第31話

「さて、本当に君が教会を破壊した犯人なのかい?」

犯人を捕まえた、と連絡するとクレッシェさんたちはすぐに来てくれた。

今はダルから話を聞いているところだ。

「そうですよ。僕が教会を壊して周りました」

「理由は?」

「そんなの一つしかないじゃないですか」

「10年前の事件の後を継いだ、そう言いたいのか?」

「ご名答。その通りですよ」

ダルがそう答えると、クレッシェさんは——はあぁぁぁぁぁ、と長いため息をついた。

どうしたんですか、と俺が聞いてみると、

「いや、最近になってようやく教会の改築も進んできて、10年前の事件の話題も減ってきた矢先にこの事件だからさ。まったく、『どうして事件を防げなかったんだ!』って怒られるの俺なんだよ……」

と、いつになく弱音をもらした。

「なんていうか……ご愁傷様です」とだけ言葉をかけておいた。


「じゃあこの人ダルは連れて行くけど、しばらくは王都から出ないでね」

「何でですか?」

「まだ疑いが完全に晴れたわけではないからね。彼を連行した後に事件が本当に起きないか確認しなきゃいけないのさ」

「あぁ、それはそうですね」

「まあそんなに長くはないよ。多分一週間もかからないから」

「そうですか。それならいいか」

一週間ならのんびりしていればいいだろう。

……誰かさんロマのせいで寝不足だから寝ておくのもいいかもしれない。

ん?


そのロマ誰かさんはどこだ?


**********


白い空間が広がっていた。

「やれやれ、だからニンゲンごときに任せるなど反対だったのだ」

の声が空間に響く。

その声に応えるかのように、別の声が響く。

「ほう、じゃあ御主ならどうする」

「簡単だ。直接手を下せばよかろう」

「まあ待て。我はそれよりも、じわじわとねぶるほうがよいのう」

「そんな暇は無かろう。一番いのはやはり魔物にやられたと誤摩化すことだろう」

空間で見えない何かの議論が進む。

「ともかく、向こうの世界での監視も貴様に任せるぞ」

「な、こいつにか!? こいつが今回の作戦の立案をしたのではな——」

「黙れ」

歯向かっていた何かが静まる。どうやら立場が弱いらしい。

「では、任せるぞ」

「……仰せのままニ」


**********


「な、なんじゃこりゃ……」

目を覚ますと、顔の横に輝くやいばがあった。

「ここにくるかよ……。これってあれだよな、……だよな」

どうやらスキルによって飛ばされた刀は偶然にも俺のベッドに刺さったようだ。

それにしても危険すぎる。

とりあえずこれは保管しておこう。銃刀法違反にはなりたくないしな。


「あ、やっと来た! 何で昨日休んでたのさ」

学校に着くなり、音野が声をかけてきた。

わりい、昨日はちょっと用事があって」

嘘は言ってない。

「ふーん、用事ねえ」

気がつくと後ろには睦月がいた。いつも通り神出鬼没な奴だ。

「知ってるのよ? あんた家で寝てただけでしょ」

「何でそう思うんだよ」

「だって見たもの」

そうか、見たのなら仕方ない。

見たのなら……。

は?

「見たってどういうことだよ!」

「そのままよ。あんたの家に行ってから見たのよ」

「鍵は閉めてたはずだ!」

「合鍵を作ったに決まってるでしょ」

「いつだよ!」

「川に落ちたあんたを助けたあとに買い物をしに出た時よ」

「あの時かよ! ……ったく、何やってくれてんだ」

「まったく困ったのよ。いくら起こそうとしても起きないんだから」

そりゃそうだろうな。異世界に行ってるし。

「ところでなんだけど」

「何だよ」

「もう来てる頃なんじゃない?」

「何が」

「転入生よ」

「ああ……」


このアムストラ学院では、毎月一度その月の中旬に試験に合格した転入生が来ることになっている。それは長期休暇中でも変わらない。

「で、その転入生がどうしたんだよ」

「見に行きましょうよ」

「はぁ? お前だけで行けよ」

「行くなとは言わないのね」

「言っても無駄だろ」

「その通り、よくわかってるじゃない」

褒められても嬉しくない。

「そういえば露麻はいないのか」

いつもは学校に来るなり話しかけてくるのに。

すると、睦月がとんでもないことを言った。



「『ろま』って……誰?」


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