第21話
もしかしてロマが毎日あんなことを言ってたせいでこんなことになってるんじゃないか?
そう思いたくもなるような状態が広がっていた。
ロマが言っていた妄想(19話)。それがほとんど現実になっているのだ。無意識にこの世界を選んでいた、ということだろうか。
違うところは2つ。
1つ目は、報酬の説明をする人はギルドの最高責任者ではなく、《変異体》を倒すという異例なことを成し遂げた俺たちが国の重要人物となり、監視というかなんというか。とにかくパーティーに入る形で担当をする係の人だったこと。どうやら今後何かをしたときはこの人を通して直接国に連絡されるらしい。ちなみに妄想とは名前も違う。また、自分から望んでパーティーに入りたいと言ってくれたそうだ。まだギルドに入って一週間ちょっとの人間の待遇じゃねえよな。
2つ目は、報酬の金額が1人あたり500億サクルだったこと。この国は意外と裕福だった。説明によればしばらくは何もしないでも生活できる額ということらしい。1サクル=1円ぐらいだから十分すぎる。
これら以外は全てロマの妄想と同じだった。つまり、俺たちの担当としてパーティーに入った人は巨乳美少女だったし、仕草もそれっぽかった。いや神様というのは恐ろしい。そしてフラグの力も恐ろしい。
「それでは町を案内しますので。よろしくお願いします」
パーティーに入ってくれた人の名はユニ・グランド。容姿的には青みがかっていて癖のあるロングの髪、全体的に白い服、その隙間から覗く胸の谷間、そして腕で押し上げられている大きな胸。
なんというかふわふわした印象だ。
町には工事中の建物がたくさんあった。建物の敷地に立っている鉄柱のようなものの先にはトゲのついた球体が載っている。
それが何かをユニに尋ねたところ、
「え……知らないんですか?教会ですよ」
と返された。どうやらこの世界の宗教らしい。
その宗教というのは実にシンプルなもので、人間のいわゆる“悪意”だったりの負の感情を携帯しているトゲのついた球体に念じることでスッキリする、といったものだった。つまり神様に負の感情を受け止めてもらっているということらしい。
しかしそれにしても工事中の教会が多い。それも何故なのか聞いてみると、どうやら10年ほど前に教会——主に球体の部分が大量に破壊される事件が起こり、その改修だったりするらしいのだ。
その宗教の説明を聞いているとき、俺はなんだかモヤモヤとした気分だった。
それと、リオさんは何故だか浮かない顔をしていたのだった。
その夜。
王都に宿をとった俺たちはそれぞれ部屋で休んでいた。
そんなときに俺の部屋のドアをノックする音が聞こえた。そのノックの音の主はユニだった。
「実を言いますと、私が担当をするというのはあくまで仮のことなのです」
ユニはそう話を切り出してきた。
「ですから、正式にコーヤさんたちのパーティに入るかは明日決まるのです。もちろんコーヤさんたちが了承してくれればの話ですが」
そうだったのか、と相槌を打っていると
「私は、この国の孤児院で育てられました。信頼できる人は周りにおらず、どんなパーティにも入ることができませんでした」
ユニはなんだか重い話をしてきた。
「ですが、コーヤさんたちを一目見て思いました。あ、この人たちは信頼できそうだな、って。やっと入るべきパーティを見つけました。ですから、どうかこの私を正式にパーティに入れてくれませんか?」
そう言いながらユニは俺の手を掴んだ。というかその大きな胸を押し当ててきた。アニメとかなら『ぷにっ』だとか『むにっ』だとか音がするんだろうか。
上目遣いで俺を見てくるユニの顔と押し当ててくる胸の柔らかさにドギマギしつつ、俺は、分かった、とだけ返事をした。
そうしたらユニが喜んで抱きついてきたので余計に胸が当たり……。
ロマのせいだな。うん。
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