第12話 行方
一方この時、ロックはある男達と会っていた。
「やぁロック、例の盗賊のことなんだが・・・どうも〝ハウンドドッグ″という勇士団みたいだ」
この男、フォレストベアー勇士団長グレッグ・ウッド。
「調べてみたらゴールドランクに上がったはいいが、昼から酒場に溜まってろくに依頼を請けてなかったみたいだな」
キングコング勇士団長、ウォーレン・オルト。
どちらもゴールドランクの勇士団であった。
グレッグは続けた。
「記録には大した功績も残ってないんだがこのハウンドドッグの勇士団長だった男、腕はかなりのものだったみたいだ」
「らしいな、どうやらコロシアムでもいいところまでいってたようだ」
ウォーレンの言うコロシアムとは、3年に一度開催される王都の祭りの中行われる目玉イベントである。
各勇士団から3名ずつ出場し競い合う、いわば試合だ。
「それにしてもロック、この男のことがそんなに気になるのか?」
「あの時俺らはすぐに追いかけた、にも関わらずハウンドドッグは全滅していた。ゴールドランクをあそこまで早く始末できる勇士団なんてそうはない。もしかしたらそのカイって少年は・・・」
ここでロックは男達と別れた。
「ウェールー、少し休もうよー」
「あと少しで王都だ、頑張れリコ」
ディルハ村を出てから半日が過ぎ、ただでさえ苦しい猛暑の中二人はひたすら歩き続けていた。
「もう無理、もう休む。もう絶対休む」
疲れ果てたリコは子供のようにその場から動かなくなってしまい、仕方なくウェルも休憩に付き合うことにした。
「なぁリコ、馬ってどれくらいお金があれば買えるんだ?」
「そうねぇ、安い馬でも30金くらいかな」
今回のような遠征となる依頼が多いのなら、馬が欲しいとウェルは考えていた。
しかしまだまだ駆け出しの勇士にとって、その額は大金。
「高い・・・」
「餌代や馬小屋を借りるお金もかかってくるからね、なかなか手が出しづらいの」
少し休んだ二人は再び歩き出した。
王都へ着くと、まずは協会を訪れた。
受付でオーク討伐完了の報告を済ませると、帰ろうとするリコとはよそにウェルにはまだやる事が残っていた。
「先に帰っててくれ」
「言われなくてもそうする。あんまり遅くならないようにね」
ウェルはもう一度受付へ向かう。
「すみません、勇士名簿をお借りできますか」
ブロンズからゴールドまですべての名簿を開き、片っ端からカイ・デリックの名前を捜した。
だが結果はどこにも見当たらなかった。
あの時カイは死んでいた?
いや、それならあの場に死体があったはず。
別の場所で死んでいても何らかの情報が入ってきただろう。
「どこで何やってるんだ・・・カイ・・・」
その日は諦め、ホームへと戻った。
すると団員達がウェルに群がり、称賛の声を送った。
「トロルを二人で倒したんだって!?」
「すごいじゃないかウェル!」
ロックもこのことを喜んだ。
「鍛えた甲斐があるってもんだ」
ウェルは酒を飲んでいたロックの元へ行くと、協会で名簿を借りカイの名前を捜したが見つからなかったことを話した。
そのうち見つかるさとだけ言い残し、酒を持って奥へと消えていった。
グレッグやウォーレンから聞いたことは話さなかった。
この日はイーグルで宴となった。
初仕事を終えたウェルの他にも、危険な依頼から無事帰還した者も含むお祝いのような席だった。
「俺はここしか知らないけど、きっといい勇士団なんだろうな」
隣に座っていたリコが持っていたグラスをテーブルに置く。
「デザートイーグルはイースタリアで一番居心地のいい勇士団よ」
宴は夜遅くまで続き、起きた時には次の日の昼になろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます