第三章 王都

第7話 王都

受付で書類にサインをし、手続きを済ませる。

この日、ウェルは正式に勇士となった。


「ひとまずやることは終わったな。それじゃ行くか」


そこから次に向かった先は、デザートイーグル勇士団のホーム。

ベテランの勇士を除き、多くの者がここに住み着き生活をしていた。

一人では生活が苦しいという理由だけでここに残るわけではなかった。

戦争や魔物が原因で家族を失った者にとって、勇士団のホームとはその辛さを忘れさせてくれるような大切な場所でもあったのだ。


中に入ると大勢の人が出迎えてくれた。


「おかえりなさい団長!・・・その人は?」


その子を一目見た印象は、綺麗な長い髪が特徴的だった。

目はくりっとしていて、鼻はスッと通っている。

村では同年代の女の子などおらず、ウェルはどうしていいのかわからずにいた。


「お前らへの土産だ。新しくうちに入ることになった」


ここでウェルはハッと我に返り、背筋を伸ばした。


「ウェル・バーギンです!よろしくお願いします!」


他の団員も同様に、温かく迎え入れてくれた。


「よろしくね、ウェル。私はリコ・マーガレット、リコでいいよ。ようこそデザートイーグルへ」


すると奥から一人の女性が近付いてきた。


「あなたもあの人に気に入られちゃったクチね」


あの人とはきっとロックの事だろう。

ロックはその女性の隣に立つと、ウェルに紹介した。


「俺の嫁のレイナだ」


「よろしくね。私はデザートイーグルの副団長と、ここで料理番をやっているの。ここに住む団員も多いからね」


「そうだウェル、お前もここに住むといい。部屋なら余ってるから」


ロックは何から何までウェルに良くしてくれた。

ウェルはデザートイーグルのホームに住むこととなり、さっそく自分の部屋に荷物を置いた。

空き部屋となってもまだ綺麗なままのベッドに寝転ぶと、すぐに食事だと伝えられた。

一階に降り、空いてる席へ適当に座る。

後から来たロックはウェルの向かいに座ると、レイナが料理を置いた。


「ウェル、ポジションの希望とかあるか?」


「ポ、ポジション・・・?」


勇士には役割が存在していた。

トップ=最前線に立ち、仲間の壁となり切り込む。

アタッカー=攻撃をメインとし、敵を戦闘不能にさせる。

リカバリー=治癒魔法を使い、仲間の傷を回復させる。

サポーター=本来の力の底上げをし、個々に合った能力を上昇させる。

ガード=ヒーラー、サポーターに纏わりつく敵から護る。


「ちなみに俺はトップだ」


この言葉でウェルは決めた。


「俺もトップをやります」


ウェルにとってのロックは、この時すでに憧れのようなものになっていた。


それからのウェルはロックとの稽古の日々だった。

もちろん勇士団の雑用もこなしながらだ。


「毎日毎日、よくやるよ二人とも・・・」


リコは今日も変わらない稽古の風景を眺めながらぼやく。


「どうしたウェル、終わりか?」


「もう一度お願いします・・・」


トップは一見単調に見えるが、その動き一つですぐに命取りに繋がるため立ち回りや攻撃の受け方などロックはウェルに叩き込んだ。

戦闘においてトップは花形、しかし決して楽ではない。

後ろには仲間を背負い、真っ先に敵に切り込んでいくトップはまさに重責だった。


ウェルがデザートイーグルに入ってからひと月が経とうとしていたが、カイからの連絡は一切なかった。

きっとカイもどこかで一人前の勇士になろうと奮闘していることだろう。

ウェルはそう思っていた。

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