第9話 ドレスアップ

「おーい、キャメル。いないのかー?」


何回か呼び続けると、気だるそうな声が奥から聞こえてきた。


「今行くからちょっと待て」



出てきたのは、煙草を燻らせ長い髪を後ろで束ねた綺麗な女性だった。


「ロックか、今日はどうした?」


ここでウェルは店内を見渡して、何の店かを理解した。

ドレスアップ、ここは装備屋だった。


「今日はこいつの装備を買いに来たんだ。武器と防具を一式頼む、トップなんで鎧でな」


「へぇ、あんたのところまた若いの入ったんだ。私はキャメルよ、よろしく」


軽く挨拶を済ませ、ウェルの装備選びがはじまった。


「さて、じゃあ何からいこうか」


「すべて任せる、適当に見繕ってくれ」


キャメルはしばらく考えると、ウェルに一つ質問をした。


「ウェル君、あなた武器の好みとかあるかしら」


「好み・・・?」


「ポジションはトップよね?なら盾を持つことが前提になるから、剣、斧、槍あたりね」


今まで剣以外を握ったことなどなかったウェルに、悩む余地などなかった。


「剣でお願いします」


それを聞いたキャメルは再び奥へ消えると、数本抱えて戻ってきた。


「好きなの選んでちょうだい」


すべて手に取り振ってみる。


「これにします・・・これ、すごく気に入りました」


選んだその剣は、握った瞬間にウェルの心を掴んでいた。

軽すぎず重すぎず、片手で振り回すにはちょうどよく、与えた時のダメージもそれなりに期待できたからだ。


「じゃあ次は盾ね、ちょうどいいのがあるわ」


キャメルが持ってきたその盾は、一見普通の盾。


「この盾はね、特殊な金属を使っているからものすごく頑丈なうえに軽くできているの」


そういうとロックに盾を持たせ、キャメルは店の剣で思いっきり斬りつけた。

結果は剣は折れ、盾には傷一つつかなかった。


「ね?」


百聞は一見に如かず、盾はすぐに決まった。


「次に防具だけど、これなんてどうかしら」


試着したウェルは、その動きやすさと軽さに驚いた。


「安心して、この鎧は機動性を最大限まで上げる設計になってるから、普通の鎧より軽くできているだけよ。防御性で言えば大して変わらないわ」


剣、盾、鎧と装備したウェルは鏡に映る自分の姿に少し照れくささを感じつつも感動していた。


「様になってるぞ、ウェル」


ロックは初仕事のお祝いだと言い、ウェルにこれらを贈った。


「装備の手入れもしてあげるから、たまに顔出しなさい」


ウェルはロックとキャメルに礼を言い、店を後にする。

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