舞台は異能やスチームパンクなどファンタジー的味付けの十九世紀後半アメリカ的どこか。小器用な賞金稼ぎとツンデレ美少女が出会い、仲間たちと悪漢どもやモンスターと戦い、そして大いなる陰謀に巻き込まれていく、という筋書き。
主人公のネッドは腰に銃で無くボビンを吊っていて、糸や布を操る能力で戦います。便利でそこそこ強いですが、力及ばずほぞを噛むこともしばしば。性格もひょうきんさの中に無力感を漂わせるところがあります。しかし、謎めいたヒロイン・ネイとの邂逅を期に彼は変わっていきます。いけずな彼女をふん縛ってでも同行し、強敵とも歯を食いしばって頑張ります。彼女の方が強くとも、自分にできることを実行し続ける彼はかなりヒーロー。乾いた世界観の荒野で個性豊かな仲間たちと友誼を結び、確かな信頼関係を作り上げていく。ネッド青年の成長物語は嫌味なく熱くも羨ましくもなれる素晴らしいもので、本作中の白眉と言えます。
もちろんそれだけじゃなく、ガンアクションにスチームパンク、果ては巨大ロボやらカンフーの次々飛び出すガジェット群や、各所で燦然と輝くオマージュネタも読んでいて飽きさせません。それからネイとのくっつきそうでくっつかない絶妙な関係も大きな見どころ。闇鍋ながらもエンターテイメントしてかなりレベルの高い仕上がりになっています。
荒野を往く彼らの物語は現在第十七話、大きな山場を迎えています。果たしてネッドとネイに立ちはだかる巨大な闇が晴れる日は訪れるのか!?
この先は君の目で確かみてみろ!
最後に。
ボクっ娘も出ます。可愛いです。
キャッチコピーに記したとおり、根強い人気のあるエンタメ要素を、これでもかと詰め込んだ贅沢な一作。
アメリカ西部開拓時代をモチーフにした世界観のもと、偶然出会った二人の賞金稼ぎが、悪漢どもに立ち向かう。王道のエンターテインメントです。
開拓時代がモチーフなので、登場人物たちのメインウェポンは銃。しかし、個別術式と呼ばれる異能が、バトルにおいて大きなウエイトを占めることになります。
異能を用いる際、エーテルシリンダーと呼ばれる増幅装置を用いるという点が、本作品独特の設定でしょう。
そして、そのエーテルシリンダーの「燃料」ともいうべき「輝石」は消耗品であり、高価であるという点が、この作品の世界観を構築する重要な要素となっています。
ストーリー構成は、まさに直球勝負といったところ。
さすらいの賞金稼ぎネッドと、なにやら謎めいた過去を匂わせる少女ネイが出会い、ともに卑劣漢たちと戦っていきます。
凶悪な賞金首であるジーン一味との戦いのなかで、共闘するふたりの関係はどうなっていくのか。それは、ぜひご自身の目で確かめてください。
文章は読みやすく、会話にはテンポと独特の小気味よさがあって、スラスラ読み進めることができました。
また、戦闘描写には若干の冗長さが感じられたものの、迫力は十分。
銃と異能、そして刀をも交えた戦闘は、それぞれの武器の持ち味と弱点をきちんと押さえた仕上がりになっています。
異能を使用するたび、エーテルシリンダーから蒸気が吹き出るという設定も、ビジュアル的に非常に格好いい。
ガン・アクションに異能バトル、スチームパンクに西部劇といった要素に加え、突然変異のモンスターである「暴走体」なども加わって、まるで男の夢が詰まったおもちゃ箱です。
一章を終え、晴れて相棒(?)となったネッドとネイ。二人のこれからの活躍に、眼が離せません。
最後に。
他の商業作品の名前を出すのは、作者様にとって不本意に感じられるかもしれないことを承知で言いますと、「ワイルドアームズ」シリーズがお好きな方には特におすすめですよ。