第02話

「どこだここ……」

 自然とそう呟いていた。川に飛び込んでいたはずなのに気が付いたら丘の上に寝ていたのだ。周りに木が生えているが見たことが無い木ばかりだ。ふと気がつくと俺は鞄を持っていた。中に入っていたのはナイフと少し重い袋。また、俺は草むらの中にに一枚のカードが落ちているのを見つけた。

「なんだこれ…?身分証明書なのか?」

 そのカードにはと住んでいる町とその場所の地図が書かれていて、その地図にはカードの現在地も出ていた。その地図は縮尺が小さく、かろうじて町が見えるほどだった。それから、名前は書いていないのかと思ったが、多分何かの条件があるのだ、と俺は勝手に納得していた。

「どうやらこのカードの持ち主はここから見えるあの町に住んでるみたいだな。行ってみるか」

 いやちょっと待てよ、そもそも何が起きてるんだ?もしかして俺は川に落ちて死んだのか?それで異世界転生とやらをしてしまったのか?もし俺が死んだのなら…都も『責任をとる!交也が死んだのは僕のせいだ!』とか言って遺書でも残して自殺するんだろうな…。まあそれはもう関係ない。とりあえず町に行ってみよう。


「何か身分を証明できるものは持っていますか?」

 その町の入り口にある関所で俺はそう聞かれていた。

「いえ、持っていません。少しの散歩のつもりだったのですが…道に迷ってしまって……」

 もちろんそんなことはない。あったらおかしいしな。

「では、来訪者用の身分証明書を作りますのでこの用紙に必要事項を書いてください」

 そう言われて書いたのは名前と来訪した日付、目的だけだった。日本語が使われている世界で良かった。しかし町に入るだけでずいぶん時間をかけてしまった。名前をどうしようか悩んだのだ。名字は書かなくてもいいということだったのでとりあえず『コーヤ』と書いておいた。

 さて、俺は『二世交也』あらため『コーヤ(仮名)』となって町に入った。すると走ってきた女性にぶつかった。俺はとっさに「すいません」と謝り、向こうも謝ってくれた。急いでいたようだな。なんとなく睦月に似ていた気がする。さて、どうやって探そう。まずこの町は地平線が見えるほど広い。もしも探している人の家がここから反対側の関所の近くだったらどうしよう…。田舎ほど広いものだし発展しているようでそこまでじゃないのかもな。それと住所の見方がわからない。何丁目だとか番地とかのこの世界での基準がわからなくてどうすればぃいのかわからない。道行く人に聞くしかないな。そう考えて俺は行動を開始した。


「この辺りですか。ありがとうございます」

 探している家は以外と近いようだ。よく考えてみれば見つけたカードは落し物だろうから関所から近くに住んでいるのは当たり前だな。例の家は入ってきた関所から500メートルほどしか離れていなかった。この世界では住所を表すときに最寄の関所からの距離と、北を0度とした角度で表すようだ。例えば東が90度、南が180度、西が270度のようだ。一度地図を取りに関所に戻ったときに確信した。地図と一緒に分度器も置かれていたしな。そして例の家の住所は527-48。もうそろそろで見つかるはずだが…。


 家の主は留守だった。おそらくこのカードを探しに外へ出ていったのだろう。俺がこの辺りを周って町を見ようかと思っていると声が聞こえてきた。

「どうしよう…やっぱりカードを無くしちゃった……。もう一度発行してもらうしかないのかな……」

 その人こそ俺が探していた人、そして俺が関所でぶつかった、さらには睦月リオに瓜二つな、あの女性だった。

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