第20話 期待のルーキー

ホームへと戻ると家具や食器を並べ、はじめてとなる食事をした。


「今はまだ二人だけど、この先たくさんの仲間とこうして食べれたらいいね」


「そうだな、まずはアタッカーあたり入ってきてくれると俺も楽なんだけど・・・この際贅沢は言ってられないな」


食事を終えるとリコが何やら持ってきた。

手に持っていたのは酒と二つのグラス。

二人はホークハート勇士団の設立を祝い、乾杯をした。


「そういえばさ、なんでホークハートって名前にしたの?」


聞かれるだろうと思ってはいたが、こうして面と向かってとなると少し照れくさいものがあった。


「別に意味なんてないよ」


「嘘だ!絶対に嘘だ!」


「まぁそのうちな、教えるよ」


「ケチ・・・」


ウェルはそれを笑って流し、持っていたグラスの酒を一気に飲み干した。


次の日の朝、リコは起きるとまずポストへ向かった。

依頼書の束を取り出すと、ボードにそれを貼っていく。


その中から一枚手に取り、協会を訪れた。

そこで二人は意外な人物と再会する。

それはかつて共に遺跡の調査をしたフォレストベアー勇士団のハーレだった。


「ハーレか・・・?」


声をかけるとハーレは振り向いた。

一瞬誰だかわからない様子だったが、すぐに二人だとわかり驚いた。


「ウェルさん、それにリコさんも。お久しぶりです」


「久しぶりだな、ハーレ」


「ロックさんのこと聞きましたよ・・・残念でしたね」


「ハーレのところの団長は帰ってきたのか?」


「ええ、一度こっちに戻ってきたのですが、またすぐに発ちました」


「そうか、また無事に帰ってくるといいな」


その後、デザートイーグルが解散したことや新しく勇士団を設立したことを話し終え、ハーレとはここで別れた。

受付で依頼の手続きを済ませ、リコの元へ戻ると貼り紙に釘付けとなっていた。


〝ルビーラビット期待のルーキー″


でかでかと書かれた見出しの続きにはこうあった。


———四宝勇士団ルビーラビット、まだ若い彼だがわずか数年前に入団したにも関わらずその功績は驚くほどの活躍。

双手の剣は凶悪な魔物や名のある悪党を倒し、これからも更にルビーラビットを高みへと導くだろう。


「すごいねぇ、私達も頑張らなくちゃ」


勇士になってから5年経つウェルだったが、未だ四宝勇士団を見かけたことはなかった。

しかしこの話は耳にしていた。

ウェルとそう歳も離れていない若者が、四宝勇士団で活躍していると。

この話を聞いたウェルは少し嫉妬したが、それはすぐに熱意へと変わった。


「さ、行こう」


貼り紙に夢中になっているリコを引き剥がし、依頼先へと向かう。

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