第四章 依頼
第10話 オーク
次の日、ウェルとリコはレイナの朝食を食べ終えると協会へと向かった。
朝から依頼に向かおうと、沢山の勇士が受付に並ぶ。
ウェルもその最後尾に並び、自分の順番が来るのを待っていた。
「オーク討伐ですね、出発はいつになさいますか?」
忙しそうに少し早口で対応する受付の者。
「これからすぐに」
「かしこまりました。ではこちら承諾書となります、依頼人のビル様にお渡しください」
目的地は王都から東に進んだ場所にあるディルハ村。
距離でいえば一日もかからず着く場所だった。
村人を見つけ、依頼人のビルの場所を尋ねた。
「あぁ、あんたら村長が頼んだ勇士かい。あそこの家におるで」
どうやらビルはこの村の村長のようだった。
村人が指さした先には一件の古い家。
二人はドアをノックすると、中からビルらしき老人が出迎えてくれた。
早速中へと招かれ、椅子に座ると話が切りだされた。
「よく来てくださった・・・村の若い者数名でオークを退治しようと試みたのですが、とても手に負えなくて困っておりました」
「オークの数は8匹程度だとか」
「ええ、オークは・・・」
ウェルとリコは顔を見合わせた。
「オーク〝は″?」
「見かけるオークの数は多くても8匹程度です・・・が、先程申し上げた通り村の若い者数名で討伐に向かった際、皆口を揃えてオークではない何かがいたと言うのです」
「何か・・・?」
「それを見た若い者全員が、もう山へは入りたくないと・・・」
ビルの話だけではあまりにも不十分だったため、二人はひとまず山へ入ることにした。
最後にオークが目撃された場所は、村からはまだかなり上がった場所。
村に到着したのがすでに昼を過ぎていたため、そこへ向かう途中ですでに日は落ち、暗くなっていた。
「まいったな、まだ目的の場所へは着きそうもないし・・・今日はこの辺りで日が昇るのを待とう」
二人はたき火を挟み、その場へ座り込む。
軽くできているとはいえ、着慣れない鎧にウェルの表情には少し疲れが見えていた。
とはいえ、オークの群れがいる山の中で寝るわけにもいかない。
そこでリコは前々から気になっていたことをウェルに尋ねてみることにした。
「ウェルはどうしてイーグルに入ることになったの?」
村のこと、カイのこと、そしてロックとの出会いのこと。
ウェルはこれまでの経緯をリコに話した。
「なるほどねぇ、逆に協会でそのカイって人がどこかに所属していないか調べてみたの?」
「いや、まだなんだ。これだけ待っても連絡の一つもないから、帰ったら調べてみようと思ってはいるんだけど」
その時、小さな灯りが見えた。
それは横にいくつも並び、移動していた。
「なんだ・・・?」
すぐに火を消し、静かに灯りの方へと行ってみる。
そこには列をなして山を下りるオークがいた。
二人は気付かれないよう、最後尾のオークの背後へと近付く。
ウェルは剣を抜き、じわりじわりと距離を詰める。
兵士一人分の戦闘力とはいえ、剣や盾、弓などは使いこなせても鎧などは着ておらず、ウェルの剣は次々とオークを仕留めていく。
無傷とまではいかなかったが、案の定オークを倒すことは難しくなかった。
残り数匹で片付くというところで、それは現れた。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
地鳴りにも近いその声の主は、暗闇からゆっくり姿を現した。
〝それを見た若い者全員が、もう山へは入りたくないと・・・″
ビルの言葉が脳裏をよぎる。
体長はおそらく5メートルはゆうにあり、その姿は人間に近いものだったがそれとは違っていた。
はじめて見る謎の魔物に、ウェルはその場で固まり動けずにいた。
「トロルよ!」
リコの言葉で我に返る。
「走って!」
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