第十章 休日

第28話 お祝い

「悪いな、付き合ってもらっちゃって」


この日、四人はウェルの装備の手入れついでにドレスアップを訪れていた。


「遅かれ早かれジーナとエドも必要な物を買いに来なくちゃいけなかったしね」


はじめての装備屋に目を輝かせるジーナとエド。

キャメルはウェルの防具を手に、奥の作業場へと向かっていった。


「どう?欲しいものありそう?」


真剣に店内を眺めているジーナが気になったのか、リコは隣に立つと肩に手を置いた。


「ああ、私もウェルのようなたくましい鎧を身に着けようと、今物色していたところだ」


「ちょっと待って、ジーナは鎧を着る必要なんてないんだよ?」


「なぜだ?私も鎧がいいのだが」


「あのね・・・鎧はものすごく重たいの。ジーナがそんなの着たら、動きづらくてまともに魔法なんて使えないよ?」


「ふむ、では一体何がいいのだ?」


「今みたいなローブでいいんじゃない?一緒にかわいいの探そうね」


二人は店内をぐるぐると見て周り、楽しそうにはしゃいでいた。

一方、エドは浮かない顔で自身の笛を取り出し見つめている。

それに気付いたウェルは気になることでもあるのかと尋ねた。


「実は、この間のキメラの依頼からヒビが入ってまして、音が少しおかしいんです」


「エドが攻撃を受けた覚えはないけどな・・・一応キャメルさんが戻ってきたら見てもらおう」


ジーナはよほど気に入ったローブを見つけたのか、大事そうに抱えたそれをカウンターに置いた。

同じ頃キャメルも手入れの作業を終え、四人の元へと戻る。


「お待たせ、終わったわよ」


「ありがとうございます、じゃあこのローブも一緒に会計を。それと、ちょっと見てもらいたいものが」


エドはキャメルに笛を差し出した。


「直せますか・・・?」


「これはもう寿命ね。どうすることもできないわ」


「そんな・・・」


「サポーターの楽器ってね、本来は聖奏器っていうの。聖奏器は一度損傷するともう直したりしても無駄なのよ」


キャメルは笛を返すと、煙草を取り出し火をつけた。


「思い入れがあったかもしれないけど、諦めるしかないわね」


ここまで黙って聞いていたリコが財布を握りしめ、キャメルに駆け寄る。


「・・・キャメルさん!この店に聖奏器はありますか!?」


ウェルも財布を取り出し、似たものをお願いしますと頼み込む。

ジーナも続くが、まだあまり金がないのだからとそれを二人に止められた。


「そりゃあるわよ。私これでも一級装備士よ?」


カウンターに数本の笛を並べると、エドはその中から一本の笛を手に取る。

それは透き通るような白に、以前よりも少し長いものだった。


「それでいいのね?じゃあ負けとくわ、同じように大切にしてあげてちょうだい」


会計を済ませ、ジーナは早速新しいローブの袖に腕を通す。


「どうだ・・・?」


以前まで着ていた地味なローブとは違い、少しは女の子らしさのあるものとなった。


「やっぱりよく似合う!ジーナかわいいよ」


「すみません、僕の笛のお金まで・・・」


「気にするな、俺とリコからの勇士になったお祝いだ」


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