この寒空にクリームソーダはどうかと思ったけれども意外とおいしく食べられるものだ。

「うー、懐かしー」

 わたしが感激していると奈月さんは何やら別の場所を見ていた。

「もより、今思い出したんだけどさ」

「何ですか?」

「子供の頃、母親にここに連れて来て貰った時に見たんだよね」

「?何をですか?」

「虹」

「へー」

「でも、空に見えたんじゃないよ」

「空じゃなかったらどこにですか」

「あそこ」

 奈月さんが指差したのはヒーローショーなんかをやっていたステージだ。今は多分使われずにいる。

「ステージの上に見えたんですか?」

「ううん」

 がたっ、と立ち上がりつかつかとステージまで歩いて行く。そのままステージに上った。誰もいないから別に構わないんだろう。

「こーこーかーらー、見ーえーたー」

 それはステージ脇に開いた丸い穴だった。周囲を気にせず大きな声で発音している。なぜかわたしは嬉しくなる。

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