第15話 罠

この事を知らせようと振り返った瞬間、ハーレが叫んだ。


「ウェルさん、後ろです!」


不用意にウェルが祭壇に近付いたことにより、石像が動き出す。


「ガーゴイルです!」


石像はみるみるうちに赤黒く染まり、それは悪魔のような姿となった。

ウェルは盾を構え、ガーゴイルの一撃を防ぐと剣でその額を突いた。

しかし切っ先で止まり、全く刃が入らなかった。


「無駄です!ガーゴイルの肌は石だと言われています、斬撃では勝ち目は薄いです!」


ハーレの言葉を聞き、ウェルは防御に徹した。


「このまま下がってここを出よう!」


ウェルの言葉に一同は通路へと向かって走りだす。

ハーレが魔法を唱えると、地面から大きな土の手が現れガーゴイルを掴んだ。


「ウェルさんも急いでこちらへ!長くは持ちません!」


身動きの取れないガーゴイルを背に、六人は走って出口を目指した。

ガブルが演奏を始めると、体が軽くなりガーゴイルとの距離を離していく。


「足が速くなった・・・?」


「すごいでしょう!?ガブルの支援魔法は便利なんですよ!」


ナヤはそういうと、背負っていた大きな武器を取り出した。


「それがナヤの武器か?」


「そうです!このウォーハンマーがあればどんな敵でも倒せますよ!」


それは両手で持ったとしても相当重いことがわかるくらいに大きな鎚。

出口が見え、なんとか外に出たがそこに安堵はなかった。

アンデッドの群れが六人を待ち構えていた。

ガーゴイルは遺跡の出口まで迫ってくると、振り返り祭壇の方へと戻って行く。


「なんなのこの遺跡・・・」


「わからない、とにかくやるしかなさそうだ」


全員陣形を組み、ウェルがアンデッドの群れに突撃する。

ハーレとナヤも続き、猛攻撃を仕掛ける。

普段なら苦しい戦いになっていたであろうこの状況も、ガブルの支援でウェル達は本来以上の力を発揮していた。

フェイはナイフを取り出すと、リコを狙うアンデッドを引き剥がす。


「いけるぞ!」


大方のアンデッドを倒し、フェイの道しるべを頼りに森を抜けだした。


「危なかったですね・・・」


森から少し離れた場所で全員一息つくと、ハーレはウェルに祭壇で何を見たのかを聞いた。


「祭壇の上に箱があったんだ。でも蓋は開けられていて、中身は空だった」


「どうやら霧の原因はそれみたいですね、大抵ガーゴイルは何かを守る使命を持っています。あのガーゴイルから奪えるとは到底思えませんが・・・」


「そうね、それにこの霧もきっと盗み出された時の罠のようなものね」


ひとまず六人は王都へ戻り、協会に向かった。


「報告は以上です」


ウェルは朝の役員にそう告げ、報酬金を受け取ると分配を済ませた。


「では私どもはこれで。また機会があった時はよろしくお願いします」


ハーレは頭を下げ、フェイと共に街中へ消えて行った。


「今日はありがとうございました!楽しかったな、ガブル!」


ナヤとガブルもまたどこかでと言い残し、去って行った。


「ふぅー・・・なんだか今日は疲れたな」


「スッキリしない終わり方だね」


二人は疲れきった体を引きずるように歩き、ホームの扉を開けた。


「おう、お疲れさん」


ロックは二人の顔を見ると、飲んでいた酒のグラスをテーブルに置く。

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