第1章 馴れ初め

第2話 どうしてこうなった

 中学時代からアニメや漫画に出てくるアイテムや、自分の中二病的設定を盛り込んだ武器を自作したりするのが好きだった俺は、高校の頃その製作物を誰かに見てもらいたくて、製作過程や完成品の写真をブログで公開していた。


 すると予想外に多くの人が見てくれて、沢山の賞賛のコメントを貰った。

 一人っ子のうえ片親で基本家では一人の事が多く、友達もそんなに多くなかった俺は、そうやって人から認められるという事自体それまでほとんど無かった。

 その事もあって俺は余計にアイテム製作にのめり込んでいった。


 ある日、バラエティー番組の特集を見て、どうしてもオムライスを食べたくなった俺は、思いつきで作ったら案外上手く作れたそれをブログに載せた。

 それなりに反応がきて、気を良くした俺は、それまで基本的にスーパーで買って済ませていた食事を、わざわざネットでレシピを調べて自炊するようになった。


 誰かに話を聞いてもらえているような感覚が楽しくて、上手く作れた料理や最近読んだり見たりしたアニメや漫画の感想を載せたりするようにもなった。


 何気なく見た少女マンガ原作のアニメにうっかりはまり、そのまま原作漫画を全巻揃えてしまったりした時も、恥ずかしくて周りにそんな事は話せないので、ブログに書いた。


 某錬金術アニメに出てくる敵のおっさんがかっこよくて、(漢的な意味で)惚れるとか憧れるとか書いた事もあった。


 そんな事があったからだろうか、ブログでは俺はアニメや漫画が好きな高校生としか書いてなかったのに、ブログを読んでいる人達の中では完全に俺はヲタ趣味のある家庭的な女の子という事になっていた。


 しかし、今更本当の事を話して会った事も無い彼らに引かれるのも嫌だった俺は、どうせ彼らと実際に会う事は無いのだしとたかを括ってそれからは意図的に女であるよう装った。


 その方が受けも良かった。

 自分である程度キャラ設定を作り込み、それに沿って記事やコメントの返信をして、矛盾が出ないよう気をつけた。


 高校二年生の秋、ブログ『コスモ☆クラフト』の管理人こと俺、+プレアデス+は、黒髪ロングで色白、ヲタ趣味があるけど周りに同じ趣味の人間がいないのでリアルでは趣味の話ができなくて、自分の容姿には自信がないが、今まで何人かの男子から告白されるくらいには見た目が良く、家庭的だけど人見知りで、運動は苦手、女子にしては背が少し高いのがコンプレックスのスレンダー系女子。

 好きな人は寡黙だけど優しくて頼れる年上の人。という事になっていた。


 なんだそのラノベヒロインみたいな設定。


 ちなみに俺が自分の身長に対してコンプレックスを抱いているのは本当だが、実際には男としては背が低すぎる事に悩んでいる。

 加えてインドア派な事もありびっくりするほど貧相な体つきである。


 そしてその頃になると、せっかくそれだけ小道具を作れるのだから、衣装も作ってコスプレもしてみたらどうか、と複数人から誘われるようになった。

 正直興味はあった。

 が、その頃には俺の中でもブログを見てる皆の中でも+プレアデス+は清楚系美少女というイメージが出来上がっていたので、生半可な物はアップできなかった。

 でも写真だけなら、化粧とか撮影方法とか画像加工でどうにでもなるんじゃないかとは思った。

 

 そして俺はネットの海へ旅立った。


 最近のコスプレ用アイテムはすごい。

 ウィッグやカラーコンタクトはもちろんの事、輪郭をすっきり見せてくれるテープや肌を自然な白さに見せてくれるクリーム、等の化粧品が充実し、それらはほとんど通販で買える。

 ネットを探せば多くの先人達によるメイクテクニックが公開されていた。

 フリーの画像加工用ソフトとその使い方も探せばいくらでも出てきた。


 するとだんだん、あれ? なんとかなるんじゃね? という気がしてきたし、とんでもない詐欺写真を撮って皆を沸かせてやろうという妙なやる気がみなぎってきた。

 

 そこからの俺の行動は早かった。

 まず人気作品のヒロインの中で、衣装的に体型のごまかしが効いて頭身的に俺がやっても違和感が無く、+プレアデス+のイメージを損なわないような子を選ぶ。

 自作した武器や装備を撮影で使いたいので、できれば戦うヒロイン系が好ましい。


 そして最初に俺が選んだのは某戦闘機擬人化ゲームの揚陸艇だった。

 学帽と学ランの下にミニスカニーソックスという出で立ちで、製作の手間と好みの関係で衣装は改造後の黒い方だ。


 学帽は中学時代、何の脈絡も無く学ランに学帽、外套ってかっこいい! と思った際に自作したものを手直しし、服は中学の時の学ランを参考に型紙を作る所から初めた。

 もちろん腰の部分は細くしたり、胸には色々詰め込むために余裕を持たせる事を忘れない。


 そうして俺は学校から帰ると寝食を惜しみ、休日はほとんど家に引きこもって衣装と装備製作に勤しんだ。

 同時にメイクの研究や練習、スキンケアも怠らない。

 一ヶ月後、完成したそれらを早速装備した俺は、それはもうノリノリで写真を撮りまくった。

 テンションが上がりすぎてしばらく鏡の前で一人、色んなポーズや表情をして悦に入ったりもした。


 翌日、賢者モードになりつつ画像加工ソフトで加工作業に入ったが、色々やった結果、光や色合いを調整する程度が一番自然だったのであんまり画像はいじらなかった。

 俺の技術的な限界でもあった。


 その日のうちに画像をアップすると、思った以上にものすごい反響で、がんばった甲斐があったと達成感と満足感を感じていた。

 更にしばらくするとブログに上げた画像がクオリティの高いコスプレ画像としてまとめサイトで紹介され、初のコスプレ画像を上げて以降ブログのアクセスが急上昇し、さながらネットアイドルのような状態になってしまったのが高校二年の冬の事だった。


 それから二年後、俺は大学に進学すると同時に家を出て一人暮らしを始めた。

 俺は大学進学を機に、イベントにコスプレ参加をするようになった。

 もちろん女性レイヤー+プレアデス+として。 


 そして最近、俺には母と高校生の弟と妹ができた。

 父が再婚したからだ。


 それはいい。

新しい母も良い人そうだったし、弟と妹は難しい年頃だが同居し始めたのはちょうど俺が大学受験をひかえ、来年には一人暮らしをするタイミングだったので1年位しか一緒に住んではいなかったけれど、二人とも俺と父に対して友好的だった。


 二人ともとても良い子だとは思う。

 なぜそう言い切れるのかというと、大学に入ってからも、二人とは頻繁に連絡を取り合ったりたまに会ったりしてるからだ。

 +プレアデス+として。


 自分で言うのもなんだが、メイク前と普段とでは全くの別人なので、今のところ二人は俺と+プレアデス+が同一人物だとは気付いていないようだ。

 もし気付いていたら、こんな特殊な趣味を持った兄にあんなにニコニコと俺に話しかけてきてくれたりはしないだろう。

 たぶん二人にとって+プレアデス+は憧れのお姉さんみたいなポジションなんだと思う。


 だから、正月に実家へ帰った時、弟の部屋にポスターサイズまで引き伸ばされた+プレアデス+のコスプレ写真が張ってあったり、妹のスマホの待ち受けがイベントで撮った+プレアデス+とのツーショット写真だった時もまあアイドルみたいな感じなんだろうなと思っていた。


 二人にどうしたら+プレアデス+と付き合えるだろうかという内容の恋愛相談をされるまでは。

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