第29話 街中
店を出た四人は、ジーナとエドに王都の案内をすることにした。
とはいえ、ウェルは王都へ来てからはそのほとんどを依頼で過ごしていたため街の事は無知といえた。
そこでリコが先導し、お気に入りの本屋や家具屋を見て周ることにする。
街の中心部に行けば人が多いのはいつものことだが、この日はいつもより賑わいをみせていた。
「ひ、人が多いな・・・それに騒がしい」
ひっそりと暮らしていたジーナにとって、街のこの盛り上がりは堪えるのか顔を歪めていた。
「もうすぐ三年に一度の流星祭だから、みんな張り切ってるみたいね」
「流星祭?」
前回の流星祭の時、ウェルは依頼で遠征に出ていたためその存在すら知らずにいた。
「一日中行われるお祭り・・・ってウェル知らなかったの?」
「あ、あぁ・・・」
「今歩いてる大通りで、国王陛下を乗せたパレードをやったりするの。でも、なんていってもやっぱり一番の目玉はコロシアムね」
「コロシアム?」
「ランクを問わず勇士団から各三人出場して、一人ずつ腕前を競い合うの。所属する勇士団の宣伝にもなるから、毎回すごい参加数よ」
「優勝すると何かもらえるのか?」
「なんと、賞金1000金よ」
それを聞いた三人は驚き、盛り上がるがリコがそれをすぐに静止させた。
「待って待って、一対一の勝負ってことを忘れないで。うちから出れるとしたらウェルとジーナだけ。最低でもあと一人はいないと・・・」
「私が二回出よう」
「個人の強さを一人ずつ見せつける場だから、メンバー変更はあっても一試合に二回の出場はできないの」
「そうか・・・」
早々に賞金の夢は散り、ウェル達は肩を落とす。
ひとしきり店を見て周ると、リコは一つ提案をした。
「そろそろご飯にしない?」
「そうだな、もう腹ペコだ」
「思えば今日一日何も食べてなかったもんね。せっかくだし、レイナさんのところへ行こうよ」
四人はその足でオールドイーグルへと向かった。
中へ入ると、まだ日が暮れだしたばかりだというのに店内は大勢の人で埋め尽くされている。
「いらっしゃい、あら?久しぶりね」
レイナは以前と変わらぬ姿で忙しそうにしていた。
エドとは面識があったため、初対面となるジーナを紹介するとレイナは驚いた。
「ウンディーネって・・・ウェル君またすごい人捕まえちゃったわね」
なぜか誇らしげな顔をしたウェルに、リコは若干の違和感を感じつつも四人は席へとつく。
注文した品がテーブルへと運ばれ、早速食べ始める。
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