第二章 砂漠の鷲

第4話 出会い

盗賊のリーダーは強かった。

追いつけたとしても、まず勝てないだろう。

それをわかっていたウェルだったが、歩みは止めなかった。


「待ってろ・・・カイ・・・」


すると後ろから、何かが近付いてくることに気付いた。

それは馬に乗り、鎧に身を包んだ者達だった。


先頭を走っていた男はウェルの前で馬をとめ話しかけた。


「盗賊と戦った少年というのはお前か、俺らは勇士団だ。別件だが近くで依頼を済ませているところ、町の男に頼まれて来てみたんだが」


どうやら宿屋の店主がたまたまこの勇士団と遭遇したところ、頼んだようだった。

カイを攫われたことを話すと、男はすぐにウェルを馬に乗せ走り出した。


「掴まってろ、この方角に出て行ったならこの道しかないはずだ。すぐに追いつく」


しばらくすると馬車は見えてきたが、それは想像とは違う形で残っていた。

馬車は壊れ、辺りには町から奪ったものが散乱し、他に残っているものと言えば盗賊の死体だけだった。

その中にはあの男、盗賊団のリーダーもいた。


しかしカイの姿はどこにも見当たらない。


この時ウェルは思った。

カイは死んでいない、どうにかして逃げ切ったのだろうと。


「友達はいたか?」


「いえ、ですが生きてます。カイはしぶといやつです」


男にそれは自分に言い聞かせているようにも見えた。


「さて、どうしたものかな。何者かが手柄を横取りしてしまった以上、報酬は期待できんな。俺らはこれで王都に戻るが、お前はこれからどうするんだ?」


この言葉を聞いたウェルに考える余地などなかった。


「よければ同行させてください」


別々となった今、カイも王都を目指すはずだと考えた。


「なら短い間だが旅を共にする仲だ。名前くらい名乗っておこう、俺はロック・ブリス」


「ウェル・バーギンです」


「ウェル・バーギン、俺らはデザートイーグル勇士団だ。いい奴らばかりだ、仲よくしてやってくれ」


握手を交わし、他の団員ともすぐに打ち解けることができた。


旅を共にして三日が経った。

ウェルの傷も癒え、歩ける程度まで回復した。


その傷を眺めていたロックがウェルに尋ねる。


「その傷を負わせた男は強かったか?」


「俺とカイは特訓だの修行だのと、日々鍛えてきたつもりでした・・・ですが足元にも及びませんでした」


「そうだろうな。ウェルの言っていたリーダーを含むあの盗賊は、おそらく元勇士だ」


驚きを隠せなかった。

元とはいえ、勇士が盗賊にまでなり下がることなど想像もしていなかった。


「少し前に、王都を追放された勇士団が盗賊となり荒らしまわっているという噂があった。あの盗賊を片付けたのは王国から依頼を請けた勇士団だろうな」


ロックはさらに続けた。


「追放された勇士団はゴールドランク。並大抵の勇士団なら返り討ちに遭うのがオチだっただろう。もしやりあっていたら俺らも無事だったかどうか・・・」


その話を聞いたウェルは納得と疑問があった。

あの男の強さは元勇士ということであれば納得だった。

ウェルは疑問をロックに尋ねる。


「ゴールドランクというのは?」

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