第08話
屋上での会話の後、音野の奢りで昼食を取っていた時に音野はこんな話を切り出してきた。
「交也、今どの辺りまで進めた?」
「そうだな…、他の学校での範囲で言うと三次の第三学年の……3/4ぐらいかな」
「結構早いね。僕は半分くらいだと思うんだけど。この調子だと今年中には"卒業"できるんじゃない?」
「だといいけどね。いずれにせよ"卒業"するなら早い方がいいよ」
"卒業"というのはこの学校の生徒が便宜上言っているものだ。正式には"学習意欲向上及び学園内活性化を目的とする特殊カリキュラム"という異常に長ったらしい名称である。このカリキュラムは簡単に言うと『頑張ればいつでも卒業できる』のだ。普通は毎日決められた時間割があり、それぞれの授業で単位を取ることで卒業する。しかしこの学校には基本的に普通の授業は無い。生徒達は学園から支給された"マルチファンクションカード"と呼ばれるつまり生徒証と兼用の特殊なカードを用いて勉強している。その後は単元ごとのテストを3回連続で満点を取るということを全て終わらせれば"卒業"出来るのだ。ちなみにだがこの学園は生徒の生活のほとんどを保証している。例えばこの学園を経営している企業、アムストラ・ホールディングス-通称
「何話してんの?」
誰かにいきなり背中を叩かれた。音野もされたようだ。
「なんだ、お前かよ。何の用だ。」
声の主は睦月だった。
「何の用とは失礼ね、命の恩人なのに。そこの都くんも」
「え、まさか音野あの後また死のうとしてたのか?」
音野は苦笑いするだけで何も答えなかった。
「私が説明してあげるわ。あんたが川に落ちた後、何があったのかをね」
「二丗交也が川に落ちた後、音野都は責任を取ろうと自分も川に落ちようとした。しかし、そこに現れた睦月リオはこう言った。『君が死んじゃ駄目だ。彼が体を張って君を助けた意味が無くなる。さあ、今度は君が助ける番だ。』この言葉により音野少年は考えを変えた。少年は自分の親友を助け出した。睦月リオによってここに二人の少年の命が救われたのだった…。第一部、完」
「……何でそんなドラマティックに言うのかな……。いや、間違ってはいないけどね」
「間違ってないんだ。それで、続きは?」
「音野少年は睦月リオと共に親友を彼の家へと連れて帰った。その後、睦月リオは買い物へ行った。理由は分かるだろう。そう、
「音野…念の為に聞いておくが、脚色されすぎやしないか?」
「僕もそう思う。何より途中おかしいルビが振られてた気がするよ」
「お前も気づいてたか。これは間違ってはいないのか?」
「所々おかしいけど間違ってはいないね」
マジか…。睦月の奴自分を美化しすぎだろ…。夢の中のリオさんとは大違いだな。
「そういえば音野、お前何があったのか聞いてもはぐらかしてたよな。何でだ?」
「あー……それは睦月さんが……」
「私が言うなと言ったのだよ二世少年!」
さっきのノリで言うな。
「じゃあ何でだよ。まさか自分で言いたかったからか?」
「惜しいね、私はただ堂々と恩を売りたかっただけだ!だから君達!」
「何だよ大声で……」
「私の下僕となりたまえ!」
「っざけんな!何でお前の下僕になんなきゃなんねえんだよ!」
「そりゃ君、2度も私に命を救われたんだぞ、2度も。私よ為に尽くしたくなるだろ?」
いや、ならねぇ。この調子だと多分一生ならねぇ。
「そうだ。話したい事があったんだった」
「だったら早く言えよ。で、何なんだ?」
「それはね……」
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