第05話

「じゃあそろそろ実際に冒険者らしいことをしませんか?クエストとかを受けてみたりとか」

 リオさんはそう言った。

「それならこの俺がどうすればいいか教えてやろう。同じレジェンドを目指している敵同士だがそれも知らないとなると俺の敵として認められないからな」

「そう言って私を使ってカンニングするつもりでしょう。一度もクエストを受けようとしてないくせに何が"俺が教えてやろう"ですか。そうやって知ったかぶりするからパーティーを組める人もいなくなるんですよ」

 知らないくせに教えようとしていたのか。

「それよりもまずレジェンドについて教えてくれませんか?」

 俺がそう聞くとリオさんが答えてくれた。

「レジェンドというのはですね、全ての称号を得た人、即ち何においても強い人なんです」

 なるほど、そのままだな。

「ちなみにギルドが設立されてからの100年間でレジェンドになったのはたった3人しかいない。1番新しい人でもその人がレジェンドになったのは40年前の話だ」

「へえ、貴方みたいな知ったかぶりでもそれくらいは知ってるんですね。明日にでも世界が終わるんじゃないでしょうか」

 酷い言い方だがウィンが知っているのはさっきまでのことを考えると意外だ。明日にでもこの町消えるんじゃないだろうか。あ、ベートが言ったこととさほど変わらないな。


「このクエストなんて良いんじゃないかな」

 俺とリオさんはどのクエストを受けるか選んでいた。

「"畑を荒らすモンスターの討伐依頼"ですか。初めてのクエストとしては上出来ですね」

 俺たちはこのクエストを受けることに決めた。ギルドからそこまで離れていない場所が現場なのですぐに向かおう。

「お前ら、俺が手伝ってやろうか?俺は装備も付けているぞ?まあその場合報酬は俺も貰うけどな」

 さっきベートが装備は鉄板だとかクエストを受けたことが無いとか言ってたのに随分と強気な奴だ。強力な魔法でも使えるのか?

「言っておきますけどこの方は魔法なんて一切使えませんし、武器も持てないほど貧弱ですよ。そもそも体力が全然ないですしね。ほら、鉄板を持ってるだけでふらつく。超薄くて中は超スカスカの超軽い鉄板なのに」

 そもそも冒険者に向いてないじゃないか。俺とリオさんはウィン超貧弱冒険者不向き役立たず男(自分で勝手についてきた)と共にクエストを受けに行った。


 ウィン超貧弱冒険者不向き役立たず男は本当に貧弱だった。もう倒れそうになっていてこのままじゃクエストの現場までも体力がもたない。たった100メートルちょっとくらいだぞ?クエストの現場はとある農家。その家の主の留守中に畑を荒らすらしい。だからどんなモンスターが畑を荒らしているのかわからない。とにかく気をつけなければ。そんなことを考えているうちに現場へ着いた。


《ーーークエスト:畑を荒らすモンスターを討伐せよ。ーーー》


 そのモンスターはすぐに現れた。見たところゴブリンか何かのようだ。

 そしてウィン超貧弱冒険者不向き役立たず男が特攻していって瞬殺された。鉄板あるのに、薄いけど。それをベートが蘇生魔法をかけて復活させた。やっぱり蘇生魔法ってあるんだな。

「ベート、お前蘇生魔法を使えるのか」

「ウェポンドールは皆使えますよ」

 そうなのか、とアルトに聞くと使えるかどうか身をもって知るカ?と言われた。出来る限り蘇生魔法を使わなくていい状況にしようと誓った。

 それはともかく異世界での初陣だ。いや元の世界を含めても初陣だけれども。

 俺はアルトを剣に変化させ、ゴブリンに立ち向かった。


 剣とはいえ元が人形みたいなものだから振り回しやすい。それでも強度は普通の剣なんだから最初にウェポンドール作った人は凄いな。ゴブリンはダメージこそ受けるものの再生が早い。致命傷を与えるには一気に倒さないと駄目だな。

「リオさん!援護お願いできますか!?」

「任せてください!魔法で援護します!魔法使ったこと無いけど!」

「え」

 次の瞬間、リオさんの持つアルトが変化した杖から大量の炎が俺とゴブリンに向かって………。

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