第11話

 俺はいかにも強そうな雰囲気を出しているモンスターと対峙していた。俺たちの誰も付けていない鎧を身に付け、体躯は2mほど。手にはその体躯に似合う大きさの斧を持っていた。

(何でこんないかにも強そうな感じなんだよッッッ!)

 こいつは他のモンスターに比べてずる賢いのか、俺たちをいたぶってから殺そうとしたのな、その大きな斧の側面で殴りつけてきた。おかげでウィンと盾にしたウィンの鉄板も見る影もない。…いや、ウィンはかろうじて人の形を保っていた。むしろ斧で殴りつけてくるときの風圧だけで気絶したからだろう。せいぜい強風くらいだったと思うがさすがはウィンだ。

 正直言うと勝ち目は無かった…昨日までは。俺にはがある。異世界転生者だからこその秘密兵器。勝負は一瞬。奴が動揺している間に確実に仕留めないと…。


 ******************


 そこには昨日達成したはずのクエストがあった。畑を荒らすモンスターの討伐。いかにも転生特典なスキルで倒したはずだ。まさかまだいたのか…?思い当たるふしがある。ゴブリンたちは妙に統率がとれていたのだ。もしかするとあのゴブリン達には親玉がいて、昨日のゴブリンは下っ端だったのかもしれない。

 考えていたのはただ一つ。一度自分が受けたクエストだ。最後まで自分がやる方がいい。

「リオさん、今日はこのクエストでいいですか。昨日だけでは終わってないなら、自分で終わらせたい」

 リオさんは反論しなかった。気持ちを察してくれたのかもしれない。


 もしも親玉がいたとすると装備を強化しないといけない。昨日のゴブリンでさえなんとか倒せたというレベルだ。何かいい方法は…。と考えて歩いていると、気づいたら市場に来ていた。それだけなら通り過ぎたかもしれない。だが、そこにはゴブリン達への対抗手段があった。


 "技の実"。一つ食べると何かしらのスキルを得ることができる木の実。通りかかった市場で売っていた。まるで俺が来るのを待っていたかのように。本来は地球でいうメロンやマンゴーほどの価値なのだが、何故か100サクル≒100円で売っていた。

 十分怪しかったが俺にはそれが本物である事が不思議と分かっていた。


 やはり技の実は本物だった。攻撃系スキルが増えている。だが、これだけでは足りない。何か他には無いか…と考えているとふと閃いた。自分は転生者だ。だったらこの世界の人々には無い知識がある。それに、せっかくの異世界だし前世で出来なかったことをしてみよう。


 夜、クエストを受けて例の畑に向かった。

「お前は呼んでない、むしろ誰も呼んだ覚えが無いんだが」

「安心しろ、俺も昨日徹夜で特訓した。強くなっているはずだ」

「昨日は徹夜で勉強したんじゃないのか?」

「安心しろ、俺も昨日徹夜で特訓した。強くなっているはずだ」

「いや、お前のことだから信じられな……」

「安心しろ、俺も昨日徹夜で特訓した。強くなっているはずだ」

「そうか、強くなったのか。じゃあ昨日みたいに足手まといになることはなくむしろ俺たちを守ってくれるんだろうな。さすがウィンだ」

「……安心しろ、俺も昨日徹夜で特訓した。強くなっているはずだ」

 ちっ、意外と粘るな。プレシャーかけてやったのに。

「分かったよ連れて行きゃいいんだろ」

 どうせすぐやられるだろうからな。


 **********


 大惨事学校、それは突如現れた謎の生命体により教職員、生徒など敷地内にいた動物を皆殺しにされた学校。

 ここには謎の生命体が作ったと思われる見えない壁があり、警察や救急、果ては自衛隊すらも入ることが出来なくなっている。もちろん地下からの侵入も不可能である。


 そこには元そこにいた人間と思われる肉を喰らう集団があった。その集団のリーダーのようなものはを持っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る