第八章 悲願の泉

第22話 捜索

それからもいくつか依頼をこなしてきたが、未だにホークハート勇士団は二人で細々とやっていた。

そんなある日、リコは一枚の依頼に目をつけた。


「ちょっとこれ見て」


その内容とは、悲願の泉に現れる魔女の捕獲というものであった。

二人はもしや賢者の杖と何か関係しているのかもしれないと考え、依頼書を持って協会へと向かった。


「悲願の泉の魔女ですね、こちらは王国からの依頼となります。あくまで捕獲ですので慎重にお願いします」


ここ数年前から悲願の泉には魔女が出ると言われていた。

その噂により、泉に近付く者は誰一人としていなかった。

数回にも渡る王国での会議で、悲願の泉に現れる魔女と賢者の杖は何か関連があるのではという話が持ち上がった。

そこで王国側が協会に今回の依頼を出した。


しかし当然ながら、本当に魔女がいたとしても捕獲ができなければ報酬金は受け取れない。

他の勇士団がこれを請けない理由はそこにあった。


「話を聞いたら、なんだか怪しいもんだな。ただの魔術師かもしれないし」


「それでも行ってみる価値はあるよ。もしこれが賢者の杖の所有者だったら、一気に私達のランクアップも夢じゃないもの」


それを聞いたウェルはやる気に満ち溢れたのか、足早で悲願の泉を目指す。

まずは近くの集落で情報を集めることにした。


「悲願の泉の魔女か・・・見たという者もおれば、迷信だと言う者もおるがな」


少なからず見た者がいるというこを知れた二人はひとまず安心した。

なんでもこの村では悪さをした子供に対し、泉に置き去りにして魔女に魂を食ってもらうぞという脅し文句まで存在していた。

詳しい場所も聞きだし悲願の泉を訪れると、そこは緑が生い茂り水のせせらぎだけが聞こえ、魔女が出るなどとはとてもじゃないが思えない場所だった。


二人は一通り周辺を調べてみたが、魔女に関するようなものは見つからなかった。

その場でじっと待ってみるものの、やはり魔女が現れることはなかった。


そこでウェルは携えていた剣や盾を地面に置くと、鎧をも脱ぎだした。


「ちょっ・・・ちょっと!なに考えてるの!」


「いや、もう調べてないのは泉の中だけだろ?」


「そ、そうだけど・・・」


リコは両手で目を覆い、顔を背ける。

ウェルは大きく息を吸い込むと泉へ飛び込んだ。


(明るいうちでよかった、なんとか見える)


奥へ奥へと潜っていくうちに、何かあることに気付く。

一度上へあがり、この事をリコに話すともう一度深く潜った。

それはどうやら石板のようだった。


(相当古いな・・・劣化がひどくてよく読めない・・・)


何か書いてあるが、読み取れたのは〝ディエラ″という文字だけだった。


「リコ、泉の底に石板が」


水面から顔を出すと、そこには大きな泡の中に閉じ込められたリコの姿があった。

ウェルは咄嗟に脱ぎ捨てた剣に手を伸ばすと、その先にいる人物の存在に気付いた。


「何者だ、貴様」

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