第26話 Make A Wish

「あー、終わったあ……」


 最後の客が退けたエントランスの片隅で、雄介は一人、脱力したように座り込んだ。

 楽しくも苦しいライブだった。

 打ち合わせはしたものの、どの曲も満足に合わせていない状態での本番だった。歌に重点を置くために、ギターをはしょって弾いた箇所も少なくない。

 ライブとしてはかろうじて成功したが、演奏のクオリティそのものは低かっただろう。タツとダグラスが上手くフォローしてくれたから、目立たずに済んだだけだ。

 イベントと言えども正直、悔しさが残る。一人で反省会をしながら、くわえたタバコに火を点けた。


「お疲れ、雄介くん。今日は混ぜてくれてありがとう!」


 紫煙の向こうから、笑顔の横田がやって来た。


「いえ、こっちこそありがとうございました。つうか、忙しいのにホントすいません。タツが無茶ブリしちゃって」


 雄介は慌てて立ち上がり、深々と頭を下げた。

 実は、横田を引っ張り出したのはタツのスタンドプレーで、飛び入りか決まったのは本番直前だっだ。結果として「ラストに皆をビックリさせるようなネタ」が仕込めた。話をふったタツもタツだが、横田も良く乗ってくれたものだ。


「いきなり本番てキツかったっすよね」

「あははは、好きな曲だから大丈夫だよ。それに何年ぶりかなあ、久しぶりにバンドで演れて、すごく楽しかった。アイツの無茶ブリに感謝だな」

「マジすか。それなら良かった」

「でも、ごめんね」

「え、何が?」


 謝罪されることにまったく心当たりがない。つい訊き返すと、横田は顔を赤らめた。


「いやほら、俺だけ女装してなかったから、雰囲気変えちゃって悪かったなって。カツラだけでごめんね」

「いやソコ別にいらねーし」


 素早くツッコむと、横田は声を上げて笑った。


「ホント楽しかったよ。まさかアイツとソロバトルなんてなあ」

「盛り上がってたっすよ、すげえ。横田さん上手いっすね、ベース弾きなんすか?」

「いや、俺はもともとギターなんだ。ベースはちょっといじったことがあるだけ」

「そうなんだ! じゃあ来年はギターバトルやりましょうよ」

「えー? じゃあ、俺も着られるワンピース用意しておくね」

「いやだからソコいらねーし」


 他愛ない話に笑っていると、横田の背後に男が現れた。


「やあ、雄介くん。久しぶりだね」

「……あ」


 割り込んできたのは、なんと滝本だった。


「何で……」

「正月休みで、昨日こっちに帰って来たんだ。俺、実家小樽だから。で、イベントあるって聞いたから観に来てたんだよ」

「へえ……」


 咄嗟に、それしか返事が出来なかった。

 滝本は柔和に微笑んでいた。最初に会った時にはもっと気構えのような、威圧されるような雰囲気があったのに、今夜はそれがない。

 普段着のような、こなれた革ジャンパーにジーンズだからだろうか、と雄介が窺っていると、滝本はいきなり笑い出した。


「そんなに警戒しないでくれ。今日はホントにプライベート! ただの一般客だよ」

「は、はあ」

「純粋に楽しみに来ただけ。イカしたステージ観せてくれてありがとう、ゆーコリーナ」

「あ、は、はい。いやソレ止めてください」

「え、なかなか可愛かったよ?」

「いやだからアレは……」


 タツから「追い出す」と脅されてやらされたことだと言い訳したかったが、言えば紆余曲折を説明しないとならなくなる。それはしたくないので、わざとらしい咳払いでごまかした。


「横田さん、ちょっといいですかー?」

「あ、はーい。ごめんね、ちょっと……」


 ホールからスタッフに呼ばれ、横田が去っていく。滝本は思い付いたように、ポケットから小銭を取り出し、自販機でビールを二本買った。


「あっ、雄介くんてまだ未成年か。ごめんごめん」


 差し出そうとして止め、わざわざコーラを買い直した。そしてそれを改めて雄介へ差し出した。


「炭酸大丈夫?」

「はい、あ、払いま……」

「遠慮するなよ。そうだな、ロックなナチュラルウーマンを聴かせてくれたお礼ってことで」


 滝本は雄介へコーラを押し付けると、さっさと自分のビールを開けた。ごくごく飲む姿を見て、雄介もタバコを消し、気兼ねなくコーラのキャップを開けた。

 冷たくて美味い刺激が、喉に心地好い。渇きが癒されて行く感じだ。


「あー、美味っ。会場暑かったもんな。ところであの曲、歌は雄介くんが?」

「はい」

「そうか。ちゃんと君の歌になってたよ。6/8拍子を4拍子で歌うなんて、なかなか面白い。それに何て言うか、色気もあった」

「色気、っすか?」

「うん」


 もしかして、愛美のことを想いながら歌ったからだろうか。

 ふと、彼女の匂いが恋しくなった。


「あの曲ね、すごく好きなんだ。アレサ・フランクリンは俺の、永遠のアイドルでさ」

「ソウル、好きなんすか」

「うん」


 滝本は少年のように笑った。


「今はないけど、昔、すすきのにクラブナイツ札幌ってでっかいキャバレーがあってね。学生のころに入ってたセミプロバンドがそこでステージ持ってて。週に二回、一日二ステージ出てたんだ」


 クラブナイツ札幌は雄介も知っている。西三丁目の角ビルに、壁面の五分の一を丸々使用した、大きなネオン看板が煌めいていたからだ。


「セミプロだったんすか」

「バンドがね。俺は新参の下っ腹だったから、大したことないよ。ソウルだから大所帯でね。ドラム、ベース、キーボード、ギターが二本にメインボーカル、コーラス二本、バーカスにブラス……メンバー入れ替えも多かったけど、華やかで楽しかったな」

「へえ……」

「たまに良い演奏するとね、チップ貰えるんだ。ボーナス時期とかだと、一日三万くらいになったこともある。バブリーな時代だったからね」

「三万……」


 滝本のチップと、現在の自分の時給をつい比較した。

 世の中の景気というものは不条理だ。時給数百円では、どんなに頑張っても一日で三万円は稼げない。


「すげー良いっすね、三万か」

「まあ、飲んで遊んで、朝には電車賃くらいしか残ってなかったけどね」

「豪遊っすね」

「バカだったんだよ、ただのバカさ」


 滝本は自嘲するように、小さく鼻で笑った。


「自由だったな、あの頃は。売れるとか売れないとか考えずに、好きなものだけ追い掛けてた。そうだな、今の君達みたいに」

「……」


 滝本が何を意図してこんな話をしているのか、雄介には判らなかった。ただ、今夜の彼は何だか遠い目をしていた。


「雄介くん」


 ふと、滝本がこちらを向いた。


「君は、君が思ってる以上に、たくさんの可能性を持っているよ。今夜のジョ・ソーを観て、良く判った。君の歌は人の心を動かす力を持ってる。それは天賦の才能だ。技術じゃどうしようもない」

「はあ……」


 褒められたようだが、相手が滝本だけに何か裏がありそうで、すんなり喜べない。それを見抜いたのか、彼は困ったように笑った。


「おいおい、信用してないだろ。俺、滅多に人褒めたりしないんだぞ」

「あ、いや、すいません」

「良いよ、気にしないで。雄介くんらしいね」

「はあ?」


 意味が掴めない。聞き返そうか迷った直後、入口から誰かが賑やかに入って来た。

 複数の足音と声が階段を下りてくる。おそらく、買い出しに行っていたタツとダグラス、そしてアンクルヘッドのメンバーだろう。引き際だと感じたのか、滝本はビールを飲み干して、自販機の横に置かれたゴミ箱へ捨てた。


「あ、あの、ごちっす」

「ハハハ、意外に律儀だな。またね雄介くん、良い年を」

「良いお年を」

「いつか、君と組んで仕事してみたいよ」


 滝本は右手を挙げると、階段へ向かった。

 最後の言葉を否定したかった。今日の会話で若干印象は変わったものの、滝本と組むことは雄介にとって、あり得ない選択肢だ。

 しかし何故か、言えなかった。

 買い出し隊がエントランスへ戻って来た。すれ違いに、滝本が階段を上っていく。


「あれ……?」


 何か気づいたようにアンクルヘッドのメンバーが振り返り、滝本の背を見送った。


「あー雄介、会場作りサボりやがって!」


 ビールを抱えたタツが、しかめ面で睨んでくる。ついつい雄介も眉を寄せた。


「いや別にサボってねーし」

「はあ? つうか誰、今のオッサン」

「横田さんの知り合い。ジョ・ソー、面白かったって」

「マジか、よっしゃ!」


 喜ぶタツを、雄介は複雑な気持ちで眺めた。

 滝本にスカウトされた件は、まだ横田しか知らない。行く気がないから言わなかったが、雄介だけに話が来たと知れば、タツや他の二人はどう思うだろう。

 いや、行かないのだから言わなくていい、と強引に納得し、気持ちを切り換えた。

 今日は大晦日だ。あと少しで新しい年を迎える。それで、スカウトの件はリセットと言うことにすればいい。


「お待たせー! さあ、忘年会やろーぜぃ」


 タツがホールの入口で叫ぶ。

 忘年会という言葉に、むくむくと嬉しさが込み上げてくる。雄介は買い出し隊の最後にくっついて、ホールへ入った。


 打ち上げ兼忘年会は、例によって横田の音頭で始まった。

 出演者の約半数とその身内、スタッフの一部で、ミックスボールの時よりこじんまりしている。片付けを減らすために机は出さず、適当に並べたパイプ椅子の幾つかにオツマミを載せた。

 和やかな歓談はすぐに、いつもの喧騒へ変わった。隣の輪でタツと数人が服を脱ぎ、大騒ぎしながら酒をラッパ飲みしている。またか、と雄介がビールを飲みながら呆れていると、反対側に座ったアングルヘッドの佐倉がしみじみ洩らした。


「あー、今年もあとちょっとかあ。早かったなあ」


 その言葉に雄介も頷いた。

 今年は目まぐるしかった。

 得て、捨てて、そして乗り越えて、大切なものが残った。振り返れば、良いことも悪いことも凝縮されていた。


「もう、あと三十分もないんすよね」

「うん。いやあ、今年はツアー多かったな」

「何回行ったんすか?」

「えーと、道内と本州合わせて五回、いや六回?」

「そんなに? 良いなあ」

「雄介くんとこも、きっと来年は増えるよ。あ、そうだ。MIXJAMの店長がさ、二月にサイレントルーム来ないかって」

「マジに? うわ、めっちゃ行きてえ!」


 身を乗り出す雄介に、佐倉が詳細を話した。すぐにバンドで話し合い、直接連絡することを約束した。


「今度はアンクルヘッドと演りてえな。佐倉さんとこも出るんすか?」


 訊くと、佐倉が少しためらいがちに微笑んだ。


「実はさ、俺ら事務所決まって。来年早々に東京出るんだわ」

「え、マジっすか!」

「うん」

「うわ、すげー! ドコっすか?」


 アンクルヘッドが所属するのは小さな事務所だが、抱えているバンドが良質で、スタッフも熱意に溢れているそうだ。海外との繋がりも持っていて、そこも契約の決め手になったそうだ。

 憧れる話である。


「良いなあ、プロかあ」

「いやいや、サイレントルームもすぐだろ?」

「だと嬉しいっすけど」

「そうなの? さっき、ソニラブの人と雄介くんが話してたってうちの奴が言ってたから、てっきり良い話かと思ってたんだけど」

「あー、全然。ただ、世間話してただけっす」

「そうかあー?」

「だって女装っすよ? 今日の俺ら」

「あれはあれで目新しいよ。見る人が見れば、色々判るんじゃない?」


 佐倉が探りを入れてくるのに、雄介は笑ってごまかした。


「おつかれさまー!」

「おー、おつかれ!」


 タイミング良く、ゾンビ姿の出演者が佐倉へ声を掛けて来た。それを機に、雄介は場所を移動して別な輪へ加わった。

 今はただ笑っていたい。この場を楽しみたい。もうすぐ新年だ。面倒なしがらみは過去のものとして、今年に置いて行けばいい。

 しばらくくだらない話で盛り上がるうち、背後に気配が立った。


「ゆーすけぇ、このヤロー!」

「はあ? んげっ!」


 タツの声に続いて、重たいものが覆い被さって来た。


「テメエこのやろー、今年も頑張りやがってえええ」

「うわクソ離れろバカっ、重てえっ!」


 ゲラゲラ笑いながら、タツが抱き着いてくる。頭から一本浴びたのではないかと思うほど酒臭い。もはや相当飲んだようだ。


「クッセー! テメエ飲みすぎっ」

「ハハハハハ! いやあサイコー、クッソいい気分だあーっハハハハハ!」


 タツは笑いながら離れ、今度は壁際で談笑するダグラスのところへ行った。ダグラスも酔っぱらい、誰かから借りたレインボーアフロのカツラをかぶっていた。


「ダグーぅ、今年もお疲れえええ!」

「お疲れタツやーん!」


 タツが両手を広げると、ダグラスも同じように応え、がっちり抱き合った。


「良いかダグぅ、今夜は大晦日なんだぜ!」

「アハハハ、タツやん飲み過ぎだよー」

「テメエもな! 来年もやろーぜ、ジョソー!」

「イエーイ、ジョ・ソー!」

「俺はもうやんねーぞっ!」


 二人は抱き合ったまま、叫んだ雄介をチラリと見た。そしてまるで悪魔のような、企んだ笑みを見せた。


「聞こえませーんベロベロベロ」

「うっせえバカヤロー!」


 三人のやり取りを見ていた連中がゲラゲラ笑う。その向こうで誰かがアコースティックギターを持ち出し、エルレガーデンの「Make A Wish」を歌い出した。

 二分ほどの、とても短い歌だ。しかしその中にはシンプルで強い祈りが込められている。次々に声が重なり、やがて願いのこもった大合唱になった。

『手をつないでくれる誰かが、そばにいられますように』

 雄介もこの歌が好きだ。一緒に歌ううち、愛美を想った。

 今、彼女はそばにいない。いつも一緒にいたいが、それは叶わない。でも、きっと気持ちは繋がっている。


「そろそろカウントダウンしようぜ!」


 拍手の中から声が上がり、横田が指名されて立ち上がった。顔をアルコールに染めた横田は、腕時計を確認してから右手を挙げた。


「よーし……じゃあ行くよ!」


 フロア中が盛大にカウントダウンを始め、時刻が午前零時を迎えると同時に、一際大きな歓声が上がった。


「ハッピーニューイヤー!」

「おめでとーっ!」

「ことよろー!」


 まるでライブの最中に起こるモッシュよろしく、この場にいる全員が跳び跳ねて新年を祝う。

 周囲の連中と挨拶を交わしたあと、雄介はダグラスのもとへ行った。


「今年もよろしくな!」

「よろしくユー子ちゃーん!」

「それ止めっ、マジに!」


 ダグラスがバグしてくるのに眉をしかめつつ、ノリで応えた。

 天然でおふざけ大好きな反面、土壇場では客観的かつ冷静沈着で、困った時は助けてくれる、地味に頼もしい男。そんな奴がバンドにいてくれて本当に良かった。

 心の中でこっそり感謝していると、ダグラスがふと真顔になった。


「雄介、今日タツやんカクホして帰ってね」

「へ?」

「コウさんからの伝言。浮かれて何かやらかさないよう、目を離すなって」

「マジか」

「頼んだよ、僕もう……ぐへっ」

「は? ちょ、どこへ……」


 不意に顔を歪ませたかと思うと、ダグラスは口を押さえて走り出した。周囲にぶつかり、コケそうになりながら、あっという間にホールを出ていく。


「ダグ、まさか……」


 慌てて後を追いかけ、雄介もホールを飛び出した。するとエントランスの奥のトイレから、苦しそうな呻きと水音が聞こえてきた。

 そっとトイレを覗くと、個室が一つ閉められている。どうやらダグラスが吐いているようだ。

 声をかけるとしっかり返事するので、あとは自力で頑張ってもらうことにした。


「はあ……」


 これで、メンバーでかろうじて正気なのは自分だけになった。

 厄介だと思いながらホールへ戻り、タツを探した。しかしどこにも姿はない。


「タツぅ? なんかぁ、酒買いにいったみたいらぉー」


 パンツ一丁になったタトゥーだらけのモヒカンが、回らないロレツで教えてくれた。

 慌ててジャンパーを着て、エントランスの階段を上がり、外へのドアを開ける。冷たい外気とともに、細かな雪粒が渦を巻いて吹き込んだ。


「げっ、吹雪かよっ」


 外は真っ白だ。この中を探すなんて考えたくない。すぐに携帯を取り出し、タツへかけた。


「うえーい、なーにぃ?」

「今、どこだよ?」

「んー? えーっとお、ローソン前?」

「どこの?」

「すすきのコバン横お、ん、え、何ぃ?」

「は? もしもし?」


 会話が遠くなり、風の音と複数の声が混じる。誰かに詰問されているような雰囲気だ。


「おい、どうしたんだよっ」

「いやなんかケーサツが……だから、ただ打ち上げ誘ってるだけらって、何にもしてねえっつうの!」


 言い争う声が聞こえたあと、知らない男の声が出た。


「横から恐れ入ります。私、中央署警ら係の――と申しますが、こちらの携帯電話を所有されている方とは、お知り合いですか?」

「あ、はい」


 若干緊張しながら応えると、事情を説明してくれた。

 いわく、泥酔しているタツが交番前で女性への声かけを何度も行っていたため、戒めも込めて職務質問をかけたそうだ。

 何かコトを起こしたわけではないが、執行猶予中のタツが暴れ出して連行されては困る。


「すいません今すぐ行きます、そのバカ引き取りに!」


 通話を切り、慌てて三歩進んだところではたと気がついた。

 自分も酒を飲んでいる。

 未成年で飲酒がバレれば、もっと面倒になる。雄介は舌打ちしながらホールへ戻り、誰かまともそうな人間を探した。そして、ホールの端で歓談する金髪オカッパに目をつけた。


「……あのー横田さん、ちょっと」

「え、なに?」

「一緒に、コンビニ行きません?」

「え?」

「行きますよね、じゃあはい、上着着て、カツラ置いて」

「え? え、ええ?」


 戸惑う横田の腕を掴み、なかば強引に連れ出した。

 横田なら、たとえ酔っぱらっていてもきちんと対応してくれるだろう。そしてタツのことも、上手く扱ってくれるはずだ。


「くっそあのバカ、いっそ埋めるぞっ」


 今頃ゴネているであろうタツを小声で罵りながら、横田と吹雪の中を急ぐ。寒い。とにかく寒い。腹が立つほど寒い。角を曲がって信号を二つ渡ったところで、すすきの交番のある一角が見えた。


「ちっ……」


 交番前で、タツが二人の警官とモメている。

 新年早々、苦労しそうだ。これが今年最初で最後の面倒になることを、雄介は心の底から願った。




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