・童話
空島のミライ
1
空があります。
見渡す限りの空、ここは果ての無い空です。
そこに浮かぶ島があります。
空に浮かぶその島は、ファクトリーという名前でした。
ハンチョーという名前の神様が見守る島です。
2
ファクトリーに住むのはロボット達。
ロボット達のお仕事は、ロボットを造ることです。
ギーガチャン。
ギーガチャン。
動く道の上を、次から次へとロボットの部品が流れて行きます。
ロボットはその横に1列に並んで、 流れてくる部品を順番に組みたてていきます。
組みたてると新しいロボットの完成です。
やったー。
古くなったロボットが壊れちゃっても大丈夫、ここはロボットを造る島。
壊れた古いロボットのいた所には、代わりに新しいロボットが入るよ。
だからファクトリーは、ずっとずっと長いあいだ続いてきたんだ。
凄いね!
3
だけど最近、ちょっとおかしい。
出来たばかりなのに壊れていたり、部品が足りなかったり、ヘンテコなロボットが増えた。
ギギギギギ。
ギギギギギ。
困ったぞ。
でもロボット達は気がつかずに、お仕事を続けるばかり。
うーん、困ったなぁ。
困ったハンチョーは、働くだけのロボット達の中に、新しい機能『気が付く』をつけたロボットを混ぜてみることにしました。
これで失敗は無くなるはず。
ハンチョーは『気が付く』をつけた新しいロボットに、『ミライ』という名前をつけました。
ピロポロ。
キュピーン。
ミライはさっそく気が付きました。
「良い名前だな」
4
ミライは、他のロボット達と一緒にお仕事をします。
「よろしくね」
ギーガチャン。
ギーガチャン。
ポロリ。
となりのロボットが、部品を落としてしまいました。
「この部品がないと、このロボットは足のないロボットになってしまうよ?」
ピポッ。
ミライは気が付きます。
「そうか、落としたら拾えばいいんだね」
気が付く機能は便利です。
5
キュイ。
ピポポ。
ミライは色々なことに気が付きました。
空は色んな色に変わります。
鳥さんが自分にとまってくれると嬉しくなります。
お仕事の失敗もグンと減りました。
気が付く機能は素敵です。
6
ミライは、他のロボット達にも教えてあげたくなりました。
「ねぇねぇ、落としたら拾えばいいんだよ」
でも他のロボット達は気がつきません。
だって、他のロボットたちには『気が付く』機能は付いていないのですから。
ギーガチャン。
ギーガチャン。
ミライは『寂しい』に気が付きました。
ミライはあきらめずに、となりのロボットに話しかけます。
「ボクにはミライって名前があるから、キミにもなにか名前が欲しいね」
ギーガチャン。
ギーガチャン。
「じゃあ、ボクはキミのことをトワって呼ぶね。永遠って意味だよ」
ギーガチャン。
ギーガチャン。
返事は返ってこないけど、ミライは話しかけます。
ミライはトワに、真っ赤なリボンをつけてあげました。
「目印だよ」
7
ミライとトワは働き続けました。
ギーガチャン。
ギーガ……
ボンッ!
「!?」
プシュー……。
大きな音を立てた後、トワは動かなくなってしまいました。
もくもくとお仕事を続けていて、とうとうトワが壊れてしまったのです。
「……」
ミライのとなりには、
すぐに新しいロボットが代わりに入ります。
ギーガチャン。
ギーガチャン。
「…………」
ピロポロ。
ミライは気が付きます。
色んなコトに気が付きました。
「この絶え間無く流れてくるボクらの部品は
、一体どこから来るんだろう?」
その答えにも、気付き始めていました。
ギーガチャン。
ギーガチャチャン。
8
ギギチャン。
ギーギーギー。
ミライは働き続けます。
そしてある日、流れていく部品の中に真っ赤なリボンを発見しました。
トワの目印の真っ赤なリボンです。
造って壊れて、壊れた部品でまた造って。
新しいロボットは、壊れたロボットの部品で造られていたのです。
ギチャン。
ギィーギィー。
『ミライは気が付きます』
ガチャン、ギー。
「ねぇ、ハンチョー。何でボクにミライなんて名前を付けたの?」
ギギ、ギギ、ギ……。
「未来なんてココには無いのに、どうしてボクの名前はミライなの?」
ボンッ!
プシュー……。
とうとうミライも壊れてしまいました。
9
ミライがいた場所には、また新しいロボットが入ってお仕事は続きます。
ギーガチャン。
ギーガチャン。
たくさんのロボットの中に、一体だけ真っ赤なリボンをつけたロボットがいます。
トワの部品から造られたロボットです。
トワの部品から造られたロボットは、となりのロボットに話しかけます。
ピロポロ。
「メジルシダヨ」
10
空があります。
見渡す限りの空、ここは果てのない空です。
空に浮かぶその島は、ファクトリーという名前でした。
ハンチョーという名前の神様が見守る、
希望の島です。
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