第03話
現れた女性、探していた家の主はこう言った。
「あ、関所でぶつかってしまった方…。ここで何をしているのですか?」
まあその反応が妥当だろう。俺は事の顛末を話してカードを渡した。まあ気がついたら丘の上にいたとかはもちろん言わず散歩してたら見つけたと言ったがな。
「まあ、あなたが拾ってくれたのですね。先程までこれを探しに外へ出てまして……」
そんなに堅苦しい喋り方だとこっちも緊張してしまう、そう伝えてから、
「自己紹介がまだでしたね。俺はコーヤ…セタフ、コーヤ・セタフといいます」
「私はリオ、リオ・ジャネールです。以後お見知り置きを。」
睦月に似てると思っていたが名前まで一緒なのか。睦月と違って本当に優しそうだな。
「あの、お願いがあるんですが。実は住んでいた町への帰り方がわからなくて、いっそのことこのせか…町に定住したいと思っていて。どうすればいいんですかね。教えてもらえると助かります」
「定住の手続きには保証人が必要ですが…カードを拾ってくれたお礼として、私が保証人になります。ぜひこの町に」
とりあえず、ありがとうございます、と言って、俺たちはお役所に向かった。
「はい、手続きは完了です。新しく身分証明書を発行致しますので少々お待ちください」
お役所で新しく定住者用の身分証明書を作り、あとは住む家を探せばいいことになった。
「手続きは終わりましたか?」
「はい、おかげさまで。本当にありがとうございます」
「実は私も一つお願いごとがあるのですが…いいでしょうか?」
「はい、何ですか?」
そのとき、『コーヤ・セタフ様、カードの発行が完了しましたのでカウンターへお越し下さい』とアナウンスが流れたので俺はカードを取りにいった。
いざ自分の身分証明書を持つと何だか変な気分だ。多分名前が「二世交也」じゃないからだろうな。
「どうですか?見せてもらってもいいですか?」
「いいですよ。どうぞ」
「名前…コーヤ・セタフ…住所…未定…年齢…16…。ちゃんとできてますね」
あれ、名前が見えてる。俺は持っていた紙に書かれている、身分証明書の概要を見た。他人に見せたときには持ち主が見せたくない項目は見えないようにできるようだ。ということはリオさんは名前以外は見せてもいいと思ってるのか。さすが異世界、何でもありだな。
「そうだ、さっき言ってたお願いって何ですか?」
「それですか、その…せっかく出会ったのですし、良かったら一緒に冒険者ギルドに入ってもらえたらな…と思って」
え?冒険者ギルド?まさかモンスターとかがいてそれを剣や魔法で倒す世界なのここは。ちょっと町並みが中世風の普通の世界だと思ってた…。道理で鞄にナイフが入ってたわけだ。納得。でもそれだったら魔王とかいるのかなあ。俺が転成者ってことはその魔王を倒せとかいう神様の思し召しかなあ。死ぬの嫌だよ?いや一回死んでるけど。もう一回死ぬのは嫌だよ?でも魔法とか使えたらカッコイイカナ、デモ剣ッテ重インジャナカッタッケ。イヤ、マホウダケツカウヤクショクトカアルダロウシ…。モウワケガワカランクナッタキタヨ…。
「あの…どうかしましたか?」
は!そうだ、どうしてたんだ俺は。どうしよう…まあ、せっかく異世界に転成したし、やってみるか。
「わかりました。一緒に入りましょう、冒険者ギルド」
それを聞いて小躍りしているリオさんを見つつ、俺はこれからの冒険者ギルドでの日々…ではなく今夜をどう乗り切るか考えていた。
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