・童話

空島のミライ


空があります。


見渡す限りの空、ここは果ての無い空です。


そこに浮かぶ島があります。


空に浮かぶその島は、ファクトリーという名前でした。


ハンチョーという名前の神様が見守る島です。



ファクトリーに住むのはロボット達。


ロボット達のお仕事は、ロボットを造ることです。


ギーガチャン。

ギーガチャン。


動く道の上を、次から次へとロボットの部品が流れて行きます。


ロボットはその横に1列に並んで、 流れてくる部品を順番に組みたてていきます。


組みたてると新しいロボットの完成です。

やったー。


古くなったロボットが壊れちゃっても大丈夫、ここはロボットを造る島。


壊れた古いロボットのいた所には、代わりに新しいロボットが入るよ。


だからファクトリーは、ずっとずっと長いあいだ続いてきたんだ。


凄いね!



だけど最近、ちょっとおかしい。


出来たばかりなのに壊れていたり、部品が足りなかったり、ヘンテコなロボットが増えた。


ギギギギギ。

ギギギギギ。


困ったぞ。


でもロボット達は気がつかずに、お仕事を続けるばかり。


うーん、困ったなぁ。


困ったハンチョーは、働くだけのロボット達の中に、新しい機能『気が付く』をつけたロボットを混ぜてみることにしました。


これで失敗は無くなるはず。


ハンチョーは『気が付く』をつけた新しいロボットに、『ミライ』という名前をつけました。


ピロポロ。

キュピーン。


ミライはさっそく気が付きました。


「良い名前だな」



ミライは、他のロボット達と一緒にお仕事をします。


「よろしくね」


ギーガチャン。

ギーガチャン。


ポロリ。


となりのロボットが、部品を落としてしまいました。


「この部品がないと、このロボットは足のないロボットになってしまうよ?」


ピポッ。


ミライは気が付きます。


「そうか、落としたら拾えばいいんだね」


気が付く機能は便利です。



キュイ。

ピポポ。


ミライは色々なことに気が付きました。


空は色んな色に変わります。

鳥さんが自分にとまってくれると嬉しくなります。


お仕事の失敗もグンと減りました。


気が付く機能は素敵です。



ミライは、他のロボット達にも教えてあげたくなりました。


「ねぇねぇ、落としたら拾えばいいんだよ」


でも他のロボット達は気がつきません。


だって、他のロボットたちには『気が付く』機能は付いていないのですから。


ギーガチャン。

ギーガチャン。


ミライは『寂しい』に気が付きました。


ミライはあきらめずに、となりのロボットに話しかけます。


「ボクにはミライって名前があるから、キミにもなにか名前が欲しいね」


ギーガチャン。

ギーガチャン。


「じゃあ、ボクはキミのことをトワって呼ぶね。永遠って意味だよ」


ギーガチャン。

ギーガチャン。


返事は返ってこないけど、ミライは話しかけます。


ミライはトワに、真っ赤なリボンをつけてあげました。


「目印だよ」



ミライとトワは働き続けました。


ギーガチャン。

ギーガ……


ボンッ!


「!?」


プシュー……。


大きな音を立てた後、トワは動かなくなってしまいました。


もくもくとお仕事を続けていて、とうとうトワが壊れてしまったのです。


「……」


ミライのとなりには、

すぐに新しいロボットが代わりに入ります。


ギーガチャン。

ギーガチャン。


「…………」


ピロポロ。


ミライは気が付きます。


色んなコトに気が付きました。


「この絶え間無く流れてくるボクらの部品は

、一体どこから来るんだろう?」


その答えにも、気付き始めていました。


ギーガチャン。

ギーガチャチャン。




ギギチャン。

ギーギーギー。


ミライは働き続けます。


そしてある日、流れていく部品の中に真っ赤なリボンを発見しました。


トワの目印の真っ赤なリボンです。


造って壊れて、壊れた部品でまた造って。


新しいロボットは、壊れたロボットの部品で造られていたのです。


ギチャン。

ギィーギィー。


『ミライは気が付きます』


ガチャン、ギー。


「ねぇ、ハンチョー。何でボクにミライなんて名前を付けたの?」


ギギ、ギギ、ギ……。


「未来なんてココには無いのに、どうしてボクの名前はミライなの?」


ボンッ!


プシュー……。


とうとうミライも壊れてしまいました。



ミライがいた場所には、また新しいロボットが入ってお仕事は続きます。


ギーガチャン。

ギーガチャン。


たくさんのロボットの中に、一体だけ真っ赤なリボンをつけたロボットがいます。


トワの部品から造られたロボットです。


トワの部品から造られたロボットは、となりのロボットに話しかけます。


ピロポロ。


「メジルシダヨ」


10



空があります。


見渡す限りの空、ここは果てのない空です。


空に浮かぶその島は、ファクトリーという名前でした。


ハンチョーという名前の神様が見守る、


希望の島です。

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