第30話 隼の眼
「うん、やっぱりレイナさんの料理はウマいな」
「あら、私の料理じゃ不満だった?」
「そ、そうは言ってないだろ」
「冗談。でも、なんだか懐かしい味に感じるね」
食べ終えた頃、店内も落ち着きだしたのかレイナは四人の元へ来ると噂を持ち出した。
「聞いたわよ、キメラとやり合ったんだってね?」
「よく知ってますね、ついこの間のことですよ?」
「ここに来るお客さん達みんな噂してるわよ?ホークハート勇士団のこと」
それを聞いていた隣の席の男は急に立ち上がると、こちらへと向かってきた。
「貴様が・・・?」
唐突な言葉にウェルは固まっていると、男は続けた。
「私はファルコンアイズ勇士団、団長のクローツ・アインデルトだ」
「ホ、ホークハート勇士団、団長のウェル・バーギンだ」
クローツと名乗る男はじろじろと四人を見ると、鼻で笑い仲間の方を向いた。
「こんなやつらがキメラを・・・?」
クローツの態度にウェルは黙っていられず立ち上がる。
「それはどういう意味だ」
「そのままの意味だ。協会を騙すのも容易いようだと思ってな」
「なんだと?」
「まさかとは思うが、これで団員はすべてか?」
「だったらなんだ」
それを聞いたクローツはひとしきり笑い終えると、話を続けた。
「とんだデマだったみたいだ、同じブロンズでも我々とは大違いのようだしな。———だが・・・聞くところによるとそこの娘は魔法の名家、ウンディーネの者と聞く」
ジーナはクローツの方を見ようともせず、ただ黙り退屈そうにしていた。
「どうだ、ファルコンアイズへ来てその力を使ってみないか?」
これに対し、ジーナはすぐさま言葉を返す。
「断る、貴様の下で働く魔術師など水鉄砲が使えれば十分だろう。私である必要がない」
「なるほど、生意気なお年頃か。コロシアムでやり合うようなら叩き潰そうと思っていたが・・・それも叶いそうにないらしい。失礼する」
「くそっ・・・」
「ウェル、安い挑発に乗るな」
「あぁ、すまん・・・」
「レイナさん、あの人ってよく来るんですか?」
「ええ、時々。アインデルトって言ったら王国兵士として代々仕えてる家系ね。ファルコンアイズって名前も前までは聞かなかったから、設立したのもここ最近だと思うけど・・・」
「あの感じだと団員数はウチより全然いるようでしたね・・・」
「そうね・・・」
リコとレイナの会話など、ウェルの耳には全く入っていなかった。
その様子を見ると、リコは立ち上がりウェルの肩を叩いた。
「さ、もう帰らないと。ほら行くよ?」
四人は店を出るとそのままホームへと戻った。
休日だというのにあちこち歩き回ったせいか、ホームに着くなり疲れが襲いかかる。
あっという間にこの一日は過ぎていった。
東の鷹 松本 慶 @matsumoto_k
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