第15話
俺たちは“変異体”を倒した功績により王都で報酬を受け取ることになった。
王都まで行くための準備をしようとしているとき、リオさんの様子が少しおかしかった。
「リオさん、どうかしました? 」
「いや、ちょっとね。昔王都に住んでたから」
意外だった。全くそんなイメージが無かった。どちらかといえば田舎のお嬢様みたいな雰囲気があった。
瓜二つな睦月もそんな雰囲気があるかと言われたらまず無いと答えるが。
王都への出発は明日ということになった。1週間程かかるようだ。
この国の町の仕組みはシンプルだった。基本的に1番近い大都市までは1日で着くように作られているらしい。また、王都から1日で行ける都市は2番目、2日で行ける都市は3番目、と王都からどれだけ離れているかでその町のグレードが分かるらしい。
つまりこの町はこの国で8番目の都市ということだ。町の中で地平線が見える理由がようやく分かった。
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8月が来た。猛暑がきついからか学校に来ている人も少ない。
そんな中で俺たちは明後日に迫る大惨事学校の探索についての計画を立てていた。
「じゃあ、私はドローンとか持ってくるわ。2人もカメラとか持ってきたら? 世紀の瞬間とか撮れるかもよ」
「でも人の肉とか食べたりしてるはずなんだよね…。グロいのは嫌かな……」
まあ人にフラれたくらいで自殺しようとするのだからグロいものなんて見たらどうなるか分からない。
「そっちの命を救われた少年君はどうする? そもそも行くの? 行かないの? 」
「……行かなかったら行かなかったで後で脅されそうだから行く……よ。一応大惨事学校には興味があるしな」
もっとも命を助けられたといっても睦月は指示しただけだが。
それでも大惨事学校に興味があるのは本当だった。
ちなみに音野は無理矢理連れて行かれることになった。
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その日の早朝に町を出発した。運良く道中ではモンスターに出会うことは無く、夕方には一つ目の町に着いた。もちろん間にも町はあったがあくまでも村とか小さいところだった。
着いた町は最初の町、「ハメルケ」の町より少し大きく、作りも少し豪華に見えた。
町ではそれぞれの町のギルドに泊まることになっていたのだが……。
「うわーーーー!これがベッドかーー!すっげぇ跳ねるうっわ楽しいー!なにこれなにこれ!わーー! 」
え、なにこいつこんなキャラだっけ。しかもいつもならウィンをたしなめるベートも一緒にはしゃいでいる。
「お前うるせえよ……。明日も早いんだからさっさと寝ようぜ。出来れば早めに王都に着きたいしさ」
「でも仕方ないじゃないですか!ベッドですよベッド!
何故かベートの方がはしゃいでいるようだ。というよりも
「もしかしてベートはギルドから支給されたウェポンドールじゃないのか?」という疑問の方が大きかった。確かウィンがギルドに入ったのは俺とリオさんが入る前日だった筈だ。それから一週間も経ってないのに言い方がまるでずっと前から一緒にいたような言い方だったからだ。
ただ、1日馬車に揺られた疲れがあったためすぐに眠りについた。
残り6日。
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「いよいよ明日か……。ワクワクするわね!二人とも! 」
「いや、勝手に一人でワクワクしてろ。俺も興味はあるとはいえ、ケガとかしたくないんだよ。しかもお前はいざという時は俺らを盾にしようとしてるじゃねえか」
「そうならないようになればいいでしょ。じゃあ明日は駅で待ち合わせね。動きやすい格好でくるのよ。解散! 」
結局最初から最後まであいつの言いなりになるのか、そう思いつつも誰も入れない空間というのは面白そうと思っていた。
帰り際に睦月に「音野をちゃんと見ていて、逃げそうな時は捕まえろ」と言われた。
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特に何も起こらず二つ目の町に着いた。やはり二つの町と比べると大きく建物も良い造りをしていた。
昨日と同じようにギルドに泊まって1日が終わった。
残り5日。
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土曜日。来るべき大惨事学校探検の日。まあどうせ中には入れないだろうし写真でも撮ってすぐに帰れるだろう。
後で俺はフラグを立てていたことに気づいて後悔した。
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