第2話 町

「おい起きろ!」


ウェルはカイの肩を両手で掴み揺さぶった。

ゆっくりと起き上がると、辺りを見渡して大きなあくびをする。


「そうか・・・そうだった・・・」


「寝ぼけてないで出発するぞ!日が昇ってからどれくらい経ったかわからない、急いで向かおう」


慌てて毛布を丸め、王都を目指す。


「地図だとそろそろ町が見えてくるはずなんだけど」


見慣れない地図を手に睨んでいると、坂を上り終えたところでそれは見えてきた。

ウェルが指さすと、カイは走り出す。


二人は町に入ると目を輝かせた。

今まで見たことない光景がそこには広がっている。


「すげーなウェル・・・」


「ああ、すごい・・・」


何を買うわけでもなく、ただ町をぶらぶら歩いていると一枚の貼り紙が目に入った。


———ウェスタリアとの戦争につき王国軍兵士、または傭兵として参加する勇士団を募る。

イースタリア ソルターナ・セルシック国王


「戦争か・・・カイ、どう思う?」


「そんな言葉、あの村にいたら無縁だったからな。いまいちピンとこないのが正直な感想だ」


ウェルはハハハと笑い、自分が育った村を思い返してみる。

若い者は少なく、そのほとんどが農業で自分達の食料を賄っていた。

カイの言う通り、戦争の二文字とはまさに無縁であった。


再び歩きだすと、宿屋が目に止まる。

二人部屋をとり、荷物を置くと酒場へと足を運んだ。

店に入り席につくと、さっそく酒を注文する。


「おい!あんまり調子に乗って頼むなよ!?本当はこんな余裕ないんだからな!?」


「大丈夫だって、この一杯でやめにするからさ」


店長と思わしき不愛想な男が少し乱暴に酒を置くと、すぐに乾杯をした。

はじめての酒に二人は顔を歪める。


「い、意外とマズいんだな・・・」


カイの言葉に、ウェルも同じことを思っていた。

すると隣の客の会話が耳に入ってきた。


「おい聞いたかよ、ダイヤライオンが戦争に参加らしいぜ?」


「あの四宝勇士団の?」


「あぁ、こりゃ荒れるぞ」


ウェルは興味深そうに聞く耳を立てて聞いていたが、カイを見ると酒を飲み干し顔を赤らめて酔いつぶれていた。

仕方なく席を立つと、代金をテーブルに置きカイを背負って部屋まで運んでいった。


「次飲むときは、勇士になってからにしような」


はじめての旅で疲れていた体はすぐに眠りについた。

外の騒がしさに目を覚ましたのは、どれくらい経ってからだろうか。


はっきりと悲鳴を聞いたウェルは飛び起きた。


「カイ、おい!」


「なんだよ・・・もう朝か・・・?」


「外の様子が変だ」


こっそりと窓に近付き、覗き込む二人。

そこには逃げ惑う町の人達、それを追う男達がいた。


「なんだぁ?」


起きたばかりのカイには状況がよく理解できていなかった。

だがウェルは見ていた。

男たちの腰にぶら下がっている剣を。


「あいつら、町の人を襲ってるんだ」


すぐに荷物をまとめ、そっと部屋を出る。

するとカウンターに身を隠す店主がいた。


「奴ら盗賊だ、見つかったら何されるかわからねぇ。お前らすぐに逃げろ」


盗賊は町の人に襲い掛かり痛めつけ、金品や酒、食料などを積み込んでいた。

これを見ていたウェルは、店主の言葉に頷きはしなかった。


「おいウェル、もしかしてやり合おうとか考えてるのか?」


「ああ、放ってはおけないよ」

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