第21話 純喫茶アラン その10
10月に入った。
土曜の午後。
最近はどんどん1人だけで月参りを任されるようになって、今日も黒衣を着て自転車に乗り、檀家さんを数件回った。後は帰るだけ。
さあ、帰ったら買い出しだな。それから夜は最近開拓した照明ガンガンのジョギングコースを走って、と。
脳内でスケジュールをぐるぐる回しているわたしの目に意外な光景が飛び込んできた。
あ?市松くん?
児童公園のベンチの真ん中に市松くんが座ってる。
その左隣に2人、右隣に1人、3人とも見た目は普通な感じの高校生かちょっと少し上くらいの男が座っている。
友達?でも、明らかに様子がおかしい。
周囲には子供連れのママさんたちが楽しそうに遊んでいるけれどもそのベンチの所だけ思い空気。もっと正確に言うと市松くんだけが俯き沈み込んでいる。
でも、どうしよう。躊躇し始めた瞬間、ベンっ、と右隣の男が市松くんの後頭部を思いっ切りはたいた。
市松くんはリュックから財布を取り出す。
”あ、駄目だ”
わたしの心の中でカチャっと音がしてギアが一段上がった。
すーっとそのままベンチの前に自転車を滑らせて4人の前に立った。
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