第20話 純喫茶アラン その9
わたしはアランに行った日以来、1年4組の前を通る時、ちらちらと市松くんを見るようになった。市松くんは教室の真ん中あたりの席なんだけれど、なんていうか、”埋没してる”っていうのが正直な感想。存在感がないという意味。いや、それだけならばまだいい。たまに誰かから声を掛けられた時の彼の反応は遠目にもあせあせしていて挙動不審ぽいのだ。
もしかしてクラスの中で浮いてる?
アランではかっこよく、イケてるウェイターなのに。
ちょっと、心配だ。
今日はたまたまいつもの5人で4組の前を通った。
わたしが4組の中を覗いているとさすがにちづちゃんは気付いたようだ。
「もよちゃん、4組に誰かいるの?」
ピクっと学人くんが反応する。
「もよりさん、駄目だよ。他のクラスの奴と仲良くしちゃ」
「え、何で?」
意味が分からないのでわたしがちょっと鋭く切り返すと学人くんはしどろもどろに答える。
「いや、あの、ほら、来年また陸上軌道でやり合う敵だから。2組は2組同士だけで仲良く結束してないと」
なんのこっちゃ。
そういえば市松くんも一部の会話だけしどろもどろだったな。男の子って、よく分からん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます