第5話 ランク
「勇士団にはそれぞれランクというものが存在する。下級のブロンズ、中級のシルバー、上級のゴールド。それぞれ功績を認められた勇士団に、王国が与えるランクになっているんだ」
夢にみた勇士団の話に、ウェルの心が躍る
「その上はないんですか?」
「まぁあるにはあるが・・・」
「教えてください!」
「そんなに勇士団のことが知りたいのか、ウェル」
ロックは笑うと、やれやれと続けた。
「ゴールドランクすら手におえないと王国が判断した場合、特別に依頼する勇士団があるんだ」
「ゴールドランクすら?」
「ああ、王国直属の勇士団。ダイヤライオン、エメラルドウルフ、ルビーラビット、最後は・・・」
「最後は?」
「他の三つの勇士団はそれぞれ素性も知られていたりするんだが、最後の勇士団だけは謎が多い。サファイアフォックス、わかっているのはこの名前程度だ。存在しないとまで言われてたりするくらいだからな」
ウェルはこの話を聞いて、酒場の男達の会話を思い出した。
「それって、もしかして四宝勇士団って呼ばれてる・・・」
「よく知ってるなウェル、そうだ。それが今話した四つの勇士団だ」
ここまで聞いたところで、自分の夢は果てしなく高いところにあることを自覚した。
「ところでウェル、王都に着いたらどうするつもりなんだ?」
「ええ、勇士団を作ろうかと」
それを聞いたロックは再び笑った。
「そりゃ無理だ。勇士団を作るには兵士として王国に仕えて3年、勇士としても5年は国に貢献しないと設立できない決まりなんだ」
知らなかったとはいえ、その言葉に肩を落とした。
となると自分も兵士か勇士か、どちらかでいわゆる下積みをしなければならない。
兵士ならば3年で済むが、勇士となると5年。
2年という差を考えるとこの場合兵士を選ぶのが最善にも思えるが、ウェルはこのロック・ブリスという男に惹かれ始めていた。
「ロックさんは兵士だったんですか?もともと勇士だったんですか?」
「俺はガキの頃に先代に拾われて、それからはずっとこの勇士団だ。ゴールドにしたのもその先代さ。あと二、三日で王都に着く。友達に会えるといいな、ウェル」
ロックは馬を走らせる。
「そうですね・・・」
王都に着いたところで、カイと再会できるか疑問に思っていた。
王都の人口は約700万人。
この中から一人の人物を探し出すのは困難なことであった。
「団長、左後方から魔物が接近中です」
振り返ると、そこには四足でウェル達を狙う魔物が並走していた。
そこらの大人なら、30人がかりでもこの魔物を倒すことは不可能だろう。
これほど大きな魔物を初めて見たウェルですら、一目でそれがわかるほどだった。
「全員陣形を組め」
団員達は迅速に配置につく。
ロックを先頭とし、援護する形が出来上がる。
「いくぞ!」
ロックが斬りこむと、すぐ後ろの団員も息を合わせ斬りかかる。
ものの数分で魔物を倒してしまった。
「依頼以外で討伐すると、金にならんのが勇士の辛いところだ。覚えておけよ、ウェル」
団員達は笑うと、馬に跨った。
この時、ウェルは勇士の戦い方というものが目に焼き付いていた。
何一つ無駄な動きのない、洗練された彼らの戦い方に心底魅了された。
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