第21話 山に咲く花

今回の依頼は商人の間で高値で取引されている花。

その花はどんな病気をも治す万能薬と呼ばれいた。

しかしイースタリア北部にある山にしか咲かず、入手は困難とされている。

こういった依頼はまず前金を受け取り、花を採集できた場合はさらに成功報酬をもらえるというものになっている。


依頼人に承諾書を渡し、山のふもとまで案内してもらった。


「すみませんが、ここから先はお二方でお願いします」


そういうと依頼人は引き返し、二人を残して引き返していく。


「うひゃー・・・これはハズレだったかもねー」


「ここまできたら仕方ないだろう?ほら、いくぞ」


山は吹雪に覆われ、視界もままならない状態。

そんな中少し足を滑らせればまず助からないことは明白であり、はぐれないようロープで互いの体を繋ぎ慎重に進んだ。

先導はウェルが行き、リコが後から続く。


「ここまで視界が悪いと花なんて見つけられる自信ないよー・・・」


「そうだな、今日一日探して見つからなかったら山を下りよう」


それからも歩き続けたが、寒さと疲労が激しく長くは持たなかった。

二人は大きな岩陰を見つけ、逃げるようにそこへ向かう。


「想像以上だ、今日はもうだめだな」


「山を下りることも難しいね・・・」


仕方なくこの日は野宿をすることにし、下山は明日となった。

岩陰で吹雪は避けられても、寒さが二人の体力を奪っていく。

体を寄せ合うように二人は毛布にくるまり、日の出を待った。


夜が明けると吹雪は止んでいた。

積もった雪を見たリコは子どものようにはしゃぐ。


「ねぇ、ここまできたら山頂を目指さない?」


リコの提案にウェルは少し迷ったが、依頼をここで諦めるよりは山頂を目指してから山を下りても遅くはないと考えた。

幸いなことに野宿をした場所から山頂はそう遠くはなく、昨日の疲れが抜けきれていたわけではなかったが数十分歩くと到着した。


「見て!すごい綺麗よ!」


二人はその景色に心を奪われた。

見渡す限りのものがすべて白く包まれ、まるで別世界に迷い込んだかのようだった。


「あぁ、すごく綺麗だ・・・」


ウェルは一歩前へ踏み出すと、崖下に目をやった。

そこには花が一輪、雪に埋もれることなく咲いていた。


「リ、リコ!あれみろ!」


ウェルはロープを使い、なんとか花を摘み崖から這い上がった。

花を手にした瞬間、疲れなどどこかへ吹き飛び軽い足取りで山を下りる。

依頼人と再会し、花を渡すと成功報酬が支払われた。


「あの依頼でこの金は安すぎないか・・・?」


「仕方ないよ、ブロンズならもらえる報酬金はこんなものだもん」


依頼を協会にだす際、依頼人は請ける勇士団のランクを指定できる。

その報酬金の高さはランクで決まるというものだった。

つまりそれは、払う金が高ければ高いほど成功率も高いということを表している。


こうしてホークハート勇士団初の依頼は終わった。

次の日、ウェルはリコに起こされ目を覚ます。


「いつまで寝てるの?朝ご飯できてるよ?」


リコはとっくに支度を終え、協会に向かう準備を済ませていた。


「寝すぎたな・・・すぐに準備する・・・」


支度を終えたウェルはボードから依頼書を一枚取ると、リコの朝食を早々に平らげ今日もまた協会へと向かう。

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