第11話 トロル
二人は振り返らず、ひたすら森を駆け抜けた。
トロルと残りのオークをなんとか撒き、その場に二人は座り込んだ。
「な、なんだあいつ・・・」
「だから・・・トロルよ・・・」
息を切らしながら、今起きた状況を整理する。
「トロルっていうのか」
「ウェル知らないの?強さで言えばオークの比じゃない。アレまで退治するとなると二人じゃ到底・・・」
だがウェルはオークとトロルを見かけた場所から考えると、ここで王都に戻ればディルハ村は今夜中にでも襲われるだろうと感じていた。
「なんとか倒せないのか?」
「無茶言わないでよ」
「オーク達は山を下りてた。応援を呼んでる暇なんてない」
それはリコも感じていた。
「俺がなんとか相手するから、無理だと思ったらすぐに逃げてくれ」
「バカにしないで。私だって勇士よ、ウェルがやるなら絶対に死なせない」
地面から低い音と共に少し揺れ、トロルが近いことを知らせる。
「いい?ウェル、よく聞いて。残ったオークは3匹、トロルは力こそ強いけど知能は低いわ。最初にオークをどれだけ早く倒せるかにかかってる」
「わかった、ありがとうリコ」
ウェルは木の陰に隠れ、オークが目の前までくると剣を振り下ろした。
まずこの一撃で最初のオークを倒すと、そのまま二匹目に向かって斬りあげる。
二匹目まで確実に倒していったところで、トロルの大きな手の平がウェルを張り倒した。
凄まじい威力で吹き飛ばされたウェルは、木に叩きつけられその場でうずくまる。
「立って、ウェル!」
リコがすかさず回復をし、振り下ろされたトロルの拳を寸前で避けた。
しかし次の攻撃はすぐだった。
トロルは片足をあげ、踏みつけようとしていた。
しかしそれを回り込み、トロルの足を狙った。
片足をあげていたトロルはバランスを崩し、尻もちをついた。
いけると確信していたウェルだったが、ここでリコの悲鳴が聞こえた。
最後の一匹のオークがリコに近付いていた。
ウェルは走り、なんとかオークの攻撃を盾で防いだが、もうトロルは立ち上がっていた。
オークに剣を突き刺し、すぐに盾を構えようとしたがトロルの拳はすでに目の前だった。
まともにこれを受けたウェルは意識が飛びそうになり、状況は最悪とまで言えた。
リコが回復をするが、トロルはウェルを掴み、持ち上げる。
この数秒でウェルは必死に頭を働かせ、考えていた。
足を斬りつけた時、トロルの皮膚は硬く刃があまり通っていなかった。
残りの体力から考えてもこれ以上の長期戦は不利。
一撃で致命的な傷を与えられるところはないか探っていると、掴んでいたその手は大きく開けた口の前へ持ってきた。
「ここだ・・・!」
ウェルは口に向かって剣を突き刺した。
剣はトロルの口の中を貫通し、首へと突き抜ける。
トロルはその場に倒れ、辺りは静けさに包まれた。
「やっ・・・た・・・」
間一髪で何とかトロルを倒し、気が抜けたウェルは地面へ寝転んだ。
「すごいよウェル、お疲れさま」
二人は夜が明けるのを待ち、次の日村へ戻るとビルに報告した。
若者達が見たものの正体はトロルだと伝えると、二人に追加報酬金を払った。
思いもよらないボーナスに、ウェルとリコは喜んだ。
「本当に貰っちゃってよかったのか?」
「仕事は予想通りにいかないことの方が多いわ。追加報酬金を貰えることは特に珍しいことじゃないしね」
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