第七章 鷹の心

第19話 二度目の門出

ロックの死から5年の月日が流れた。


「アキ、アイ!お願い走らないで!」


レイナは子供に服を着せようと慌ただしく走り回る。

ロックとの子どもは双子だった。


「ウェルお兄ちゃんだ!」


「ウェル兄、おかえり!」


「ただいま、今日も元気だなお前ら」


ウェルは少し背が伸び、以前よりたくましい体になっていた。


「ちょっとは子ども達の面倒一緒にみてよね」


リコも幼さが抜け、綺麗な女性へと成長していた。


「あぁウェル君、帰ったのね。他のみんなも揃ってるから、ちょっと話を聞いてほしいの」


レイナは団員を集め、話を切り出した。


「実はね、デザートイーグルは解散しようと思うの」


この言葉に、ウェルを含む他の団員も驚きはしなかった。

むしろロックを失いながらも、よくぞここまで待ってくれたと感謝をしていた。


「みんなの移籍が済むまで解散はしないから、安心して」


それからの団員達は各自移籍先を決め、慣れ親しんだホームを出て行った。


「ウェル君、どうするの?」


色々と悩んだが、やはり当初の目的を果たすことに決めていた。


「俺は勇士団を設立しようかと」


「言うと思った、頑張りすぎないのよ」


レイナはリコにも尋ねると、少し間を置いてから答えた。


「・・・私も、ウェルについていこうかと」


それを聞いたウェルは驚いた。

今まで一度たりとも、リコの口からそのような言葉を聞いたことがなかったからだ。


「そう・・・。二人とも、無茶だけはしないでね」


二人は荷物をまとめ、ロックの墓に挨拶を済ませるとホームを後にした。


「それじゃあ」


ウェルはレイナに軽く手をあげ、背中を向けて歩き出す。

はじめて村を出た時のことが頭をよぎった。


「前にもこんなことがあったな」


「どうしたの?」


「いや、なんでもない。行こうか」


その後、レイナはデザートイーグルのホームを改築し酒場の経営をはじめた。

店の名前は〝オールドイーグル″と名付けた。


ホームがなければ依頼書が届かないこともあり、まずは空き家を探した。

しかし空き家とはどうすれば見つかるのかわからず、二人はキャメルの元を訪れた。


「空き家?」


「ええ、どこか知りませんか?」


キャメルは心当たりがあったのか、すぐに見つかった。

新しくとも言えず、キレイなとも言えない建物だったが、ブロンズからはじめる勇士団にはこれ以上ないくらい相応しかった。

掃除には半日以上とられたが、その甲斐あって中は綺麗になった。


次に向かった先は協会だった。

受付で勇士団設立の手続きをしている最中、リコはふとウェルに尋ねた。


「そういえば名前は?」


「名前?」


「勇士団の名前よ」


その質問には答えず、ウェルは黙ってペンを取ると勇士団名希望欄のところに記入した。


〝ホークハート勇士団″


晴れてウェルは団長となり、新勇士団の誕生となった。


「これからよろしくね、団長」


リコはからかうように笑った。


ホークハート勇士団:団員数2名

ランク:ブロンズ

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